視力矯正手術の選択肢の一つに、ICL(Implantable Contact Lens)と呼ばれる手術方法があります。ICLは、特に強度近視や角膜に不安がある方にとって、治療の選択肢となっています。
本記事では、ICLの基本的な仕組みやレーシックとの違い、手術の流れ、リスク・ベネフィット、費用の目安、さらに日本国内でICL手術を受ける際のクリニック選びのポイントを解説します。
ICLの概要

ICLとは、眼の中にコンタクトレンズのようなやわらかい素材のレンズを挿入して屈折異常を矯正する治療法で、眼内コンタクトレンズとも呼ばれます。
このレンズは薄い人工レンズで、水晶体と虹彩のあいだの後房(こうぼう)に挿入することで、メガネやコンタクトレンズの代わりにピント調節を補助します。
角膜を削らず、眼の構造を大きく変えることなく近視や乱視などの屈折異常を改善でき、視力を矯正できるのが特徴です。ICLによって網膜上に正確に焦点が合うようになり、裸眼視力の向上が期待できます。
ICLは、角膜の厚さ・形状に問題がありレーシックが難しい場合や、強度近視である場合などの治療には有用です。
適応年齢は原則21歳以上〜45歳程度で、術前に少なくとも1年以上視力が安定していることも重要です。視力が安定していない若年者や、白内障の症状が出始める50代以降の方などは、ICLの適応外となる場合があります。
ICLとレーシックの違い

ICLとレーシックは、いずれも視力を矯正して裸眼での視力向上を目指す治療法ですが、アプローチは異なります。
レーシックは、角膜の表面をレーザーで削って角膜のカーブを変えることで、屈折力を調整します。一方のICLは、角膜は削らず角膜の縁を小さく切開し、眼内にレンズを挿入して屈折異常を矯正します。
レーシックは角膜を削るため元に戻すことはできませんが、ICLは必要に応じてレンズの取り外しや交換が可能で、矯正状態を可逆的に調整できる点が大きな違いです。
また、適応範囲にも違いがあります。
レーシックは軽度〜中等度の近視に適していますが、角膜を削る必要があるため、強度近視(近視の度数が-6.0D以上)には不向きです。
ICLによる治療は角膜の厚みに左右されないため、角膜が薄かったり形状に問題があったりしてレーシックを受けられない場合でも、治療できる可能性があります。
また、ICLは強度近視が良い適応とされており、日本で承認されているICLレンズは-6.0Dから-18D程度までの近視眼が適応とされています。
ICLとレーシックは、術後の見え方の違いもあります。
レーシックは、一般的には術後数日〜1週間程度で視力が回復し始めます。一部の患者さんでは、ぼやけたり光が見えにくかったりする状態が続くこともありますが、1ヶ月程度で視力が安定します。ICLは見えるようになるまでの期間が短く、手術当日、遅くても手術翌日には視力の回復を感じることができます。
また、ICLは基礎疾患を持っている方や白内障の症状がある方、妊娠中や授乳中の場合、手術が受けられない可能性があります。適応かどうかは、クリニックにて事前のカウンセリングや検査でチェックしてもらう必要があります。

