
郵便局の窓口で、現金を普通郵便で送ろうとして返還された客が頭を抱えていた。「なんでわかっちゃったのかな?紙に包んで封筒に入れたのに」。そんな客に、不気味な笑みを浮かべながら「それがわかっちゃうんだよね…」とつぶやく局員がいたという。現役郵便局員で漫画家の送達ねこ(@jinjanosandou)さんが描く『郵便屋が集めた奇談』の一編『Tさんのセンス』は、“郵便物から何かを感じ取る局員”をめぐる不思議な実話だ。
■封書から“感情”を感じる局員



今回のエピソードに登場するTさんは、長年仕分け業務に携わってきたベテラン局員。現金入りの封筒を手触りや感覚で見抜くことができるだけでなく、封書から送り主の感情まで感じ取ってしまうという、不思議な“センス”の持ち主だった。
「指がアツい!きゅんきゅんする。こりゃラブレターだぜ」「これはじんわりくる。田舎のお袋さんからの便りだな」など、封筒を触りながら次々と口にするTさん。松田くんは当初、「ただの変なおじさんだな」と思っていたそうだ。
しかし、ある日届いた1通の手紙を前に、Tさんは表情を変える。「その手紙。悪意がすごい。持ってると具合悪くなるかも」。局内の空気が一気に冷え込むような瞬間だったという。
■同業者たちから届いた“わかる”の声
送達ねこさんによると、この作品をXへ投稿した際、全国の郵便局員たちから大きな反響が寄せられたそうだ。「触ると悪寒がする封書がある」「指が喜ぶというか、あったかく感じるときがある」など、共感の声が相次いだという。
さらに、ある配達員からは背筋が凍るような体験談も届いた。特定の家へ郵便を届けるたび、なぜか“冷水を背中に浴びたような感覚”に襲われていたという。その後、その家の女性が別居中だった元夫に刺殺される事件が発生。あとになって、「あの嫌な感じの手紙は元夫からだったのかもしれない」と気付いたそうだ。10年以上たった今も忘れられず、ずっと胸の内にしまっていた話だったという。
■開封された“嫌な手紙”の中身
送達ねこさん自身も、「郵便は人の思いを包むものだから、敏感な人は何か感じるのかもしれない」と語る。実際、局内で保管されていた“配達不能郵便”のなかにも、どうしても触りたくない封書があったという証言が寄せられた。差出人不明で返送もできず、長期間保管されていたその手紙。期限切れ後、担当局員が開封して中身を確認すると、そこには“名宛人への積年の怨み”がびっしりと書き連ねられていたそうだ。
「なんだろう、この嫌な感じは?」と思っていたものに、あとから“答え合わせ”が来る。その瞬間が一番怖いのかもしれない。
■郵便屋たちが見てきた“怪異”
『郵便屋が集めた奇談』では、現役郵便局員たちが実際に遭遇した、不思議な話や怖い話が数多く描かれている。読者からは「こういうじわじわ怖い話が好き」「めちゃくちゃゾクッとした」といった声も寄せられている。
毎日、日本中の町を回り、人々の思いが詰まった郵便物を運び続ける郵便局員たち。その手の中には、ときに説明のつかない“何か”も紛れ込んでいるのかもしれない。
取材協力:送達ねこ(@jinjanosandou)
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