腎臓の機能が低下している方にとって、バナナに豊富に含まれる「カリウム」は注意が必要な成分です。腎臓の排泄能力が落ちると、血液中のカリウム濃度が上昇し、重篤な不整脈を引き起こす「高カリウム血症」につながる可能性があります。バナナ1本のカリウムは約360mgと、ほかの果物と比べてもとても多い量です。腎臓病のステージ別の注意点と、代替となる果物の選び方もあわせてご説明します。

監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)
1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。
腎臓病の方へ|バナナとの賢い付き合い方と代替食品
腎臓病を抱える方にとって、バナナを避けることが推奨される場面は少なくありません。しかし、食事の楽しみを極端に損なわないよう、工夫しながら食生活を維持することも治療の継続には大切です。このセクションでは、腎臓病の方向けの実践的な食事管理のポイントと、バナナの代わりとなる果物の選び方について説明します。
カリウムを減らす調理の工夫と食事管理のポイント
腎臓病の方がカリウムを多く含む食品を食べる場合、調理法を工夫することでカリウムの摂取量をある程度減らすことができます。野菜や芋類などは「水さらし」や「ゆでこぼし」という方法で、食品内のカリウムを水に溶かし出すことができます。具体的には、野菜を細かく切って水に30分以上さらしてからゆでる、またはゆでた後に再度水洗いするという方法が有効です。
ただし、バナナは生で食べることが多く、これらの調理法を適用しにくいという特徴があります。バナナを水にさらすことは現実的ではなく、焼いたり加熱したりした場合でもカリウムが体外に排出されるわけではありません。そのため、腎臓病の方にとってバナナは「そもそも摂取量を制限する」という対応が基本となります。
バナナの代わりとなる果物としては、カリウム含有量が比較的少ないものを選ぶと良いでしょう。一般的にカリウムが少ない果物とされているのは、りんご(可食部100gあたり約120mg)、ぶどう(約130mg)、梨(約140mg)、ベリー類(いちご、ブルーベリーなど)です。また、缶詰の果物(桃やみかんなど)は、シロップにカリウムが溶け出すため、汁をしっかり切って食べれば生の果物よりもカリウムを抑えられます。ただし、缶詰は糖分が多いものもあるため、糖尿病を合併している方は特に注意し、適量を守ることが必要です。
腎臓病の食事療法における総合的な注意点と医療機関との連携
腎臓病の食事療法は、カリウム制限だけでなく、塩分制限、リン制限、タンパク質制限、水分制限など、複合的な管理が必要になる非常に専門的な分野です。これらをすべて自己管理するのは極めて困難であり、管理栄養士による個別の食事指導を受けることが強く推奨されます。また、加工食品の原材料表示を確認する習慣も大切です。「調味料(アミノ酸等)」や「pH調整剤」にカリウムが含まれている場合があるため、注意が必要です。
また、透析を受けている方(血液透析・腹膜透析)はさらに厳格な食事管理が必要になる場合があります。透析の種類や頻度によってもカリウムや水分の制限量が異なるため、透析を担当する医師や看護師、管理栄養士の指示を最優先としてください。
バナナは栄養豊富な食品ですが、腎臓機能が低下している方にとっては、そのカリウムの多さが命に関わるリスクをもたらす可能性があります。「果物だから安心」「少しくらいなら大丈夫」という自己判断は絶対に避け、日頃から担当医や管理栄養士と密にコミュニケーションを取りながら食事管理を進めることが、ご自身の健康を守る上で最も重要です。血糖値が高めと指摘されたことがある方、糖尿病と診断されている方は、バナナを含む果物の摂取量・タイミングについて必ず主治医や管理栄養士に相談してください。
また、健康診断でeGFRが45未満と指摘されたことがある方や、手足のしびれ、強い脱力感、倦怠感など高カリウム血症を疑う原因不明の体調不良がある場合は、速やかに医療機関(特に腎臓内科)を受診してください。
まとめ
バナナは豊富な栄養素を含む優れた食品ですが、朝に単独で食べることによる血糖値への影響や、腎機能が低下している方にとってのカリウムリスクなど、注意すべき側面もあります。ご自身の健康状態を正しく理解し、バナナと賢く付き合っていくことが大切です。気になる症状や持病がある方は、専門の医師に相談のうえ、食事管理を進めてください。
参考文献
日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン2024」
日本腎臓学会「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023」
日本腎臓学会「慢性腎臓病について」
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