鉄分不足は、特に女性に多く見られます。月経による定期的な鉄の損失、カロリー制限や偏食による栄養不足、そして妊娠・出産・授乳期に急増する鉄の需要——これらが重なることで、鉄分不足が起こりやすくなります。女性特有の身体の変化と鉄分の関係について、丁寧に解説します。

監修医師:
山本 佳奈(ナビタスクリニック)
滋賀医科大学医学部卒業 / 南相馬市立総合病院や常磐病院(福島)を経て、ナビタスクリニック所属/ 専門は一般内科
鉄分不足(隠れ貧血)と女性①:なぜ女性は鉄分不足になりやすいのか
鉄分不足(隠れ貧血)は、特に女性に多く見られます。その背景には、月経や妊娠・出産など、女性特有の体の変化や生活習慣が深く関わっています。このセクションでは、女性が鉄分不足になりやすい主な原因について解説します。
月経による鉄分の損失が最大の要因
女性が鉄分不足になりやすい大きな要因のひとつが、月経による定期的な鉄分の損失です。月経のたびに血液が体外に排出されるため、血液とともに鉄も失われます。月経量が多い方(過多月経)では、1回の月経で失われる鉄の量がさらに多くなります。
過多月経の目安としては、月経期間中にナプキン交換の回数が多い、レバーのような血の塊が出るなどの状態があります。こうした状態が続く場合は、子宮筋腫や子宮内膜症などの婦人科的な疾患が関係していることもあり、婦人科へ相談することが大切です。
月経のある女性では、毎月の鉄分損失を補うために、男性よりも多くの鉄分を食事から取る必要があります。しかし実際には、食事からの摂取が追いつかず、鉄分が不足している方も少なくありません。
ダイエットや偏食が鉄分不足を招くリスク
女性に多いカロリー制限中心のダイエットや、特定の食品を避ける偏った食生活は、鉄分不足につながりやすい要因になります。肉類や魚介類を避けるベジタリアン・ヴィーガンの食生活では、ヘム鉄の摂取が難しくなるため、非ヘム鉄を含む食品とビタミンCを組み合わせて摂ることが必要です。
また、食事量そのものが少ない場合は、鉄分だけでなく、たんぱく質やビタミンB6・B12・葉酸など、鉄の利用や赤血球の生成に関わる栄養素も不足しやすくなります。偏食が続くことで、鉄分不足のリスクが高まる場合があります。
若い女性にみられる糖質制限ダイエットでは、食事全体の栄養バランスが偏る可能性があります。ダイエット中であっても、鉄分を含む食品を意識して取り入れることが大切です。
妊娠・出産・授乳期に急増する鉄分の需要
妊娠・出産・授乳期は、女性の一生のなかで鉄の必要量が高まる時期です。妊娠中は胎児の成長に加え、母体の血液量が増加するため、通常より多くの鉄分が必要になるとされています。この時期に鉄分が不足すると、母体に貧血症状が現れるだけでなく、胎児の発育に影響する可能性もあります。
出産時には一定量の出血が伴うため、産後も鉄分を意識して摂ることが大切です。産後は育児による疲労や睡眠不足も重なるため、疲れやだるさが鉄分不足によるものなのか、育児疲れによるものなのかを区別しにくい場合があります。こうした場合には、血液検査で鉄分の状態を確認することが、適切な対応につながります。
まとめ
鉄分不足(隠れ貧血)は、見た目にはわかりにくいものの、日常生活に影響を与えることがあります。食事からの鉄分補給や適正量の把握、女性特有のリスクへの対策を意識することが大切です。疲れやだるさ、集中力の低下など気になる症状が続く場合には、医療機関で相談してみましょう。内科や婦人科など身近な医療機関への相談が、改善への第一歩につながります。
参考文献
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」
厚生労働省 e-ヘルスネット「鉄」
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