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脱ぐ!歌う!全編英語!日本を背負い過ぎな山本耕史。ミュージカル『フル・モンティ』インタビュー

脱ぐ!歌う!全編英語!日本を背負い過ぎな山本耕史。ミュージカル『フル・モンティ』インタビュー

1998年、そして2024年には全編英語でミュージカル『RENT』にて主人公マークを演じ、大きな話題となった俳優の山本耕史さん。0歳のころから乳児モデルとして活動、16歳でドラマ『ひとつ屋根の下』でその名を広く知らしめ、以降も映画にドラマにミュージカルにジャンルを問わず大活躍。クセの強い役柄も、シリアスな作品も、山本さんが演じているから安心して観ていられる……なんてお感じになったことがある方も、きっと多いことでしょう。そんな山本さんがこの夏、日米合作ブロードウェイミュージカル『フル・モンティ』に出演! 激戦が予想されるチケット一般発売を前にお話を聞かせていただきました。聞き手は映画ライターのよしひろまさみちさんです。

日米合作ブロードウェイミュージカル「フル・モンティ」
演出:トレイ・エレット/脚本:テレンス・マクナリー/作詞・作曲:デイヴィッド・ヤズベック/出演:山本耕史、Adam Chanler-Berat、Greg Hildreth、ゆりやんレトリィバァ、John Hemphil ほか

――2024年にブロードウェイのカンパニーと共演した『RENT』で日米合作のミュージカルを経験されましたが、この『フル・モンティ』はどういういきさつで?


 


山本 『RENT』がきっかけなんですよ、これ。


 


――演出のトレイ・エレットさん含め、重複する出演者が多いですものね。


 


山本 こんなふうにつながるとは思ってもみませんでした。じつは『RENT』って、僕の俳優人生の大半を費やし、俳優としての山本耕史を作ってくれた作品なんですよ。21歳のときに日本語版初演公演をやって、2024年にも再度同じ役を演じましたが、そのときは全編英語で。いろいろな条件が重なってあのチャレンジになったんですが、あれをやったことで舞台人生にはもう一区切りついた、と感じていたんです。でも、その公演が終わった直後に、トレイから「次は何やる?」って聞かれたんですよ。


 


――あ、きっかけはそこだったんですね。


 


山本 そうそう。でもそれって、日本でよくある社交辞令ってやつじゃないかと思ってたんです。気を遣ってくれて嬉しいな、としか思ってなかったのに、トレイは「耕史にぴったりの作品があるんだよね。2025年はどう?」っておっしゃって。あれ? これ社交辞令じゃないかも、と思ったんですよ。ただ、そのときもう25年の春の予定は埋まっていたし、また英語でやるとなると準備が全く間に合わないこともありましたし、僕とトレイだけで進めたら大変なことになっちゃいそうなので、興行社などに相談したんですよ。「なんか本気っぽい話がありまして」って。


 


――(笑)


 


山本 それで動き始めました。そこからはあれよあれよという間に準備が進んで、「あ、ほんとにやるんだ。もう舞台のお仕事は終わったと思っていたのに」って、気持ちがついていってなかったですね(笑)。だって、母国語でお芝居するだけでも大変なのに、英語でお芝居と歌をやることになるから、本当に想像を絶する大変さがあるのが分かっていたから。でも、トレイが本気で誘ってくれたんだったら、「できない」とは言えない。できると思って声をかけてくれているから。



 

――24年の『RENT』、ほんとに素晴らしかったですもん。


 


山本 ありがたいけど、軽はずみにはできないんですよね。『RENT』の場合、26年前からやってるおかげで作品のこともセリフも、ディテールに関しては理解しているつもりだけど、『フル・モンティ』は0スタートだから。


 


――ちなみに映画はご覧になりました?


 


山本 このお話が決まってから観ました。でも「あ、これオリジナルはミュージカルじゃいんだ」っていうのが第一印象。


 


――そうなんです。舞台もイギリスの炭鉱町で設定がかなり変わってます。


 


山本 そう。ミュージカル化するにはぴったりの作品だってことは分かったんですが、映画版がこの舞台版の参考にはあまりならない、と思って、普通に鑑賞して楽しみました。


 


――ミュージカルに向いている素材ではあるんですよね。メイルストリップ(男性のストリップ)は音楽がないと成立しませんし、映画版のサントラも名盤ですし。


 


