認知症の予防や進行抑制に効果的な脳トレ
研究で脳によい影響をもたらすことが確認されている脳トレの方法を解説します。日常生活に取り入れやすいものから始めてみることをおすすめします。
ドリルやパズルゲーム
論理的思考を必要とする課題、例えばクロスワードパズル、数独などは、脳によいエクササイズです。50代以上の約19,000人を対象に調査した研究では、数字パズルを頻繁に解く方は記憶力や注意力、推理力のテストで優秀な成績を示すことがわかりました。
また、記憶力や一時的に情報を保持する力を鍛えるには、トランプの神経衰弱や買い物リストを暗記するといった記憶トレーニングがよい影響をもたらす可能性があります。実際に、n-back課題という記憶課題を用いた研究において、50〜65歳の57名が週4回、8週間課題を続けたところ、記憶力テストの成績が向上したという結果が示されました。
最近はスマートフォン用の脳トレアプリが数多く開発されています。計算、図形パズル、言葉遊びなど幅広いジャンルの問題を扱うアプリがあり、通勤や移動の合間といった短時間でも効率的に脳トレを行えます。オンラインで1日たった3分の課題を6週間続けた結果、注意力・記憶力・思考力が向上したという6,544名が参加した研究があり、スマートフォンで脳トレを毎日継続することで、認知機能によい影響をもたらす可能性があるかもしれません。
対戦形式の遊び
囲碁、将棋、チェス、トランプ、麻雀といった、対戦形式のテーブルゲームは頭をよく使います。相手の次の手を予想しながら自分の戦略を考えるのが脳によい刺激になります。
このようなテーブルゲームをよく行う方は、70代になっても全般的な認知機能の低下が少なく、特に記憶力の低下が抑制されるという傾向がみられました。
有酸素運動
身体を動かすことは心身の健康を改善するだけではなく、脳の健康にもつながります。実際に、もの忘れが気になる中高年者2,565名が太極拳、ダンス、気功などの運動を週3〜6回、1回30〜90分、8〜36週間続けたところ、認知機能テストの成績が改善したという結果が出ており、認知機能や抑うつ状態、バランス機能の向上に加えて、アミロイドβ蛋白の質の上昇やタウ蛋白蓄積の程度の改善も期待できます。
参照:
『The relationship between the frequency of number-puzzle use and baseline cognitive function in a large online sample of adults aged 50 and over』(PubMed)
『Neural and Behavioral Effects of an Adaptive Online Verbal Working Memory Training in Healthy Middle-Aged Adults』(PubMed)
『Impact of Short-Term Computerized Cognitive Training on Cognition in Older Adults With and Without Genetic Risk of Alzheimer’s Disease: Outcomes From the START Randomized Controlled Trial』(PubMed)
『Playing Analog Games Is Associated With Reduced Declines in Cognitive Function: A 68-Year Longitudinal Cohort Study』(PubMed)
『Effects of mind-body exercise on cognitive performance in middle-aged and older adults with mild cognitive impairment: A meta-analysis study』(PubMed)
脳トレを日常生活に取り入れる工夫
「脳トレがよいのはわかったけれど、仕事や家事で忙しいなか、どう続ければいいの?」と多くの方が疑問を抱かれるのではないでしょうか。
実際の研究データをみる限り、脳トレは毎日長時間行う必要はありません。脳トレの頻度については、週に複数回の頻度で定期的に実施することが効果的とされています。
複数の研究をまとめて分析した結果では、週3回以上・8週間以上の脳トレを行ったグループで、脳機能の向上が明らかに大きかったことが示されています。1回あたりの脳トレ時間については明確な決まりはありませんが、多くの研究では1回につき10〜60分程度で行われています。
具体的には1日あたり30分前後の課題を行うケースが一般的で、これを数ヵ月続けることで効果が積み重なると考えられますが、内容によっては1日わずか3分程度のごく短い時間でも毎日続けることによってよい効果が得られることが示されています。
忙しい日常のなかでは、完璧を求めすぎないことが継続の秘訣です。例えば、以下のように生活のリズムに合わせて取り組んでみてはいかがでしょうか。
通勤電車の中でスマートフォンの脳トレアプリを3分間
夕食後に家族と15分程度のトランプやオセロ
週末に30分程度のクロスワードパズル
また、もの忘れが気になり始めた方は、買い物リストを暗記してから出かける、今日あった出来事を夜に振り返るといった記憶を意識的に使う活動を日常に組み込むことから始めてみてください。ご家族の変化が気になる方は、一緒に楽しめる活動を通じてコミュニケーションの時間を作ることも大切です。ご家族やご友人と一緒に取り組むと、お互いに励まし合えるだけでなく、楽しさも倍増するでしょう。
参照:
『Cognitive Training During MidlifeA Systematic Review and Meta-Analysis』(PubMed)
『The effect of cognitive-based training for the healthy older people: A meta-analysis of randomized controlled trials』( PubMed)
『Ten-year effects of the advanced cognitive training for independent and vital elderly cognitive training trial on cognition and everyday functioning in older adults』(PubMed)
『Computerized cognitive training in cognitively healthy older adults: a systematic review and meta-analysis of effect modifiers』(PubMed)
『Impact of Short-Term Computerized Cognitive Training on Cognition in Older Adults With and Without Genetic Risk of Alzheimer’s Disease: Outcomes From the START Randomized Controlled Trial』(PubMed)

