
これは郵便配達員が実際に体験した実話である。ある一軒家には、配達に行くたびに配達員を困らせる少年がいた。その日も木の上に仕掛けてあったバケツの水を頭から浴びせられ、「コラ坊主」と追いかけるとあらかじめ仕掛けられていたであろう罠へ誘導されてしまう。散々な目に遭わされる配達員だったが、記憶にあるその少年は、決してそんなことをするような子ではなかった。お利口で行儀のよい子どもが急に変わった理由とは。




■悪戯の裏に隠された真実と読者の涙
びしょ濡れの配達員のもとに、少年の祖母が慌ててタオルをもって現れ、「母親が長くないと知って荒れているのです」と話し出した。母の死が近いことを知ってからの少年は、母親が寝ている部屋に近寄りもしなくなったという。祖母は現実を受け止めきれず荒れていると見ているようだが、配達員には別の心当たりがあった。「まさか…でも、まさか…!?」と配達員は心の中でつぶやく。その心当たりとは一体何なのか。
本作を読んだ読者からは「やばい…目の前が霞む…」「声を上げて泣いてしまった」という声が続々と届いた。大切な人や身近な人の死など、どんなに頑張ろうと避けられない未来は存在する。この世の中にはどうしようもないことがあり、それと対峙するのは大人でもつらくてきつい。それが小さな子どもで、ましてや母親の死と向き合わねばならないのならなおさらだ。少年が急に悪さばかりをするようになった本当の理由を知り、涙が止まらない。コメント欄には、「3カ月前に母が逝きました。この作品の凄さに胸を打たれます」という声まで届くなど、読んだ人たちの心を大きく震わせている。
■作者が語る制作背景と不思議な体験
作者で現役郵便局員の送達ねこ(@jinjanosandou)さんによると、本作は今は退職した同僚・村井さんの体験談だという。死の気配を感じる家で、少年になぜか悪戯を繰り返される配達員が、その少年と向き合うために奮闘した物語だ。
送達ねこさん自身も、過去に不思議な経験をしたことがある。「自分は決して霊感が強いわけではないんですが、亡くなった人におそらく触れられたと思う経験があります」と語る。かつて、ある故人の部屋に数人でいたとき、誰も触れていないのに肩を衣服の上から誰かの指がしきりに擦る感覚があったという。その際、故人の母親が「たまに帰ってくる。裏口が開いたりする」と教えてくれたそうだ。
送達ねこさんは、「こういった話は『気のせいだったんじゃない?』って考え方もできるかと思います。どっちが本当かはわからない。ただ、もしも故人が、あちらから何らかのいろいろをかいくぐって、本当に会いに来てくれてたのだとしたら、気のせいにしてしまうのは、むごい気がするんですよね」と思いを明かす。
本作をはじめ、「郵便屋が集めた奇談」は送達ねこさんのもとに届いた同僚配達員たちの不思議な体験を漫画化したものだ。読者からは「いろいろなところに配達に行く郵便屋さんならではのお話」「こういう不思議で怖い話って好き」「けっこう背筋がゾクッとしたけど、めちゃくちゃおもしろい」と好評を博している。日本のどこかの町でひっそりと起こっている“怪異”を、ぜひ覗き見してみてほしい。
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