山本 そう思いますよ。だからか、このミュージカル版の開発と上演はかなり早かったんですよ。1997年の映画ですが、2000年にはミュージカル化されているんです。当時あまり話題にならなかったんだけど、それには理由があって。当時って『プロデューサーズ』やエルトン・ジョンの『アイーダ』、『ライオン・キング』など、ミュージカルの最強演目が軒を連ねてしまって、ちょっと埋もれちゃったんですよね。すごくいい作品なのに、他の演目が強すぎるからって埋もれちゃうのはもったいない、ってトレイも言っていて、日本での公演を模索していたっぽいんですよ。


 


――日本も招聘公演や山田孝之さん主演のバージョンが上演されています。


 


山本 そうなんですよね。一定の知名度もある、ということも分かったので、映画も楽しんで観たのですが、すごく魅力的なストーリーでした。どん底にいる主人公たちがそれぞれの苦悩を抱えながらも一つの目標に向かって常識をぶち破りながらはいあがっていく、っていうストーリーライン、すごく好きなんですよ。この作品のつくりって、僕が以前出演した『メンフィス』(50年代のアメリカ南部を舞台に、音楽を通じて人種差別に立ち向かう物語。2010年のトニー賞を獲得)と似てるんです。人種差別があたりまえの時代に、ブラックミュージックに惚れ込んだ白人の青年が、音楽の素晴らしさを伝えるためにアフリカ系のコミュニティにがんがん入っていって、常識をぶち破っていくんですよ。


 


――たしかに大枠が似てますよね。


 


山本 『フル・モンティ』は冴えないおじさんたちが、うだつのあがらない生活にジレンマを抱えている一方で、彼らを支えている女性たちも描かれて。それが最後に文字通り裸になって全てを脱ぎ捨てるっていう作品。裸になるっていう、ある意味強烈な表現を、物語のテーマにすごくうまく利用しているんですよね。これで魅了されないわけがない。


 


――そうです。結末いっちゃってますけど、本当に裸になるのがこの作品の見せ場。


 


山本 いや、トレイが「ぴったりの作品」って言ってくれたのは、それが理由でしょ、って思いましたもん(笑)。


 

映画『フル・モンティ』
© 2026 20th Century Studios. All Rights Reserved.
ディズニープラスのスターで配信中

――(笑)。いやいや、『RENT』で魅せたお芝居の面でもですよ!


 


山本 それがですね……。『RENT』のときって、歌8割、セリフ2割くらいだったんですよ。しかもセリフの大半は自分のタイミングで始められるモノローグだったんです。ところが今回は逆。8割はセリフなので、プレッシャーがぜんぜん違うんですよね。日本語だったら、本番までにセリフを全部覚えておけば、なにかトラブルが遭ったとしてもなんとか形にはなるけど、英語で芝居するとなると相手のセリフを受けてアドリブでかわすなんてことは至難の業だし。いや、ほんと挑戦しかないです。


 


――それと共に、からだも仕上げて。


 


山本 それはあまり気にしないでいけそうなんですよね。普段からワークアウトをしていますし、なんなら他のキャストのガタイがデカいから。今回のイーサン役のスティーブン(・ロシェット・ロペス)は『RENT』でロジャー役をやっているんで知っているんですけど、彼もすごいからだをしてるんですよ。もうほぼマーベルのスーパーヒーローみたいなガタイ。それに、『フル・モンティ』の主人公たちはみんな、どこかだらしない体型だから親近感を持てるキャラクター設定なので、そこまでガッチガチに鍛え上げて、というのは必要ないかな、と思ってます。


 


――奥さんと子どもがいて、仕事にあぶれたダメ親父設定ですもんね。


 


山本 そうそう。子どものためならなんでもやります、っていう設定。だからこそ僕がこの作品に惚れ込んだというのはありますね。おそらくトレイはそこも考慮して僕に声かけてくれたんじゃないかな。僕も子どものためだったらなんでもやりたいと思いますし。あるシーンでジェリーは息子に諭されて次のステップに進むんですけど、身に覚えがありまくりですよ。


 


――お子さんから諭されることなんてあります?


 


山本 日々ありますよ。「お行儀が悪いと注意するくせに、お父さんは食事中に肘をついてもいいんだ」とか(笑)。ほんっと基本的なことばかりなんだけど、ハッとさせられますし、大人だから、子どもだから、じゃなくて、つねに対等でいるべきだって考えてます。

――ジェリーと山本さんが違うのは、彼が冴えない男の象徴みたいなところですけど。


 


山本 これといった特徴がないんですよね、ジェリー。一緒にストリップに挑戦するデイヴって役はちょっとぽっちゃり、ハロルドは紳士だけどちょいダサい、ホースはアフリカン・アメリカンとかそれぞれ見た目やキャラ設定に特徴があるんだけど、ジェリーは本当に何もない。マッチョでもないし、服もダサい。こんなにも特徴がない役だからこそ、僕に声かかったってのはあると思うんです。深読みしすぎかもしれないけど。


 


――え、それはどうして?


