真珠の耳飾りの少女(フェルメール)の見どころ
フェルメール『真珠の耳飾りの少女』, Public domain, via Wikimedia Commons
フェルメール『真珠の耳飾りの少女』の見どころは、テーマが明らかになっていないミステリアスさにあります。テーマやディテールに関する憶測や考察は、作品をより深く理解したいという感情を掻き立てるのでしょう。
作品を「理想化した女性の絵である」と主張する美術史家のなかには、背景の単調さを理由に挙げる人もいます。一般的にこの時期のオランダ画家は、モデルが存在している空間を含めて作品を残したためです。つまり、背景が真っ黒で空間が描かれていないのは、作品自体が想像上のものであるからという主張です。
しかし、1994年におこなわれた修復では、黒い無地の背景が元はエナメル色だったことがわかりました。フェルメールは、黒い背景の上に緑や藍の透明な絵の具を加えることで、暗めのエナメル色を作り出したようです。薄い絵の具はのちに退色し、現在に残る黒い背景だけが残りました。
さらに2018年の調査によると、実はフェルメールは背景の空間を描いていたことが判明。おそらく薄い絵の具層の退色によりディテールが見えなくなり、黒単色の背景に変化したのでしょう。
350年のときのなかで、絵画が変化してしまったことで、フェルメールが作品に込めた意図が簡単につかめなくなってしまったのです。背景が描かれているのであれば、現実のモデルを描いた作品なのか?それでもなお、不自然な真珠の大きさや配置が問題として残ります。
ここまで詳細が不明な作品でありながら、『真珠の耳飾りの少女』が今もなお多くの人に愛されているのは、そのミステリアスさゆえかもしれません。彼女の優しく美しいほほえみは、作品の前に立つ人を魅了し続けています。
鑑賞の際は、ぜひ『真珠の耳飾りの少女』の神秘的なまなざしを楽しんでくださいね。以上、フェルメール『真珠の耳飾りの少女』についてでした!
