
アーティストのLiSAが、2026年4月20日にデビュー15周年を迎えた。『LiSA 15th Anniversary Book PRiSM』には、2011年のデビューから現在までの歩みを、自身の言葉で振り返るロングインタビューが収録されている。本書からインタビューをダイジェストで送る全3回の集中連載・第2回は、2017年から2021年までの“変革期”について語ったインタビューの一部を抜粋して掲載。シーンの最前線へと駆け上がり、アーティストとしてさらなる進化を遂げていくなかで、LiSAは何を感じ、どんな覚悟を抱えていたのか。その転換点を紐解いていく。
■テレビは感情や勢いだけでは伝わりきらない
──2017年から30代を迎えて、どんな変化がありましたか?
それまでは、自分にとって最大限のパフォーマンスをするために、自分の中でのルーティンを守る努力をしてきました。30代に入り、「あれもできる、これもできる」と全部やろうとして詰めこんでいったら、より一層忙しくなりました。年中ライヴをさせてもらったり、アジアツアーもやったり、全国の行きたいところに行ったり、リリースもしたりして。
だけど、全部に全力を注ぎたいのですが、その気持ちとは裏腹に、30代に差しかかると体力が少しずつ変化してきました。すごく簡単に言うと、徹夜作業ができなくなったり、夜遅いと翌日に響くようになったりしてきたんです。年齢によって感じる疲れと、やりたいことの差が広がってきて、そこがまた変化してきました。
これから自分が30歳を越えていくのに、どこまでやっていけるのかがわからないと感じました。20
代前半の頃に自分が歌っていた歌を、いつまで同じパワーで歌い続けられるかわからない。自分が正解だと思っていた勢いのあるライヴを30代後半でできるのか、ということを考えだしました。「じゃあ、自分はどんな30代を過ごしていこうか?」と向き合っていたのが、「LiVE is Smile Always ~LiTTLE DEViL PARADE~」(2017年6月17日~7月1日)のときです。
──そんななか、2017年からは音楽番組に出演する機会も増えましたね。目の前にお客さんがいない、カメラのレンズの先にある「お茶の間」を意識して歌うのはどういう感覚でしたか?
他のステージやライヴとは違うものでした。自分の感情や勢いだけでは伝わりきらない。いろいろそぎ落とされて、歌声と表情だけに注力して、画面を通して歌を届けるということは、自分がやってきたライヴとは別のもので、歌を練習しなくてはならないと思いました(笑)。テレビで歌うとなると、目の前にお客さんがいない。ちょうど30代に入って、それまでと違う表現も身につけなきゃいけないタイミングになってきたと感じました。
テレビに出るというのは、出る枠が決まっている生放送に、自分が選ばれて、出させてもらえるということです。その1時間のうちの数分間を自分に与えられて、その数分のためにたくさんのスタッフの方がプランやスケジュールを組んでくれている。みんなに期待してもらっている、信じてもらっているからこそ、良いものを届けなくてはならないと思っていました。
初めて『ミュージックステーション』の生放送に出たとき(2015年5月8日)、ツアーの最中だったんですが、そのツアーの勢いが画面では伝わらないということを実感しました。たとえばファンの方のご家族だったり、好きな人だったり、お友達だったりに、「自分の大好きなLiSA」を紹介できるタイミングだからこそ、みんなにとってきちんと誇らしいLiSAでありたいと思ったので、また歌をめちゃくちゃ勉強しました。
私がテレビでたくさん歌唱するタイミングをもらったのは「紅蓮華」のときでした。そこから「炎」やシングルをテレビで歌わせていただくタイミングがたくさんあったのですが、その時期はもう本当にいつも緊張していて。ライヴでは20曲歌えるのに、テレビでは1曲歌うともう声が枯れてしまうんです。たぶん緊張していて、いつもとは違う力の入れ方になってしまって、1曲で歌えなくなるという現象が起きていました(笑)。
だからツアー中なんて、もう絶対テレビに出られない。今もスタッフが気をつけてくれていると思うのですが、力の入れ方がわからなかったときは大変でした。「紅蓮華」のリリースが終わって、「炎」が出る頃がコロナ禍だったので、そのときに、テレビでの歌唱の仕方をトライしたり、練習したりする時間がありました。そこで培った自分の中の成功ルーティンみたいなものが、うまくいくようになったのは、コロナが明ける頃ですね。いろいろ試行錯誤してルーティンを見つけて、楽しくなっていきました。


■「紅蓮華」がくれた自信
──2019年7月3日に、TVアニメ『鬼滅の刃』竈門炭治郎 立志編のオープニングテーマであるシングル「紅蓮華」がリリースされ、後に大ヒットします。ご自身が作詞をしたこともあり、感慨もひとしおだったのではないでしょうか?
