
AIを相談相手として活用するリスクとは?(画像はイメージ)
【要注意】これが“うつ病”の可能性がある「症状」です(画像14枚)
近年、ChatGPTやGeminiなどのAIサービスが相次いで登場し、注目されています。企業によっては業務に活用する動きもあり、もはやAIは生活にとって欠かせない存在になりつつあります。
ところで友人や同僚ではなく、AIを相談相手として活用する人が増えているようですが、この場合、どのようなリスクがあるのでしょうか。AIの上手な活用法について、企業向けのストレスチェックの代行業務やカウンセリングを行うTAYORI(たより)代表で看護師、保健師の資格を持つ、奥野実羽心さんに聞きました。
自身の認知のゆがみをAIが強化するリスクも
Q.近年、ChatGPTやGeminiなどのAIサービスを相談相手にする人が増えています。AIを相談相手にすることで心理的に、どのようなメリットが考えられますか。
奥野さん「AIサービスは、いつ、どこでも答えてくれて、寄り添う言葉を返してくれる便利なサービスですね。何回聞いても怒らず、友人に聞きにくいことも聞けるため、私がカウンセリングを行っている時も、相談者はすでにAIに相談済みだというケースが多いです。AIに相談する心理的なメリットとして、主に次の3つが挙げられます」
(1)絶対に否定されない安全基地になる
普段弱音を吐ける場がない人ほど、「AIには何を言っても大丈夫」という安心感があり、感情を素直に出すことができます。
(2)メタ認知の強化
AIに向けた言葉が文字化されることや、AIからのフィードバックにより、自分の感情を客観的に捉えることができます。複雑な物事だったとしても、「感情」「事実」「推測」を区別してくれるため、情報を取捨選択するのが苦手な人にとっても頭の整理になります。
(3)感情の言語化によるストレスの減少
不安や怒りといった感情を言葉にすることで、脳の危険反応を出す扁桃(へんとう)体が落ち着き、思考・整理を行う前頭前野が働きやすくなることが知られています。友人に相談するなどしても同じ現象になりますが、AIだといつでも相談できるということで、この効果を得られやすいです。
Q.もしAIに依存した場合、どのようなデメリットが想定されますか。うつ病などの精神疾患にかかる可能性はあるのでしょうか。
奥野さん「AIとの会話の目的を感情的なサポートに置いた場合、過度に依存してしまうと、現実の人間関係の希薄化につながり、複雑な人間関係への耐性を低下させてしまうという研究結果が出ています。特に、Z世代や、孤独感を抱えている人々が影響を受けやすく、社会活動からのひきこもりや、対人スキルの退行、孤独感の悪化が見られたそうです。
以前、私は、周囲の人との関係に問題が生じて困っているある相談者のカウンセリングを担当していました。その人は1人で考えが先走ってしまう傾向にあり、話を聞くと日常的にAIと会話していたことが分かりました。
自分が都合よく解釈した情報や間違って解釈した情報をAIに伝えればAIの回答もその認識に沿ったものになりがちです。例えば、自分が周囲の人に嫌われていると思い込み、そのことをAIに相談したとします。この場合、AIがその思い込みをもとに回答するため、現実の周囲の状況とAIが出した回答との間で大きなギャップが生まれてしまいます。
その結果、周囲の人との溝がより深まってしまう可能性があるのです。うつや精神疾患にかかるリスクもゼロではありません」
Q.AIの多用によるトラブルや精神疾患を防ぐには、どのような取り組みが必要なのでしょうか。
奥野さん「AIに依存したり、精神疾患にまで発展してしまったりする事態を予防するために大切なのは、AIとの関わり方に『目的意識』を持つことだと思います。
まず個人レベルでできることとして、AIへの相談を『感情の整理や思考の言語化』を助けるツールとして考えるとよいと思います。例えば、AIに出してもらった回答をそのまま信じるのではなく、『あくまで自分の考えをまとめるためにAIを使う』と割り切り、最終的に自分が考えて決めるという姿勢を持つことで、依存のリスクを下げることができます。
また、AIへの相談内容が『現実の人間関係への不満や回避』に偏り始めたら、そうなった時に『依存し始めているかも』と、自分でサインに気付けるように知識を持っておくことも大切です。AIは否定しないからこそ、現実から切り離された空間になりやすい側面があります。
職場や教育現場でも、AIを活用する動きがありますが、その際はAIリテラシー教育の充実が求められます。特にZ世代など、デジタルネイティブとして育った世代に向けては、『AIができること・できないこと』を正しく理解し、現実の人間関係との使い分けができるよう、継続的な啓発が必要です。
最終的には、AIは『自分の内側と対話するための補助』であり、誰かとつながるための手段にはなり得ないという認識が、社会全体に広まっていくことが大切なのではないでしょうか」
【参考文献】
MIT Media Lab & OpenAI(2025). AIチャットボット利用に関するランダム化比較試験
