C表記論『見取り図じゃん』/テレビお久しぶり#173

C表記論『見取り図じゃん』/テレビお久しぶり#173

「テレビお久しぶり」
「テレビお久しぶり」 / (C)犬のかがやき

長らくテレビを見ていなかったライター・城戸さんが、TVerで見た番組を独特な視点で語る連載です。今回は『見取り図じゃん』(テレビ朝日)をチョイス。

■C表記論『見取り図じゃん』

見取り図のふたりがMCを務める冠番組、『見取り図じゃん』。10月から放送時間が『アメトーーク!』直後に変わったことで、今回の放送はそちらの出演者がそのまま続投して登場するコラボ回だ。蛍原徹、ケンドーコバヤシ、ダイアン、きしたかの・高野正成、ビスケットブラザーズ・原田泰雅、令和ロマン・松井ケムリ、岡野陽一といった面々で、普段言えないようなことをボソッとつぶやく大人気コーナー『大きい声では言えないけど、小さい声なら言える会』に興じる。

公式の切り抜き動画がSNSでよく回ってくるんで、存在は知っていたけれど、ちゃんと見るのは初めてだったこの企画。そりゃ面白いわ。これは私だけかもしれないけれど、芸人……ひいては芸能人をテレビで見るとき、その「ウソさ」を鑑賞している感覚がある。彼/彼女らの言動はあくまでもタレントとしての偶像なのであって、「本当」ではない……という前提のもと、その偶像を楽しむというか。無意識にその前提を持っている私のような人も少なからずいると思う。だから私は芸能人にある種の感傷を抱くわけだが、そんな人たちが小声で本音を話している(実際はそれすら偶像のまやかしである。私が見ているのはあくまでTVer全画面表示というフレームに過ぎない)のだから、単純な私は興味津々。結局ステゴロでペチャクチャ喋りあうような番組が一番好きだというのもある。

ところで、大きな声では言えないんですけど……

TVerのサムネにもなっている、きしたかの・高野の「エッチの仕方よく分かってない」という告白。それ自体はさておき、私が幼少期からずっと引っかかっているのが「エッチ」という表現。「セックス」をやわらかく言っているのだろうけど、なんか変な普遍性と温かみが増して余計な生っぽさが出ていると思う。「セックス」で何がダメなのだろう。「エッチ」ってなんか……性行為の事実より一歩奥、内容にまで言及しているような気がするのだ。結局、前に書いた大便表記論(https://thetv.jp/news/detail/1175104/)と同じような主張にはなるのだが、「うんち」表記と同じく、「エッチ」表記も端的にあざといというか。グミの名前じゃないんだから。性行為とは滑稽さも多分に含んだ運動であって、あざとさを越えたところにある。AとBまでなら「エッチ」でいいんだけど、Cはねえ。運動としてのピストンと、表記としての「エッチ」に、大きな乖離がある。ピストンのマヌケさを、「エッチ」という言葉で回収できるだろうか?ムリだろう。性行為の間の抜けたルックもすべて内包した「セックス」という言葉の、ピシッと張り詰めた緊張感と、その懐の深さに改めて脱帽である。

エッチ、ふざけて言うならいいけれど、普段使いできるようなアイテムではない、これが私の結論。さすがに色んな反論あるだろう。こういう話を、徐々に大きな声で朝までやろう!

■文/城戸

提供元

プロフィール画像

WEBザテレビジョン

WEBザテレビジョンは芸能ニュース、テレビ番組情報、タレントインタビューほか、最新のエンターテイメント情報をお届けするWEBメディアです。エンタメ取材歴40年以上、ドラマ、バラエティー、映画、音楽、アニメ、アイドルなどジャンルも幅広く深堀していきます。