排尿の変化に加え、前立腺がんが進行した場合には、痛みや出血などの症状が現れることがあります。これらは病状がある程度進んでいるサインである可能性があります。腰や骨の痛み、尿や精子に血液が混じるといった変化に気づいたときは、「たまたまだろう」と自己判断せず、医療機関での評価を検討することが望ましいといえます。

監修医師:
村上 知彦(薬院ひ尿器科医院)
長崎大学医学部医学科 卒業 / 九州大学 泌尿器科 臨床助教を経て現在は医療法人 薬院ひ尿器科医院 勤務 / 専門は泌尿器科
前立腺がんの前兆として現れる痛みやほかの身体症状
排尿症状以外にも、前立腺がんが進行した場合には痛みや出血などの症状が現れることがあります。これらは病状が一定程度進んでいるサインである可能性があるため、見逃さないようにすることが大切です。このセクションでは、排尿以外の身体症状について解説します。
腰痛・骨の痛み
前立腺がんは骨に転移しやすいとされており、転移が生じた場合には骨の痛みが現れることがあります。特に腰、背中、骨盤、股関節などに持続的な痛みを感じる場合は、整形外科的な問題と区別するために評価を受けることが重要です。
骨への転移による痛みは、最初は鈍い違和感程度であっても、時間の経過とともに強くなることがあります。また、骨が脆くなることで、ちょっとした動作でも骨折しやすくなる場合もあります。腰痛は非常に身近な症状であるため、「疲れや老化のせいだろう」と自己判断してしまいがちです。しかし、安静にしても改善しない持続的な痛みや、夜間に痛みが強くなる場合には、腫瘍内科や泌尿器科への相談を検討することが勧められます。
前立腺がんの骨転移は適切な治療によって症状を和らげることが可能とされており、早めに医師に相談することが身体への負担を軽減するうえで重要です。日常生活で説明のつかない骨や関節の痛みが続くときは、積極的に受診を検討してください。
血尿・血精液(血液が混じった精液)
尿に血液が混じる血尿や、精液(精子)に血液が混じる血精液は、泌尿器系の異常を示すサインである場合があります。これらは必ずしも前立腺がんだけが原因ではありませんが、前立腺がんが進行した場合に現れることがあるため、見逃せない症状です。
血尿は肉眼で確認できる場合(尿が赤みを帯びる)と、顕微鏡的に確認される場合の両方があります。肉眼的血尿は非常に目立つ症状であるため気づきやすい一方、顕微鏡的血尿は健康診断の尿検査で初めて発見されることもあります。血尿を認めた場合は、一時的なものであっても必ず医療機関で原因を調べることが大切です。
血精液についても、1回限りであればそれほど深刻ではない場合もありますが、繰り返す場合や精巣(睾丸)の痛みを伴う場合には専門機関での評価が必要です。前立腺がんに限らず、こうした症状は早期に正確な診断を受けることで、適切な対応につなげることができます。
まとめ
前立腺がんは早期発見によって治療の選択肢が広がり、生活の質を保ちながら治療を進めやすくなる疾患のひとつです。排尿の変化や腰痛など気になる症状がある場合は、ためらわずに泌尿器科や内科などに相談することが大切です。また、50歳以上の男性の方(家族歴がある場合は40〜45歳から)は、定期的なPSA検査を検討することが勧められます。治療費については高額療養費制度などを活用しながら、医師・医療スタッフとともに治療方針を考えていくことが、前立腺がんと向き合うための第一歩となります。
参考文献
国立がん研究センター がん情報サービス「前立腺がん」
日本泌尿器科学会「前立腺癌診療ガイドライン」
日本癌治療学会 がん診療ガイドライン「前立腺がん」
- 9人に1人が罹患する前立腺がんを専門医が解説―「放っておいていいがん」の認識は誤り
──────────── - 「がん患者の5年生存率」を厚生労働省が新たに公表 がん予防と早期発見のポイントとは【医師監修】
──────────── - 「尿の出が悪い」「残尿感」は年のせい? 『前立腺肥大症』のサインと受診の目安とは【医師解説】
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