食あたりは食中毒とも呼ばれ、細菌やウイルスにより引き起こされる食べ物による中毒症状をいいます。
多くは嘔吐をともなう腹痛や下痢がその症状ですが、ひどい場合は症状が長引き不安になることも多いです。
そこで今回は食あたりの危険性について解説します。受診の目安やノロウイルスとの違いも詳しく解説していきますので、ぜひ参考にしてください。
※この記事はメディカルドックにて『「食あたり」を発症すると現れる症状はご存知ですか?医師が監修!』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。

監修医師:
郷 正憲(徳島赤十字病院)
徳島赤十字病院勤務。著書は「看護師と研修医のための全身管理の本」。日本麻酔科学会専門医、日本救急医学会ICLSコースディレクター、JB-POT。
食あたりの危険性と受診目安

食あたりは最悪命の危険に陥ってしまうこともあるのでしょうか?
食あたりというと軽く考えてしまいがちですが、時には命に関わる危険性があるので充分な注意が必要です。最も多く死亡者が出やすい食中毒はキノコなどの植物性自然毒の中毒で、次いでフグ毒による動物性自然毒の中毒です。キノコ狩りなどで毒性の強いキノコを食用としたり、自分で釣ったフグを捌き食べてしまったりなどで発症し死に至ります。
また食あたりで嘔吐や下痢のために脱水症状を起こし、命の危険に陥る人も多いのです。
食あたりが重大な病気の引き金になる場合もあります。自己診断せずに受診してしっかりと治療することが必要です。
ノロウイルスとはどのような違いがありますか?
ノロウイルスはウイルスに汚染された食べ物を充分に加熱せずに摂取したことで起こる食中毒です。通常の食あたりと違うところは、ノロウイルスの場合は感染者が調理した食物を口にすることで別の人に2次感染が起こる点です。また食あたりを引き起こす細菌は食品の中で増殖を続けますが、ノロウイルスの場合は食品中では増えません。ノロウイルスは人の体内に入ってから増殖し、嘔吐や下痢などを引き起こすのです。
食品そのものが原因で食あたりを起こす細菌性食中毒と、人の手から手に感染することが原因のノロウイルスの食中毒ではその感染経路がまったく違います。
ただ症状としてはとてもよく似ているため、区別がつきにくいことも事実です。
食あたりとノロウイルスとの見分け方などありますか?
食あたりもノロウイルス食中毒も症状としてはほぼ同じといえますが、食あたりは夏場(6月~8月)、ノロウイルスは冬場(11月~2月)に最も患者が増えます。見分け方としては、嘔吐や腹痛、発熱などの症状が出た場合、周りにノロウイルス感染者がいないか確認しましょう。家族にノロウイルス感染者がいる場合には、ノロウイルスに感染していることが疑われるため受診して検査を受ける必要があります。
ノロウイルス感染をしているかどうかは、抗原検査で確認することが可能です。もちろん周りに感染者がいないからといって安心はできません。
万が一に備えてできるだけ2次感染を引き起こさないようにしっかりと対策をした上で、受診しましょう。
食あたりを疑った場合の受診目安を教えてください。
食あたりの症状もさまざまで、軽い場合はお腹の痛みと吐き気下痢の症状が数日で治まることもあります。そのような場合は様子をみてもよいでしょう。吐き気が治まったら水分補給をしながら安静にして回復を待つようにしてください。ただし、高齢者や乳幼児は重症化しやすいので早めに受診してください。
また次のような症状がある場合も早急な受診が必要です。
下痢や嘔吐を何度も繰り返す
高熱がある
水分を摂ることができない
尿が出にくい
意識障害がある
このような時には脱水症状を起こしている可能性もあり、命に関わる場合もあるので早めに受診してください。
軽い症状であってもいつまでも症状が続く場合は、何か別の病気が潜んでいる可能性があるので、かかりつけ医に相談することをおすすめします。
編集部まとめ

食あたり(食中毒)は細菌やウイルスが食べ物によって体内に入ることで発症する病気です。
安静にしていれば1週間から2週間ほどで治癒することが多いですが、細菌の種類によっては重症化する場合もあるので注意が必要です。
ノロウイルスなど感染者からさらに感染が広がる恐れのある食中毒に関しては、検査などの必要があるので至急受診してください。
食べ物を扱う時のひと手間が、食あたりを防ぐことにつながります。特に、生ものの扱いには充分注意して食あたりを防ぎましょう。
参考文献
食中毒予防の原則と6つのポイント(政府広報オンライン)
食中毒(厚生労働省)

