社会現象となった『逃げるは恥だが役に立つ』の漫画家・海野つなみの最新作がついにドラマ化! 初共演にしてW主演を務めるのは、杉咲花さんと多部未華子さん。それだけでも胸が高鳴るのに、今泉力哉監督、そして脚本は今泉かおりさんという気にならないはずがない座組まで揃いました。Prime Originalドラマシリーズ『クロエマ』は、6月12日(金)よりAmazon Prime Videoにて世界独占配信スタートです。
今作の主人公は、恋も仕事も住む場所も全部いっぺんに失った崖っぷちのエマ(杉咲花)と、謎めいた大きな屋敷に住む資産家の占い師クロエ(多部未華子)のふたり。ひょんなことから同居をはじめ、“クロエマ”のふたりで占いの店を開くことになります。
可愛らしいセットに、こだわり抜いた小道具、そして毎話ラストに登場する、うっとりするほど美しいパフェ……、そんな甘い世界の中にちょっとだけビターな現実社会の側面を織り交ぜたこの作品は、1日の終わりにほっと息をついて見るのにぴったり。ぜんぜん仲よくないのにどこか居心地がいいエマとクロエの関係性がじんわり沁みる、その名前のつけようのない距離感はどのように生まれたのか。杉咲さんと多部さんの言葉から、この作品の魅力をのぞいてみてください。
――まずは本作のオファーが来たときの率直な感想と、原作・脚本を読まれたときの第一印象を教えてください。
多部未華子(以下、多部) 原作と脚本は、両方同じタイミングに読んだと思います。原作に忠実で、すごくリスペクトしている脚本だったので、大幅な違いはなくリンクしているなというのが第一印象でした。今泉さんが監督でエマ役が杉咲さんだと伺ったので、今泉さんが作る『クロエマ』の世界に私も参加したくて、すぐに「やりたい」と言いましたね。
杉咲花(以下、杉咲)はじめに座組みのことを聞いたので、今泉監督や撮影監督の岩永洋さん、ヘアメイクの寺沢ルミさんなど、これまで多くの作品を拝見してきていつかご一緒したいと思っていた作り手の方々が集まっていたので、そこに参加できるうれしさが大きかったです。私の場合は原作から先に読んだのですが、登場人物がそれぞれのしがらみの中を緩やかにサバイブしながら、自分を癒やす時間をつくっているところが素敵だなと思いましたし、他者とのつながりを感じられる、ほっこりとあたたかくなる作品だなと思いました。
――順番が逆で、ドラマを拝見してから原作を読んだので、おふたりでしか脳内再生できなかったです!
杉咲 うれしいですね。
多部 ね、うれしい。ありがとうございます。
――ご自身が演じたキャラクターのどんなところに魅力を感じましたか?
多部 クロエは「愛想が悪い」とか「言い方がきつい」と言われるシーンが冒頭に結構あるんですけど、フタを開けてみたらすごく思いやりがある人。ものごとを多方面から俯瞰的に見られて、「世の中はいろんな価値観があるから成り立っている」ということをポツリポツリと言葉にしたりするんです。背景は描かれていないけど、言葉の端々に人間味が溢れていて、初めの印象からのギャップがいい意味ですごくある、魅力的なキャラクターだと思いました。
杉咲 エマは想像の斜め上を行くような思考を持っているところがある人なので、脚本を読んでいてもおかしくて笑ってしまう瞬間がたくさんありました。逆境があってもブツブツ文句を言いながら何とか乗り越えていけそうな、生きていく力みたいなものを感じさせてくれるところが好きです。
――「そんなに仲よくないけど、近くにいる」というのが面白いですよね。客観的に見て、2人の関係性をどのように感じますか?
