塩分が多い食品として味噌汁を避けている方はいませんか?「塩分=悪」という考え方は広く知られていますが、発酵食品である味噌の塩分はそれだけで語れるものではありません。大豆ペプチドやGABAなど、血圧に関わる可能性のある成分にも触れながら、味噌汁の塩分に対する通説を落ち着いて見直していきます。

監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)
1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。
「味噌汁の塩分は悪」は本当か?通説を見直す視点
このセクションでは、味噌汁の塩分が本当に健康に悪いのか、という問いに向き合います。「塩分=悪」という考え方は広く普及していますが、すべての塩分が同じように身体に悪影響を与えるわけではありません。発酵食品である味噌に含まれる塩分の特性について、正しく理解することが大切です。
味噌に含まれる塩分の量と一般的な認識
味噌汁1杯(約150ml)に含まれる塩分量は、使用する味噌の種類や量によって異なりますが、一般的には1〜2g程度とされています。日本人の1日の食塩摂取目標量(成人男性7.5g未満、成人女性6.5g未満:厚生労働省「日本人の食事摂取基準2020年版」)と比べると、1杯あたりの塩分量はそれほど突出して多いわけではありません。
しかし、加工食品や外食が多い現代の食生活では、塩分の総摂取量が知らず知らずのうちに増えているケースが少なくありません。その文脈の中で味噌汁の塩分だけが取り上げられ、「健康に悪い食品」として扱われることがあります。大切なのは、食事全体の塩分バランスを俯瞰して評価することです。
また、味噌の種類によっても塩分量は大きく異なります。赤味噌は塩分が高めで、白味噌や西京味噌は塩分が低めとされています。味噌の種類を選ぶだけでも、日常的な塩分摂取量を調整しやすくなります。
発酵食品としての味噌が塩分の影響を和らげる可能性
注目すべき点として、味噌は単なる塩水とは根本的に異なる発酵食品であるという事実があります。発酵の過程で生成される有機酸やアミノ酸、ペプチドといった成分が、血圧への影響や塩分の吸収・代謝に関与している可能性が研究者の間で議論されています。
実際に、大豆タンパク質が消化される過程で生まれる「大豆ペプチド」などのペプチドは、アンジオテンシン変換酵素(ACE)を阻害する作用を持つとされており、この酵素は血圧を上昇させるメカニズムに関与しています。つまり、味噌に含まれる成分が血圧調整に一定の役割を果たす可能性があるということです。これはあくまでも研究段階の知見であり、治療的な効果を保証するものではありませんが、「塩分だけを見て味噌汁を避けるのは早計ではないか」という視点を提供するものです。
さらに、発酵によって生まれる乳酸菌や酵母は腸内細菌叢のバランスを整えることが期待されており、腸内環境の改善は全身の代謝や免疫機能にも好影響を与えると考えられています。
塩分を気にしすぎることのリスク
極端に塩分を制限しすぎることには、それ自体のリスクがある点も理解しておく必要があります。ナトリウムは身体にとって必須のミネラルであり、神経伝達や筋肉の収縮、体液の浸透圧調節など、多くの生理機能に関わっています。
とりわけ、高齢の方や夏場に多量の発汗をした後などは、塩分と水分のバランスが崩れやすくなります。「塩分は悪」という画一的な情報に引きずられ、必要な塩分まで避けてしまうことは健康的とはいえません。日々の食事の中で適切な塩分量を意識しながら、バランスのよい食生活を心がけることが大切です。
まとめ
味噌汁はがん予防との関連性が研究で示されつつあり、塩分については発酵食品ならではの特性を踏まえた正しい理解が求められます。飲みすぎによる塩分過多には注意が必要ですが、具だくさんにして汁の量や濃さを控えめにし、1日1杯程度を目安に減塩の工夫を取り入れれば、健康的な食生活の一部として活用できると考えます。味噌汁は「がん予防の特効食品」ではなく、減塩を意識した食生活の中で上手に取り入れたい食品と言えるでしょう。気になる症状や持病がある方は、消化器内科や腎臓内科などに相談しながら、自分に合った摂取方法を見つけることをおすすめします。
参考文献
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
食品安全委員会「大豆イソフラボンを含む特定保健用食品の安全性評価の基本的な考え方」
国立がん研究センターがん情報サービス「がんの統計・予防」
農林水産省「大豆及び大豆イソフラボンに関するQ&A」
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