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武田航平&渋谷謙人が魅せる、大人ビターな恋愛とリアルな人生模様が刺さる「スモークブルーの雨のち晴れ」

武田航平&渋谷謙人が魅せる、大人ビターな恋愛とリアルな人生模様が刺さる「スモークブルーの雨のち晴れ」

武田航平&渋谷謙人W主演による「スモークブルーの雨のち晴れ」
武田航平&渋谷謙人W主演による「スモークブルーの雨のち晴れ」 / イラスト:ベブ

武田航平・渋谷謙人W主演で人気BLコミックを実写ドラマ化した「スモークブルーの雨のち晴れ」(毎週月曜深夜1:29-1:59、読売テレビ※放送時間は変更になる可能性あり)が放送中。本記事では安定感に癒される大人の恋愛とリアルな人生模様が交錯する同ドラマの見どころを紹介する。

■人気作家・波真田かもめ氏のBLコミックを実写ドラマ化

本ドラマは累計発行部数70万部を突破、ボイスコミックのYouTube再生数は140万回を超える、波真田かもめ氏原作の同名人気BLコミックを実写ドラマ化した“大人ビターなラブストーリー”。主人公は元製薬会社のエースMRでありながら、仕事と人生に行き詰まって退職し、現在は無職の吾妻朔太郎(武田)。あるとき、かつて一夜をともにした元同僚の久慈静(渋谷)と8年ぶりに再会する。気だるげな長髪姿の久慈だが、今は翻訳の仕事をしており、朔太郎もバイトとして手伝うことに…二人の人生が再び動き始める。

波真田氏は多作な作家として知られ、シリーズ作品も複数執筆。人気があるからこそ続刊されるシリーズものを何作も生み出している点からも、読者から高い支持を得ていることがうかがえる。繊細なイラストでかわいらしいツンデレキャラクターなどを魅力的に表現し、切なくも甘い恋物語を描く。なかでも「スモークブルーの雨のち晴れ」の人気は特に高く、既刊数も最も多い作品となっている。最新刊となる9巻は2026年6月17日(水)に発売予定。

■恋愛だけでなく、人生の機微を映し出す人間ドラマ も充実

同作は、2人ともアラフォーという大人同士が織りなす、ほろ苦いラブストーリー。恋愛だけに夢中になる年頃ではない2人の物語には、再会から始まる恋模様とともに、仕事や暮らしを含めた人生そのものが映し出されている。

朔太郎はかつて製薬会社でエースMRとして活躍した華やかな経歴を持ちながら、現在は無職。同じく元エースMRの久慈も今は自宅で医療翻訳の仕事をしている。“人生は波に乗っている時ばかりではなくとも、日々を過ごしていかなければならない”という人生の世知辛さを体現する二人の姿は、多くの人の共感を呼ぶほか、大人の恋愛にリアリティと奥行きをもたらしている。

■確執のあった父の存在を通して、親子のリアルを描く

また、再会のラブストーリーと並行して、親、兄弟、家族のこと、さらには親が遺した遺品や家屋そのものまで、多くの人が避けて通れない現実にも切り込んでいる。

例えば、趣ある久慈の家に色濃く残された、今は亡き人物の気配。久慈は以前、確執のあった厳格な父を介護していたことが明かされる。翻訳という在宅中心の仕事を選んだ背景にも、父親の存在が少なからず影響しており、人生が家族によって形作られていく感覚が静かに伝わってくる。

そして、介護に向き合うなかで、久慈の親を見る視点も少しずつ変わっていったことが語られる。

幼い頃、親は完璧で絶対的に大きな存在であり、それを疑う余地などなかった。けれど、自分が年齢を重ねるにつれ、親という人間を客観視できるようになり、社会におけるポジションや限界まで見えてくる。

フィルターが外れ、親のちっぽけさや弱さを直視するのは正直きつい。そこに老いも加わり、かつてとは変わってしまった親の姿を見るのはなおさらだ。子どもは「親はもっと偉大だったはずだ」「昔はこんなことなかったのに、どうしてこんなこともできなくなってしまったのか」と戸惑い、勝手に落胆や苛立ちを覚えることも。

その一方で、かつては反抗の対象であった親のことも、ひとりの人間として見つめられるようになり、許しにも似た愛情が芽生えることもある。

そのような複雑な感情を想起させ、人生を感じさせる描写は、実写ドラマでも健在。リアリティの面でコミックとはまた異なる響きを持ち、よりダイレクトに心を揺さぶってくる。

■支え合いながらも踏み込みすぎない、 2人の距離感が心地よい

だからといって落ち込む内容ばかりかというと、危惧する必要はない。お互いが相手の存在によって救われている様子を見せてくれるのも本ドラマの魅力のひとつ。

一緒に悩み、ときに落ち込みながら、解決していくような…二人三脚とまでは言わないが、いわば遠くから見守って並走しているかのよう。1人で向き合うべき場面では下手に干渉せずにあえて距離を置き、支えが必要な局面ではそっと手を差し伸べる。絶妙な距離感で相手に寄り添う心地よい関係性を見せてくれるのだ。