多部 クロエとエマってお互いを否定するわけでもなく、「私はこう思います」「私はこうだと思うけど」と、お互いの言い分をちゃんと言えて、そこに蔑みがないんですよ。居心地のいい関係だと思いますね。
杉咲 ふたりは本当にそこまで親しくはないんですよね。それでも近くにはいて、意見が分かれたときははっきりと主張をし合って、心に余裕ができたときに相手のことを少し想像してみたり、力になろうとしてみたり。なんというか精神的にはとてもフェアで、そんなところが健やかな関係性だなと思います。
――ちなみに、作中の全キャラクターの中でお気に入りの人物は?
杉咲 私はクロエさんです。
多部 ははは(笑)。
杉咲 「未来はこれからの行動で変わっていく」というセリフがあるのですが、占いを通して何か特別なエネルギーを感じていても、結局は人を信じているということが伝わってくる。そういったクロエさんの人間味というか、最後は信じる力を大切にしているところが素敵だなと思いました。
多部 私は真秀くんが好きです(井之脇海さんが演じる設計事務所の営業担当)。ちょっとデリカシーがないんですけど(笑)、憎めないというか愛される感じというか。あのキャラが結構ツボでした。
――この作品にはあんまり完璧な人がいないですよね(笑)。おふたりは今回が初共演。共演前の印象と、実際に一緒に仕事をしてみてからの変化はありましたか?
多部 映画にドラマ、いろんな作品を拝見していましたし、一つひとつの作品がずっと頭に残っていて。もちろんお芝居が上手いというのはベースにある話で、ただそれだけではなく、杉咲さんという存在感がいつも印象的な作品を作り上げてらっしゃるなって。私はこれまで女性同士でメインキャラクターを演じて密な会話をするという作品があまりなかったのですが、その相手が杉咲さんと聞いたときに、これは絶対に刺激をもらえるし、面白くなると思いました。終わってみても、その気持ちはやっぱり変わらなかったですね。
杉咲 私は昔からドラマっ子だったので、『デカワンコ』や『山田太郎ものがたり』などがずっと大好きで、今回このような形でご一緒できることがすごくうれしかったです。多部さんの佇まいや声、画面の中にいらっしゃるだけで温度がパッと上がって、見ている自分もすごく明るい気持ちをいただけるというか。そんな印象を抱いてました。実際にご一緒してみると、現場でどっしり立たれている姿や、スタッフさんたちと快活に談笑されている姿が印象的で。ご自身のリズムがあるところも、かっこよかったです。
シャツ¥22,000(エンライトニング/リノ)、ジャンプスーツ¥25,300(シティショップ)、その他は私物
――今泉組のご経験がおふたりともあると思いますが、これまでとの違いや、今回ならではの感触はありましたか?
多部 前回ご一緒したときは何年前だったかな?というぐらい、ちょっと記憶が朧げなほど前で。あのときはオールロケでしたが、今回はロケもありつつ、セットで漫画という世界観の中で撮影していたので、全然違うとはいえ、監督の空気感は以前の作品とあまり変わらないかなって思っていて。台本を読んでいるときから、そこを大事にしたいなと感じましたし、漫画の世界を大切にしながらも今泉さんらしい脚本がとても好みでした。言葉にはできないけど、今泉ワールドがとても楽しかったです。大きな刺激というよりは、小さな刺激をたくさんもらった感じがします。
杉咲 長期間ご一緒するのが初めてだったのですが、お芝居への演出はもちろん、画に映るすべての要素に意識を注がれている方で、本当に1ミリ単位のこだわりを持って調整を繰り返しながら撮影していく姿は、すごく新鮮で衝撃を受けました。ちょっと常軌を逸した執念のようなものも感じたりするのですが、それだけ自分が描く作品の世界観を美しいものにしたいというこだわりを感じましたし、全てを背負って現場にいようとされる心意気に感動したんです。オッケーをいただけるまでの長い道のりの全てに価値を感じる、とても素敵な現場でした。
――今泉監督と演じる役柄について事前に何かお話はされましたか?
