1日に必要な亜鉛の量は、年齢や性別によって異なります。厚生労働省の基準では、成人男性で11mg、成人女性で8mgが推奨量の目安とされています。一方で摂りすぎると銅の吸収が妨げられるなど、過剰摂取のリスクも存在します。ここでは、適正量の考え方と耐容上限量、そして亜鉛不足を確認する血液検査についても詳しく解説します。

監修医師:
本多 洋介(Myクリニック本多内科医院)
群馬大学医学部卒業。その後、伊勢崎市民病院、群馬県立心臓血管センター、済生会横浜市東部病院で循環器内科医として経験を積む。現在は「Myクリニック本多内科医院」院長。日本内科学会総合内科専門医、日本循環器学会専門医、日本心血管インターベンション治療学会専門医。
亜鉛不足における1日の適正量の考え方
亜鉛を効果的に補うためには、どのくらいの量が適切かを知ることが重要です。このセクションでは、年齢や性別による推奨摂取量と、日本人の亜鉛摂取の実態について解説します。
年齢・性別による亜鉛の推奨摂取量
厚生労働省が定める「日本人の食事摂取基準」では、亜鉛の推奨摂取量が年齢・性別ごとに設定されています。成人男性では1日あたり11mg、成人女性では8mgが推奨量の目安とされています(2020年版)。妊娠中の女性はプラス2mg、授乳中の女性はプラス4mgが付加量として設定されており、この時期は通常よりも多くの亜鉛が必要とされます。
18〜29歳の若い世代でも同様の推奨量が設定されており、成長期にある10代の子どもは身体の発達を支えるために相応の亜鉛が必要です。高齢者については、消化吸収機能が低下することで食事からの亜鉛吸収量が下がる場合があり、摂取量に注意が必要です。
推奨摂取量はあくまでも目安であり、個人の健康状態や生活環境によって実際に必要な量は異なる場合があります。激しい運動をする方や、ストレスが高い生活を続けている方は、亜鉛の消耗が増えることがあります。自分の生活スタイルに合わせて、専門家の意見を参考にしながら適切な量を把握することが大切です。
亜鉛の耐容上限量と過剰摂取のリスク
亜鉛は必要なミネラルですが、摂りすぎにも注意が必要です。「日本人の食事摂取基準」では、亜鉛の耐容上限量(これ以上摂取すると健康への悪影響が生じる可能性がある量)として、成人男性で45mg/日、成人女性で35mg/日が設定されています。
通常の食事のみから亜鉛を過剰に摂取することは難しいとされていますが、サプリメントを使用する場合は注意が必要です。亜鉛を過剰に摂取すると、銅の吸収が阻害されて銅欠乏症が生じる可能性があります。銅欠乏は貧血や骨密度の低下、神経機能への影響につながる場合があります。
また、急性の過剰摂取では吐き気・腹部不快感・下痢・頭痛などの症状が表れることがあります。長期間にわたって大量の亜鉛を摂取し続けると、免疫機能の変化やHDLコレステロール(善玉コレステロール)の低下につながる可能性も指摘されています。HDLコレステロールの低下は動脈硬化のリスクを高くするとされており、心臓病や、生活習慣病などの動脈硬化のリスクがある方は過剰摂取には注意が必要です。
亜鉛不足の判定と血中濃度の目安
亜鉛不足かどうかを自己判断するのは難しいため、医療機関での血液検査が確認の手段として有効です。血清亜鉛(血液中の亜鉛濃度)の基準値は一般的に80〜130μg/dL程度とされており、この範囲を下回る場合に亜鉛欠乏が疑われます。ただし、基準値は検査機関によって若干異なる場合があります。
亜鉛の血中濃度は食事の影響を受けやすいため、検査の際は採血のタイミングや直前の食事に注意が必要です。軽度の亜鉛不足の場合、自覚症状が出にくいこともあります。味覚の変化や爪の白い斑点、髪の毛の状態変化など、複数の症状が重なるようであれば、一度内科などで相談することが望ましいでしょう。
亜鉛の血中濃度が低いと診断された場合には、食事療法やサプリメントによる補給が検討されます。医療機関では亜鉛製剤が処方されることもあります。自己判断での対処に限界を感じた場合は、専門の医師に相談し、適切な補給量と方法を判断してもらうことが、安全で効果的な改善への近道となります。
まとめ
亜鉛は免疫機能・皮膚・味覚・成長・認知機能など、身体の多岐にわたる機能を支える重要なミネラルです。現代の食生活や生活習慣によって不足しやすい環境にあることを踏まえ、亜鉛を多く含む食品を意識的に取り入れ、吸収を助ける食べ合わせを工夫することが大切です。サプリメントを活用する場合は、推奨摂取量の範囲内で適切に利用してください。味覚の変化や肌荒れ、疲れやすさなど気になる症状がある場合は、早めに内科などで相談されることをおすすめします。
参考文献
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」
厚生労働省eJIM「亜鉛」
厚生労働省 e-ヘルスネット「ミネラル」
国立がん研究センター「亜鉛・ヘム鉄摂取と大腸がんとの関連について」
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