※本作には性犯罪を想起させる表現があります。不快感や不安を感じる方は閲覧にご注意ください

スマホの灯りを頼りにトンネルの中を歩く女性。しばらく歩くと後ろから「たっ、たっ、たっ、たっ…」と足音が近付いてきた。振り返りスマホの灯りで照らすと、そこにいたのは…!!懸命に逃げ出す女性。女性は無事に逃げ切れるのか…?

本作『山にいるモノ』を読んだ読者からは「めっちゃ怖くて好き」「絶対同じ目に遭いたくないけど好きです!」「このページ数とは思えない満足感」という好意的な感想が続々と届いた。なかには「怪異の描き方がすごく不気味な感じがしてすごいです!尊敬…!!」という声も。ひとコマひとコマから目が離せない展開に引き込まれた読者が多かった。

本作を描いたのはホラー漫画を得意とする清澄 巴(@kiyosumi6R6152)さんである。「コミティアに参加してみたいと思い立ち、得意分野のホラーで頭の中にあった話をいくつかピックアップして、しっかりと描き出してみました」といい、本作はその中の1作品である。清澄 巴さんに詳しく話を聞いてみた。

――ホラーを得意とする清澄 巴さんですが、本作に込めた想いについてお聞かせください。
「ホラー」というジャンルは基本的に理不尽であったり、あと味が悪いものになりがちで、私自身も見る・読む側としてはその不条理を楽しむことができるのですが、いざ自分が描こうとしたとき、ホラーであっても「ひどいことをされたのに、さらにひどい目に遭うだけで終わる」「頑張ったけどだめだった・無駄だった」という結末を描くことはどうしてもできなかったんです。
――なるほど!読者から「悪い人が痛い目を見る展開、すごく好き」「やっぱりホラーは自業自得な展開がスッキリするな」「怖いのにスッキリ」という声が届いていたのはそういうことなんですね!
落としどころとして「理不尽な目に遭うけど、なんとか無事に帰ってこられた」「怪異の餌食になるのは絶対に悪意を持って行動したほうにする」という構成にしてみたんです。そうすることで、ホラーとしての恐怖は味わいつつ、読み終わったときに、ただただ嫌な気持ちになって終わるようなことがないようにできるのでは?と考えました。なので、読者のみなさまからそういった声をいただけたのは狙い通りで、とてもうれしかったです。
――そういったこだわりによって、「ただ怖いだけ」ではないホラーに仕上がっているんですね。
数々のホラー作品を読んだり、描いたりしていると、「何をやっても太刀打ちできない怪異」という存在ももちろん怖いのですが、ある程度ルールや法則があると、緊張感が増すと個人的に思っています。例えばよくホラー作品で使われる「返事をしてはいけない」「〇時以降に入ってはいけない」などもそうだと思います。
――確かにそういう縛りがあると、登場人物に対して「そのルール、破らないで」とハラハラしたり、「その法則に気づいて!」とドキドキしながら読み進めますね。
「それさえクリアできれば助かるかもしれない」くらいの塩梅があったほうが、スリルが増すと思うんです。本作『山にいるモノ』の場合は「音をたててはいけない」「車やバイクに追いつけるほど怪異の足は速くない」「怪異は山からは出られない」といったものにしました。読んでる人が思わず自分も息を止めてしまうほどの緊張感を出せていたらいいなと思います。
――コメント欄には考察も飛び交っていましたね。清澄 巴さんが考えるホラーの醍醐味とは?
漠然とした表現になってしまうのですが、「暗闇の中を想像する自由がある」というところがホラーの醍醐味のひとつだと思います。はっきりしないところに、人それぞれ自分が怖いと思うものを見出してしまう…でももしかしたらそこには何もないのかもしれない。だけど、それらをライトで照らして明らかにしなくてもいい、と私は思っています。
――深い言葉ですね。読者一人ひとりが想像した先に、それぞれ別の恐怖が存在するかもしれないってことですね。
はい。本当にありがたいことに、コメントで「この先、どうなったんだろう?」「(怪異は)こういう存在なのかな?」といった考察や質問をたくさんいただけました。実はそのひとつひとつに「これはこういうことです」と答えられるだけの自分の中で考えてることはあり、本音をいえばそれを言いたくてムズムズしているのですが、でもやっぱりここですべてを明らかにするより、読んでくださった方の、読み終わったときの余韻や余白をそのままにしたいという気持ちが強くあります。
作品に触れたあと「もしかして…」「自分だったら…」と一人ひとりが自分の中で想像していける余白、そういった余韻を残せたのなら描いてよかったと思いました。

清澄 巴さんは「ホラー作品は日常の中でヒントを得やすく、自分の中では描きやすいジャンルなんです」と教えてくれた。日常で見つけたヒントだからこそ、次の瞬間に自分にも起こりうる可能性を秘めていて、恐怖がジワジワと迫ってくるのだろう。さまざまな考察が寄せられた本作。コンビニに逃げこんで助かったのは誰だったのか?女性は助かったのか?そして男たちはどうなったのか…本作を読み、結末に残された余白と余韻をあなたはどう受け取るだろうか?
取材協力:清澄 巴(@kiyosumi6R6152)
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