多部 特にこだわりを事前に説明していただくというより、台本の読み合わせのときにスピード感についていくつかおっしゃっていて。「もうちょっとゆっくりでもいいかも」とか、「セリフとセリフの間があってもいい」という感じで、とにかくその部分を一番言われたことを覚えています。ふたりの掛け合いが多い作品なので、会話のテンポ感にこだわりがあるのかなと感じました。
杉咲 私も同じで、「ゆっくり話してください」という指示が、これまであまり受けたことのない演出だったのでとても印象に残っています。あとは、人の話を聞くシーンで無意識に相槌をしていたら「なくしてください」と言われたこともあって。リアリティだけでは成り立たない要素のある作品だと思うのですが、その塩梅が最初は難しかったです。しかし、エマという人物の大胆な思考の飛躍に、受け手が一緒にジャンプしていけるような絶妙なバランスを、今泉さんが探ってくださっていたのかなと思います。
――社会問題的なテーマも織り込まれているのに、作品全体がサラサラと見られますよね。言葉を選ばずに言うと、説教くささが全くない。
多部 確かに内容はリアリティがあるんですけど、視覚的に目に入るものはやっぱりファンタジーっぽく見えるので、リアリティさが全面に出ないんじゃないかなと思っていて。セリフが現代社会に通じることだったとしても、視覚にファンタジー要素があるから、説教くさくはならないんじゃないかなとは、もともと感じていました。私は自分が思ったままに演じただけで、そこに何かをしようとはあんまり深く考えてなかったかもしれません(笑)。
――さっき「ゆっくり」と指示されたともおっしゃっていましたが、それも関係しているんですかね?
杉咲 それもあるかもしれないです。「ゆっくり喋って」「優しく置いて」「柔らかくページをめくってください」など、本を読むシーンひとつでも、本当に繊細な指示がたくさんありました。そういう演出の積み重ねが、軽やかにドラマを見進めていける要素のひとつなのではないかなと感じました。
―その積み重ねが「今泉監督らしさ」に繋がるんですね。
多部 言葉にするのが難しいのですが、空気感だったり脚本だけではない現場のテンポ感、それこそクロエとエマが中心だけど、他の登場人物のキャスティングにも見受けられる部分だったり、すべてを含めて今泉さんの世界観というか……。
杉咲 今泉監督が時間をかけて物語を作ろうとする姿を見ることで、ここまでこだわっていいんだということをみんなで共有できたというか。そんな風にして自分たちが面白い、美しいと思えるものを研ぎ澄ませていく時間は、本当にいい時間でしたね。
――実はキャスティングの面でひとつ気になっていたことがあるんです。カフェの常連のおじいさんたちって、双子の設定ですか?
多部 違うよね?
杉咲 違います。
――そうなんですね! 衣装も含めてすごくリンクされていたので双子かと(笑)。
多部 似てないよね? 今、聞いてそういう見方もあるんだって思っちゃったくらい(笑)。けど、それも計算なのかもしれませんね。
ドレス¥94,000(トーガ プルラ)、ベルト¥43,000(トーガ トゥ/共にTOGA 青山店)、イヤリング¥10,780(HUI)、左手のリング¥27,500(KEIR.)、右手のリング¥23,100(hidaka kanawaru/全てロードス)、右手につけたブレスレット¥20,900(ディーゼル/ディーゼル ジャパン)、左手につけたブレスレット¥890,000(2A Diamonds)
――撮影中に大変だったことや、予想外に苦労されたことは?
多部 私は占いのシーンですね。こじんまりとした空間で4日間ずっと占いのシーンを撮っていて。明日は誰々の占いで、何月のカードがこれで、めくり方と投げ方……と、ずっとミッションがあるような感じだったので、占いシーンを撮った日は結構ぐったりしていました(笑)。スローで撮っていたので、カードの散らばり方まで細かくて。助監督さんから「スナップを効かせてみては」とアドバイスをもらったり試行錯誤しながら、数打ちゃ当たれ方式でやっていましたね。
杉咲 私はエマがすべてを失ってクロエさんと出会って、占いを始めた経緯を臼田あさ美さん演じる小長谷由希子に話すシーンが過酷でした。揚げピロシキパンを食べながらしゃべるという設定だったのですが、長台詞プラス揚げ物を何テイクも食べるというのはこんなに大変なのかと(笑)。
――本作は出てくる食べ物がどれもすごくおいしそうでした。なんと言っても毎話ラストに出てくるパフェは、見た目も美しくて!
