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気象庁は5月、今夏までにエルニーニョ現象が発生する確率が90%に達するとの見通しを発表しました。さらに、今回はエルニーニョ監視指数が通常よりも大きくなる予想もあり、「スーパーエルニーニョ」になる可能性も出てきています。
エルニーニョ現象が気象に与える影響、そして私たちの暮らしにどのような影響が出るのでしょうか。最新の予測データに基づき、今後の見通しや今から備えておくべきポイントを解説します。
夏までにエルニーニョの発生確率が90%
気象庁では、ハワイ諸島のはるか南の赤道域からガラパゴス諸島に至る範囲を「エルニーニョ監視海域」に指定し、その海域の海面水温を監視しています。水温の5か月間の平均値が、過去30年の水温の平均と比べて0.5度以上高い状態が半年以上続いた場合に「エルニーニョ現象が発生した」と定義しています。
出典:気象庁「エルニーニョ監視海域の監視指数」
上の図を見ると、4月には監視指数の移動平均値が+0.5℃を超え、今後も秋に向かって上昇することが予想されています。仮に上の図の通りに推移した場合、+0.5℃を超えた4月から数えて6か月目にあたる9月に「エルニーニョ現象が起きていた」ことが確定し、その際にはさかのぼって半年前の4月からエルニーニョ現象が発生していたことになります。つまり、もうすでにエルニーニョ現象が発生している可能性もあるのです。
出典:気象庁「エルニーニョ監視指数の確率予測」
こちらはエルニーニョ監視指数の確率予測ですが、4月(2月~6月の移動平均)でエルニーニョの確率予測が90%を超えています。そしてこの状態は9月まで持続するとの予想も出ています。
スーパーエルニーニョになる可能性も
エルニーニョ現象そのものは数年に一度発生するため珍しいものではありませんが、今回はその強さが異例となる予測が出ています。
出典:気象庁「エルニーニョ監視海域の監視指数」
エルニーニョ監視海域の監視指数をみると7月以降に+2.0℃以上となる可能性が出てきており、9月に関しては+2.0℃~+3.3℃と予想されています。
科学的な定義があるわけではありませんが、監視指数が+2.0℃を超えるものは「スーパーエルニーニョ」と呼ばれ、世界各地で異常気象を起こす引き金となってきました。ちなみに、1949年以降にスーパーエルニーニョを記録したのは以下の5回です。
| 発生期間 | 監視指数の最大値(月平均) |
| 1972年春~1973年春 | 2.6 |
| 1982年春~1983年秋 | 3.2 |
| 1997年春~1998年夏 | 3.6 |
| 2014年春~2016年春 | 3.1 |
| 2023年春~2024年春 | 2.3 |
表:筆者作成
最近だと2023年春~2024年春にスーパーエルニーニョが発生しており、夏は全国的に記録的な暑さに見舞われました。
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エルニーニョはいつまで続く?
エルニーニョ現象は翌年まで持続する可能性があります。以下はNOAA(アメリカ海洋大気庁)が2026年5月に発表した今後のエルニーニョ現象の発生確率をまとめた表です。
| 期間 | エルニーニョ発生確率 (0.5℃以上の確率) |
うち2.0℃以上の確率 |
| 4-6月 | 16% | 0% |
| 5-7月 | 82% | 0% |
| 6-8月 | 92% | 0% |
| 7-9月 | 96% | 1% |
| 8-10月 | 98% | 9% |
| 9-11月 | 98% | 22% |
| 10-12月 | 98% | 33% |
| 11-1月 | 98% | 37% |
| 12-2月 | 96% | 31% |
表: NOAA「2026年5月CPC公式ENSO強度確率」を参考に筆者が作成
NOAAの予想では、2026年12月~2027年2月のエルニーニョの基準を満たす確率は96%(監視指数が+0.5以上)となっています。また、監視指数が+2.0℃以上になる可能性も31%と高く、来年に入っても強いエルニーニョが持続する可能性も出ています。
エルニーニョ現象は今夏だけでなく、今年の冬、さらには来年にかけても影響を与える懸念があります。
エルニーニョになるとどんな影響がある?
エルニーニョ現象が発生すると、太平洋の赤道付近から地球全体の大気の流れが変わり、世界各地でふだんとは違う異常気象が起こりやすくなります。
日本ではエルニーニョ現象が発生すると、「冷夏・暖冬」になりやすい傾向があります。しかし、気象庁の長期予報によると2026年の夏は高温が予想されており、現在のところ冷夏になる可能性は低くなっています。これは地球温暖化の影響でもともとの大気全体の温度が高いことや、猛暑をもたらす太平洋高気圧が強まる予想が出ているためです。
さらに、エルニーニョ現象によって大気の流れが大きく変わることで、これまでの経験則では予想もしないような集中豪雨、干ばつといった気象災害が発生する懸念もあります。「エルニーニョ現象=冷夏」という概念は捨て、「エルニーニョ現象=いつもと違う状態になる」と捉えることが大切です。
今のうちに備えておくこと
「エルニーニョ現象=いつもと違う」という認識を持ち、さまざまな事態を想定した備えを今から進めておくことが大切です。夏の厳しい暑さへの対策を前提とした上で、さらに踏み込んだ備えが必要です。
例えば、雨が極端に少なくなる干ばつへの備えとして、飲料水のストックに加え、生活用水を確保するためのポリタンクなどを今のうちに用意しておきましょう。また、農作物の管理や節水への意識を平時から高めておくことも大切です。
一方で、大気の流れが大きく変わることで、予想外の場所で集中豪雨が発生するリスクもあります。ハザードマップを改めて見直し、浸水想定や土砂災害警戒区域を把握した上で、家族で複数の避難路を実際に歩いて確認しておきましょう。早め早めに備えておくことで、いざというときに慌てず、心に余裕を持って行動できます。
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<執筆者プロフィル>
田頭孝志
気象防災アドバイザー(国土交通大臣委嘱)
田頭気象予報士事務所代表。愛媛の気象予報士・防災士。防災や気象関連の記事執筆をはじめ、テレビ番組の監修、防災教材開発などを行う。BS釣り番組でお天気コーナーを担当したほか、自治体、教育機関、企業向けに講演を多数、防災マニュアルの作成に参画。
