亜急性甲状腺炎は、のどの前方にある甲状腺に炎症が生じる疾患です。女性の発症率が男性の約3〜5倍とされており、特に30〜50代に多くみられます。発症のきっかけにはウイルス感染が関係していると考えられており、風邪をひいた後しばらくして症状が現れるケースが少なくありません。なぜ女性に多いのか、その背景にある免疫とホルモンの関係を整理します。

監修医師:
久高 将太(琉球大学病院内分泌代謝内科)
琉球大学医学部卒業。琉球大学病院内分泌代謝内科所属。市中病院で初期研修を修了後、予防医学と関連の深い内分泌代謝科を専攻し、琉球大学病院で内科専攻医プログラム修了。今後は公衆衛生学も並行して学び、幅広い視野で予防医学を追求する。日本専門医機構認定内科専門医、日本医師会認定産業医。内分泌代謝・糖尿病内科専門医。
亜急性甲状腺炎が女性に多い理由とその背景
亜急性甲状腺炎は、女性に多く発症する疾患として知られています。このセクションでは、その背景にある免疫の仕組みとホルモン環境の関係について解説します。
亜急性甲状腺炎とはどのような病気か
亜急性甲状腺炎とは、甲状腺(のどの前方にある蝶形の臓器)に炎症が生じる疾患です。甲状腺はホルモンを産生・分泌することで、身体のさまざまな代謝機能を調整する役割を持っています。この甲状腺に炎症が起きると、組織が傷ついてホルモンが大量に血液中へ放出される「甲状腺中毒症」と呼ばれる状態になることがあります。
炎症のきっかけとしては、ウイルス感染が関係していると考えられています。上気道炎(いわゆる風邪)などにかかった後、数週間から数ヶ月後に発症するケースが多く報告されています。炎症自体は通常、数週間から数ヶ月で自然に回復することが多い疾患です。ただし、適切に対処しないと症状が長引いたり、日常生活に支障をきたしたりするため、早期の受診と正確な診断が大切です。
「亜急性」という名称は、急性(突然始まる)と慢性(長期にわたる)の中間的な経過をたどることに由来しています。比較的急に症状が現れますが、慢性疾患のように何年も続くわけではなく、適切な治療を行えば多くの方が回復できます。
なぜ女性に多く発症するのか
亜急性甲状腺炎は、男性と比べて女性に多くみられる疾患です。発症する方の比率をみると、女性が男性の約3〜5倍程度とされており、特に30〜50代の女性に多い傾向があります。
亜急性甲状腺炎がなぜ女性に多いのか、その明確な理由は完全には解明されていません。
甲状腺疾患全般にわたって女性の発症率が高いことが知られており、橋本病(慢性甲状腺炎)やバセドウ病などの甲状腺疾患も女性に多い傾向があります。亜急性甲状腺炎は、風邪などのウイルス感染がきっかけで甲状腺に一過性の炎症が起こる病気と考えられています。甲状腺は女性のホルモンバランスと密接な関係にあり、妊娠・出産・更年期などのライフイベントによっても影響を受けやすい臓器といえます。
発症しやすい年齢層と季節性について
亜急性甲状腺炎は、先述のとおり30〜50代の女性に多くみられます。この年代は仕事や育児、家事など生活の負荷が高く、身体的・精神的なストレスがかかりやすい時期でもあります。ただし、発症に年齢制限があるわけではなく、若い方や高齢の方にも起こりえます。
季節的には、夏から秋にかけて発症しやすいとされており、上気道炎(かぜ)が流行する時期と関連する可能性があります。ウイルス感染後に免疫反応が過剰になり、甲状腺に炎症が起きると考えられているためです。
首の前側の痛みや発熱が続くとき、とくに上気道炎にかかった後であれば、亜急性甲状腺炎の可能性を念頭に置いておくことが大切です。早めに内科や内分泌内科・甲状腺外来などを受診し、適切な検査を受けることをおすすめします。
まとめ
亜急性甲状腺炎は、首の痛みや発熱など日常的な症状と区別しにくいことから、見逃されやすい疾患のひとつです。特に女性に多く、適切な診断と薬による治療が回復の鍵を握ります。症状が気になる方は、自己判断せずに早めに医療機関を受診してください。内科や内分泌内科・甲状腺外来への相談が、回復への第一歩につながります。かかりつけ医がいる場合は、まずそちらへ相談するところから始めてみてください。
参考文献
日本甲状腺学会「甲状腺疾患診断ガイドライン2024」
日本内分泌学会「亜急性甲状腺炎」
厚生労働省「重篤副作用疾患別対応マニュアル|甲状腺中毒症」
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