多部 パフェは本当においしかったね。
杉咲 おいしかったです(しみじみ)。
――パフェのシーンは、その日のおやつみたいな?
杉咲 そんな気持ちでした(笑)。ご褒美のような。ただ夏に撮影していたので、すぐに溶けてしまうんですよね。
多部 あと、かりんとうの太さとかラスクの穴の開き方とかも意外と大変だったよね。シーンの繋がりがあるのでその微差が大事で、そこにも今泉さんはこだわっていました。けど全部美味しかったですし、本当に芸術品でしたね。
杉咲 撮影が終わった後、パフェ監修の馬場さん余った食材で小さなパフェをたくさん作ってくださって、それをスタッフさん達みんなで食べたりして。そんな時間も幸せでした。
――ちなみにおふたりは占いに行かれますか? 何か悩んだとき、詰んだときの解決法は?
多部 私は友人に話して解決します。解決というより話を聞いてもらえればいいかな。悩みがあるから占いに行こう、というのはあまりないかもしれないです。人にお勧めされて行くことはあるんですけど。何かに悩んだとき、話を聞いてもらう相手が3人くらいるので、それぞれに聞いてもらった中から、解決策を探っている感じですかね。でもきっと、話している時点で自分の中では決まっている気もします。
杉咲 私も占いはほとんど縁がなかったですね。多部さんと同じように、人に話すかもしれません。解決を求めるというよりは話を聞いてもらいたい感覚というか。多分、直感では自分の中に答えがあるのだと思います。
――そもそもエマほど詰んだ状態に陥ることってなかなかないですもんね(笑)。
多部 そうですね、経験ないかもしれないです。
――最後にotona MUSEの読者に向けて、本作を通して受け取ってほしいことや、注目してほしいポイントを教えてください。
多部 淡々としたストーリーで、刺激的なシーンが出てくるわけではなのですが、仕事帰りの疲れた夜や、育児に疲れた夜に『クロエマ』を見て、ほっこりしていただけたらいいなと思います。何か答えが出るような作品ではないけれど、クロエとエマの会話、とくにラストのパフェを食べながらの会話を聞いて、ゆっくり頭を休めて見てほしいです。
杉咲 相容れない価値観を持つ他者とでも、隣にいることはできるんじゃないか、と感じられるような柔らかいつながりが描かれた作品になっているのではないかと思います。穏やかな気持ちで楽しんでいただけたらうれしいです。
Prime Originalドラマシリーズ『クロエマ』 6月12日(金)より世界独占配信スタート 全5話
Story_一晩だけの約束でクロエの屋敷の離れに泊まったエマだったが、夜中に母屋が火事に。火事に気づいたお礼として、そのまま離れに居候させてもらうことになる。やがてクロエの趣味であるクロニクルカードを使った占いの店「Sort(ソール)」を開店。悩みや不安を抱えた相談者が持ち込む言葉の奥に、ふたりはさまざまな謎を見つけていく。
出演:杉咲花 多部未華子 岩瀬洋志/井之脇海 河井青葉 野添義弘 諏訪太朗/光石研
原作:海野つなみ『クロエマ』(講談社「Kiss」連載)
監督:今泉力哉 脚本:今泉かおり
制作プロダクション:WOWOW・コギトワークス
製作著作:WOWOW
Interview & Text_NORIKO YOSHII
Photograph_KAZUYUKI EBISAWA[MAKIURA OFFICE]
Stying_SAKI NAKAZAWA(杉咲さん)、OKAMURA HARUKI(多部さん)
Hair & Make-up_AKEMI NAKANO(杉咲さん)、ERI AKAMATSU(ESPER/多部さん)