自分としても「鬼滅の刃」の原作を踏まえたうえで作詞をしたものが大ヒットするということは、とても大きなことでした。「鬼滅の刃」という作品は本当に素晴らしくて、原作も、アニメのクリエイターさんたちも、楽曲も、声優さんも素晴らしい。
私が今まで関わらせていただいてきた作品はどれもそれぞれ本当に素晴らしいんです。そういう素晴らしい作品が評価されていくことに対して、「すごい! 良くやったね!」と、ちょっと客観的に感じるところがあるんです。
「鬼滅の刃」という作品も本当に素晴らしいので、それが評価されていく、人気になっていくということは本当に嬉しいです。自分の作品との向き合い方、愛情の込め方は、「紅蓮華」が評価されたことで自信になりました。
■コロナ禍の精一杯で生まれた「炎」
──2020年10月14日にリリースされた、劇場版 『鬼滅の刃』無限列車編の主題歌「炎」は、シングルで初のオリコン1位を獲得しました。MVは3.5億回再生(2026年2月12日現在)にのぼります。コロナ禍で音楽活動がままならない状態のなか、この「炎」はどのように生まれたのでしょうか?
コロナ禍でも新譜を出していたので、やらなくちゃいけないことがたくさんあったから、そこにすごく向き合いながら、願いながら、今できることを精一杯やろうと思って、「炎」を梶浦(由記)さんと制作しました。
制作時間は、「炎」のときが一番あったかもしれないです。いつも本当に時間がなくて。だから「炎」は他のことを考えられないぐらいそこにすごく注力して制作したので、それが作品とともに、そしてみなさんの状況とともに、「願っていく」楽曲になったということは大きかったです。
「炎」は、テレビを通して歌唱するタイミングがすごく多かったのですが、このような状況で画面を通して歌を届けられるという場所のありがたさをとても感じました。そこでどれだけ願いを込めても、ライヴとは違うんです。でも、思いの量は変わらないし、その思いのかけ方として、歌をフラットに繊細に届けられるようになったのは「炎」のおかげです。
テレビでの歌唱が多いなかで、画面の向こうのみなさんに届けられるように、「歌」「ボリューム」「思い」みたいなメーターのつまみのひねり方は考えました。100しかないパーセンテージのうち、どこに何を置くか「炎」ですごく勉強しました。それは力になりました。
──2020年12月30日には「炎」で「第62回 輝く!日本レコード大賞」を受賞しました。LiSAさんにとってはどういう意味を持つ受賞でしたか?
「鬼滅の刃」という作品を通して、そして「炎」という楽曲を通して、自分が今までやってきたことも、向き合ってきたことも、関わってきたことも間違ってなかったと感じました。だから、それを愛してきてくれた人たちに、「間違ってなかったよ! あなたたち、やっぱりすごいよ!」と、賞状をみんなのところに持って帰るみたいな気持ちでした。
自分だけのものでは絶対ないんです。自分が自分の中のものを使って、LiSAを作っている。「エル・アイ・エス・エー」というものを作っているひとりであり、センターに立って歌を歌っているひとりであり、全力を注ぐひとりである。なので、スタッフのみなさんも、ファンのみなさんも、LiSAを作っているひとりなんですよね。代表して、私が表に立たせてもらっているだけで、本当はみんなで作ったものがLiSAで、それが素晴らしいのです。



