
“書けなくなった”ミステリー作家と“解けなくなった”エリート刑事の“絶不調バディ”が絶妙な会話術と掛け合いで事件を解決するドラマ「イップス」(2024年放送、フジテレビ系)は、篠原涼子とバカリズムがダブル主演を務めたミステリーコメディー。「古畑任三郎」(1994年ほか、フジテレビ系)などを彷彿とさせる倒叙式の構成になっており、1話完結のオリジナルストーリーだ。塚本高史が二世議員役としてゲスト登場する第3話を紹介する。(以下、ネタバレが含まれます)
■得意なことができなくなる“イップス”状態で悶々とする2人が主人公
タイトルの“イップス”とは、心の葛藤により筋肉や神経細胞、脳細胞にまで影響を及ぼし「できていたことができなくなってしまう」心理的症状のこと。全体的にはコミカルな会話劇で進むが、ミステリー作家の黒羽ミコ(篠原)と、警視庁捜査一課刑事の森野徹(バカリズム)は、同じ“イップス”状態にあるという悩みを抱えており、主役2人の心理描写も細やかに描かれる。
■政治家親子の豪邸で殺人事件が起きる
第3話は「フラワーと完璧だった密室」。ミコ(篠原)は森野(バカリズム)をモデルにした小説を書かせてほしいと、密着取材を申し込む。そんな折、都議会議員・尾花健一郎(塚本高史)の邸宅で、殺人事件が発生。健一郎の第一秘書を務めていた田所(平田満)が遺体となって発見された。第一発見者は健一郎と第二秘書の村井(渡辺佑太朗)。彼らが議員事務所での打ち合わせを終えて帰宅すると、書斎のドアに鍵がかかっていたため庭に回り込んで室内を確認すると田所が倒れていたのだという。
■秘書の言う通りに生きてきた二世議員が裏切りの刺殺…
田所は広間にあった装飾用ナイフで腹部を7回も刺されていた。書斎の鍵は内側からしか開けられない密室になっていたこと、ナイフが被害者の手に握られていたことから、自殺の可能性が高いと思われた。しかし森野は、現場に到着したときから“殺人事件味”が強いと感じて拒否感を示す。
健一郎は、衆議院議員だった尾花総一郎の息子で、総一郎が他界したのち地盤を引き継ぎ、都議会議員に初当選した二世議員。だが、SNS上では爽やかだけど中身のないスピーチや、お花畑的なコメントばかりを繰り返すことから、“フラワー健一郎”と呼ばれていじり倒されていた。事情を聞くために尾花に会ったミコと森野は、自殺にしては不自然な点が多い、と尾花に切り出す。
田所を殺害したのは、偉大で有名な父を持つ二世議員・健一郎であることは早々に明かされる。健一郎の未熟さや詰めの甘さがどんどん露呈していくのがこの回の滑稽さだ。幼い頃から健一郎を世話してきた田所が最期に見せる愛情も感動を誘う。
殺人事件の現場ではしゃぐミコの図々しさが少し気になるところではあるが、犯人の細かいミスを見落とさないミコのねちっこい推理力は事件解決の光となった。健一郎のミスは複数起きるので、ひとつだけネタバレを書くならば、田所が書いたと思わせるために健一郎が急きょ用意した遺書が、改行の位置もまったく考えられていない文書になっていたこと。普段から健一郎の演説などは田所に台本を用意させていた甘さが同時に伝わるシーンだ。世間的に“フラワー”と小馬鹿にされる二世議員が追い込まれる姿は残念な気持ちになるだろう。