■人生における仕事の重みと再生を描き、そっと背中を押してくれる

さらに、家族や人間関係に加え、人生において避けては通れないテーマでもある仕事についても丁寧に描かれている。久慈は病気になった父を支えるために自宅でできる仕事として翻訳家の道を選んだわけだが、表面的にも良好な関係とは言い難かった父と同じ職業に就くことには、幾ばくかの葛藤があったはずだ。

それでも、父親から直接仕事のノウハウを教わり、丁寧に手ほどきを受ける時間は父の愛情を感じないわけがない。父親も感情を表に出すタイプではないが、その丁寧な教え方からは、息子に自らの知識や技術を伝えられることに大きな喜びを感じていることが伝わってくる。久慈にとって翻訳の仕事は単に条件に合うということだけでなく、親子の関係を再構築するきっかけになったともいえる。

一方の朔太郎は仕事や結婚といった人生のステップから取り残されているような焦りを、自覚しないままじわじわと抱え込み、疲弊してドロップアウトした過去を持つ。しかし、久慈との出会いによって翻訳の面白さに触れ、新たな道を見出していく。朔太郎にとって大切な先輩・多治見(佐野和真)に声をかけられ塾講師として働き始め、その傍らで翻訳学校にも通うことに。

ドラマ冒頭での朔太郎は定職に就かず、バーで知り合った男と夜をともにしようとするなど、どこか投げやりで刹那的だった。しかし人との出会いをきっかけに自然と前を向いて進もうとする姿には見ていて胸を撃たれる。立ち止まることがあっても、人生はいくらでも軌道修正できるのだと示してくれるのだ。

■不安定な人生のなかで、穏やかな大人の恋愛模様に癒やされる

2人の恋愛としての距離感もバランスが良い。大きな変化や劇的な展開はないが、落ち着いた大人の恋愛が描かれている。恋に浮かれて勢いのまま同棲したり、公認カップルとなるわけではない2人だが、下手に駆け引きすることもなく、饒舌ではない久慈は多くを語らずとも、不意のキスやここぞというときのさりげない気遣いから朔太郎への愛がダダ漏れている。

また、夜遊びしてふらふらと過ごしていた朔太郎も久慈と過ごす時間を重ねるなかで、久慈に懐いて隣にいることが当たり前のようになっていく。さまざまなできごとが同時進行で起きていく人生のなかで、2人の安定感ある恋愛に気づけば心が癒やされていく。

■かわいらしさと大人の色気を体現するキャストにも注目

この2人を演じるキャストも見ごとにハマっている。ビジュアル面で原作のキャラクターにそっくりというわけではないのだが、むしろそうではないにもかかわらず、2人とも概念としての朔太郎と久慈なのだ。

朔太郎を演じるのは「晩酌の流儀」や「財閥復讐~兄嫁になった元嫁へ~」などの武田。朔太郎は奔放で放っておけない愛嬌があり、 ひと言で言うとかわいらしい。武田はもちろん大人の男性であり、世に言う女性的な愛らしさとは異なるのだが、不思議とかわいらしいという言葉が似合う。「オールドファッションカップケーキ」でも武田の持つかわいらしさは発揮されていたが、本作でも十分に魅力が光っている。

また、久慈は「私の知らない私」や「ソロ活女子のススメ」ほか多数の作品に出演し、いわゆる名バイプレイヤーとして知られる渋谷が演じる。久慈は朔太郎から「厭味ったらしい」と言われるほどかっこいいわけだが、渋谷も納得の存在感で、大人の余裕と色気があふれている。気だるげなムードもしっくりと板についており、原作の久慈を思わせるハーフアップスタイルも似合っていて、思わずドキッとさせられる。

■ずっと見守っていたくなり、続編を期待せずにいられない

久慈の住む家も「もう1人のキャスト」と言いたくなるほど趣があって印象深い。縁側、素敵なソファのあるリビング、台所、どこを切りとっても味わい深く、どこも絵になるフォトジェニックな空間だ。朔太郎と久慈が家で過ごす姿はそんな家を手放すことになるのもまた人生であるし、その現実を前に久慈が絶望するわけでなく静かに受け止めている姿からもまた年齢を重ねた大人らしさがにじむ。キャストの好演に加え、家や小道具まで含めて作品世界にいっそう厚みをもたらしている。

人生の一場面をそっと切り取ったような物語だからこそ、朔太郎と久慈の日々はずっとはこの先も続いていくように感じられ、いつまでも見守っていたくなる。ドラマが終幕に近づくにつれ、その世界から離れがたくなっていく。もっとこの物語を見届けたいと思わせる、求心力のある作品だ。

◆構成・文=牧島史佳

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