
■体を暑さに慣らすために今できること

近年、猛暑は常態化し、夏の訪れも早まっている。春や秋に少しずつ気温や気候が変化する四季から、春や秋を感じる期間が短くなって、桜のシーズンが終わるとあっという間に半袖がちょうどいい季節になっている。そんな中、注目されているのが「暑熱順化」。これは、入浴や適度な運動などを行うことで、日常生活の中で無理なく汗をかき、体を暑さに慣らすことを意味する。

――「暑熱順化」とはどういうことなのでしょうか。
【早坂信哉さん】「私たちの体は汗をかくことで体温を調整しています。汗をかくことによる気化熱や心拍数の上昇、皮膚血管の拡張によって体の表面から空気中に熱を逃す熱放散で体調を調整しています。なので、熱中症の危険が高まる前に無理のない範囲で汗をかき、体を熱さに慣れさせることが大切です」
――どんなことをすればいいのでしょうか。
【早坂信哉さん】「汗をかくことが大切で、誰でも手軽に行えるのは入浴や運動です。特別なものを用意する必要がなく、自分のペースで進められる点や、コストがあまりかからないことから、日常的に行いやすく、続けやすいと言えます」
――普段、体を動かしていない人には、運動もそれなりにハードルが高いように思います。
【早坂信哉さん】「運動と言っても、いきなりハードなことをする必要はありません。東京都広報によると、1回30分のウォーキングを週5回程度、または1回30分の筋トレ・ストレッチを週5回程度、もしくは1回30分のサイクリングを週3回程度が好ましいとされています。手軽で負担が少ないのはウォーキングで、通勤・通学や買物のときに意識して歩くようにするといいでしょう」

――当たり前ですが、運動も続けなければ意味がないということですね。週に3~5日続けるのは普段運動をしていないと、なかなか高い目標のようにも思います。
【早坂信哉さん】「そんなときには入浴です。40度のお湯を張った湯船に全身浴すると、じんわりと汗ばんできますが、これを約2週間続けることで発汗のタイミングが早まり、自然と暑熱順化が進みます。お風呂は毎日入ると思うので続けやすいと思います」
――最近では、“風呂キャンセル界隈”という言葉もあり、お風呂に入らない人や湯船ではなくシャワーのみという人も多いようです。
【早坂信哉さん】「暑熱順化のためには、湯船に入って体を温めて汗をかくことが大切です。まずは、発汗に備えて入浴前にコップ1~2杯の水を飲みましょう。湯船に入る前にはかけ湯をして体をお湯に慣らしてから、40度のお湯に10~15分全身浴をします」

――10~15分というのは、結構長めのような気がしますが。
【早坂信哉さん】「時間というより、発汗するまでを意識してください。もちろん、無理は禁物なので、熱いと思ったら一旦湯船から出て、再度入るというように分割してもかまいません。目的は発汗すること。湯船から出たらまた、コップ1杯程度の水分を摂りましょう」
――入浴は毎日したほうがいいのでしょうか。
【早坂信哉さん】「東京都の広報誌では2日に1回となっていますが、できれば毎日、2週間程度続けることで、暑熱順化ができると考えられます」

――毎日お風呂を沸かすのは大変に感じる人もいると思います。
【早坂信哉さん】「自宅に浴槽がある人は、お湯につかる習慣をつけるといいですが、面倒に感じるときや自宅に湯船がない人は銭湯を利用するのもいいでしょう。銭湯は浴槽が大きいので湯量が多く、ぬるくなりにくいため、自宅のお風呂よりも体が温まります」

――汗をかくという点では、サウナや岩盤浴もありますが。
【早坂信哉さん】「体を温めるという点ではいいと思います。ただし、サウナは高温すぎるところも多く、万人向けではないかもしれません。40~60度程度のサウナに入るか、高温サウナでも下の方は温度が低いのでひな壇の一番下に座るといいでしょう」
――これからもっと気温が高くなりますが、夏場の入浴の注意点などあれば教えてください。
【早坂信哉さん】「暑熱順化の時期が終われば、38度のお湯に20分間入るのがおすすめです。できれば炭酸系入浴剤を併用するといいでしょう。暑い時期でもさっぱり入れて入浴後も汗だくにならないのでおすすめです。ぬるめのお湯は血流改善効果が弱くなりますが、その分、炭酸系入浴剤を使って血流改善を促します」
「暑熱順化」のためには適度な運動もいいが、比較的毎日続けやすいのが入浴。近年、銭湯の数は減少しているが、東京都には現在約400の銭湯がある。自宅の近くの銭湯に通うのもいいし、週末や時間のあるときには少し足を伸ばして“おでかけ”感覚で銭湯を楽しむのもいい。また、炭酸泉がある銭湯もあり、早坂さんおすすめの夏場の入浴にも銭湯を活用できそうだ。入浴を習慣化して、厳しくなるであろう日本の夏に負けない体づくりをしよう。
取材・文/岡部礼子
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