 


山本 『RENT』もマーク役がそうだったんですが、そもそもアメリカ人キャストの中でアジア人がやるような役じゃないんですよ。でも、トレイとしては「異質だけど突出した存在として人種を設定から変えてもいける」と思ったんじゃないかな。それはジェリーにも言えることだと思うんです。


 


――それに、デイヴのように大柄な男との対比として、アメリカ人よりは華奢に見えるアジア人ってのもありですよね。


 


山本 そうそう。デイヴを引き立てるためには、ある程度細めの人が必要なんですよ。それにイーサンがすでにデカい。スティーヴンと僕が並んだら、僕なんてぜんぜん小さく見えますよ。日本人だけのキャスティングで、若くて華奢な子たちと芝居したら、僕はとてつもなく大きく見えちゃうかもしれないけど、このカンパニーだったら僕は中肉中背。ジェリーのためには、ちょっとだらしなく見えるくらいの体型にしないとね。


 


――日本人キャストでいうと、ゆりやんレトリィバァさんがジョージー役に。


 


山本 いや、ほんと楽しみですし、むしろどういう気持ちか聞いてみたいですよ。だって、彼女、初めてのミュージカルでブロードウェイのキャストと共演じゃないですか。英語はお上手ですけど、英語セリフは初めてでしょうし。ワクワクしてるのか、それとも怖いのか、早く聞いてみたい。


 


――『RENT』は日本人ひとりだったから、今回はちょっと気分が違います?


 


山本 クリスタル・ケイさんはいたけど、国籍で言うと日本人は僕だけでしたからね。あのとき、どこかのメディアの方から「山本さん、日本背負いすぎじゃないですか?」って言われたんですけど、ほんとそれ(笑)。だから今回はゆりやんさんがいることで、心強いですよ。稽古のときに分からない英語の指示来たら、ゆりやんさんに聞いちゃおうと思ってます(笑)。


 


――え、演出に通訳はいないんですか?


 


山本 そうなんです。各セクションに必ず日英の通訳さんがついているんですが、演出にはいないんです。だから、分かったフリするしかない(笑)。


 


――すご。


 


山本 でもね、勉強になるんですよ。歳とキャリアを重ねれば重ねるほど、先生になってっちゃうでしょ。習う、学ぶことってすごく少なくなるんです。それが、このカンパニーだとつねに生徒側。年齢で上下関係はありませんし、学ぶことばかりですごく新鮮ですよ。


 


――いやー、いい現場。本当にご縁ですねー。


 


山本 僕のキャリアは全てご縁で成り立ってると思ってます。とくに日本の作品は、監督やプロデューサーからお声をかけていただいて次の仕事、ってことが多いので。ただ、それが海外でも発生するとは思ってもみませんでした。


 


――じゃ、日米合作ではなく、次のご縁はウエストエンドかブロードウェイで!


 


山本 そんなことないでしょ……とも言い切れないですよね。『フル・モンティ』が実現しちゃったから(笑)

日米合作ブロードウェイミュージカル「フル・モンティ」
演出:トレイ・エレット/脚本:テレンス・マクナリー/作詞・作曲:デイヴィッド・ヤズベック/出演:山本耕史、Adam Chanler-Berat、Greg Hildreth、ゆりやんレトリィバァ、John Hemphil ほか
原作:映画『フル・モンティ』(97) ディズニープラス「スター」にて配信中

チケット一般発売6月6日(土)からスタート!

東京公演


8月19日~9月7日(全24回)


会場:東京国際フォーラム ホールC(東京都千代田区丸の内3-5-1)


料金:S ¥17,500、A ¥11,500、B ¥6,000


 


大阪公演


9月10日14日(全7回)


会場:新歌舞伎座(大阪府大阪市天王寺区上本町6-5-13 YUFURA 6F)


料金:特別席 ¥18,000(昼)¥17,000(夜)、S ¥16,500(昼)¥15,500(夜)、A ¥11,500(昼)¥10,500(夜)、サイドシート ¥9,000(昼)¥8,000(夜)

Interview & Text_MASAMICHI YOSHIHIRO
Photograph_KAORI IMAKIIRE
Styling_TOM KASAI
Hair & Make-up_ KAZUHIKO NISHIOKA

提供元

プロフィール画像

オトナミューズウェブ

「37歳、輝く季節が始まる!」がキャッチコピー。宝島社が発行する毎月28日発売のファッション誌『otona MUSE』がお届けする、大人のためのファッション・ビューティ・ライフスタイル情報!