真珠の耳飾りの少女(フェルメール)の特徴は?見どころをわかりやすく解説

フェルメール『真珠の耳飾りの少女』, Public domain, via Wikimedia Commons

この記事では、イタリアの大学院で美術史を研究する筆者が、フェルメール『真珠の耳飾りの少女』の特徴や見どころを解説します!

真珠の耳飾りの少女(フェルメール)の歴史

フェルメール『真珠の耳飾りの少女』, Public domain, via Wikimedia Commons

『真珠の耳飾りの少女』は、オランダの画家ヨハネス・フェルメールによって1665年頃の描かれた絵画です。17世紀中ごろのこの時代は、オランダの黄金時代と呼ばれ、『真珠の耳飾りの少女』以外にも多くの名作が生まれました。

作品の大きさは比較的小さく、高さ44.5㎝×幅40㎝です。これほど有名な絵画でありながら、作品のテーマについて明確にわかっていることは多くありません。

まず作品のモデルは、実在した女性を描いたという説と、理想化された想像上の女性を描いたとする説の両方があります。実在する女性であるとする場合、フェルメールの長女マリアがモデルだったと考える美術史家がいる一方で、制作年代が1665年頃であるとすれば、長女がモデルである可能性は低いとする見方もあります。

そもそも制作年代は作品に明記されておらず確実な史料も残っていないため、確実に1665年に制作されたというわけではありません。ただ、作品にサインが残っているため、少なくとも作者はフェルメールとわかります。

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真珠の耳飾りの少女(フェルメール)の特徴

フェルメール『真珠の耳飾りの少女』, Public domain, via Wikimedia Commons

『真珠の耳飾りの少女』の特徴は、明確な陰影と優しくつややかな女性の表情です。絵画に向かって左側から当たっており、全体的に薄暗い環境のなかで明確なメリハリを生んでいます。

『真珠の耳飾りの少女』の女性には、眉毛がないことがしばしば指摘されます。眉毛がない理由は、現実の女性ではなく理想化された女性を現したためでしょうか?

また、作品のタイトルにもなった「真珠の耳飾り」が真珠にしては大きすぎると考える美術史家もいます。真珠の輪郭がぼやけている、イヤリングになるための吊るしがない、などの理由からも、理想上の装飾品である可能性を否定できません。

眉毛がない理由は、退色して消失してしまったのか、もともと描かれていなかったのか定かではありません。2018年の 調査によれば、すくなくとも女性には繊細なまつ毛が描かれていたとがわかりました。

このように、現実のモデルを描いたわけではないという説を裏付ける要素はいくつかありますが(真珠が大きすぎる、眉毛がないなど)確実に理想化された存在を描いたとは言い切れない状態です。これほどまでに有名な作品でありながら、『真珠の首飾りの女』は今でも謎多き作品であり続けているのです。

配信元: イロハニアート

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