突然、顔の片側が動かしにくくなる「顔面神経麻痺」。まばたきができない、口元がゆがむなどの症状が表れて、日常生活に大きな影響を与えることもあります。そこで、顔面神経麻痺の原因や症状、後遺症の可能性、そして早期治療の重要性について、「中尾形成外科」の中尾先生に解説していただきました。

監修医師:
中尾 崇(中尾形成外科)
大阪医科薬科大学医学部卒業。その後、日本大学医学部附属板橋病院、鹿児島市立病院、東京女子医科大学附属足立医療センターなどで形成外科医として経験を積む。2024年、東京都港区に「中尾形成外科」を開院。日本形成外科学会専門医、日本形成外科学会レーザー分野指導医/再建・マイクロサージャリー分野指導医。日本美容外科学会(JSAPS/JSAS)、日本頭蓋顎顔面外科学会、日本鼻科学会の各会員。
顔面神経麻痺とは?
編集部
まず、顔面神経麻痺について教えてください。
中尾先生
顔面神経麻痺とは、顔の筋肉を動かす神経(顔面神経)が障害されることで、表情がうまく作れなくなる状態です。「片側のまぶたが閉じられない」「口角が下がる」「笑えない」などの症状が典型的です。また、見た目の変化だけでなく、「食べ物や飲み物がこぼれる」「目が乾燥する」など、生活に支障が出ることもあります。
編集部
顔の片側だけに起こるのですか?
中尾先生
はい、顔の片側に生じます。両側に症状が出ることは稀で、多くの場合は全身性の疾患が背景にあります。左右どちらかの顔の筋肉が思うように動かなくなることで、笑顔や会話に違和感が出て、他人に気づかれるケースも多くみられます。
編集部
顔面神経麻痺には種類があるのですか?
中尾先生
大きく「末梢性」と「中枢性」に分けられます。末梢性は神経自体の障害で、代表的なのが「ベル麻痺」や「ラムゼイ・ハント症候群」です。一方、中枢性は脳出血や脳腫瘍、脳梗塞によって脳の神経中枢が障害されるタイプです。原因で治療法も大きく異なるため、診断が重要です。
編集部
早期に医療機関を受診した方がいいのでしょうか?
中尾先生
顔面神経麻痺の背景にはウイルス感染や脳疾患など、放置できない病気が隠れている可能性もあります。発症してから治療開始までの時間が予後に直結するため、「顔が動かしにくい」と感じたら、すぐに耳鼻咽喉科や脳神経内科、脳神経外科を受診しましょう。
顔面神経麻痺の原因・症状
編集部
顔面神経麻痺の原因について教えてください。
中尾先生
代表的なのはベル麻痺で、顔面神経がヘルペスウイルスに感染し、それがストレスや疲労で活性することが原因と考えられます。そのほかに、ラムゼイ・ハント症候群もあります。ラムゼイ・ハント症候群は水痘・帯状疱疹ウイルスの再活性で起こり、耳の痛みや水ぶくれを伴うのが特徴です。また、外傷、脳梗塞、脳腫瘍などが原因になることもあります。
編集部
後遺症はありますか?
中尾先生
発症から治療までが遅れると、回復が不十分で後遺症が残ることもあります。意識せずに顔がピクピクする「不随意運動」、口を動かすと目も閉じてしまう「共同運動」などはその典型です。適切な治療を早期におこなえば、多くは数カ月で改善しますが、完全に回復しない例もあります。
編集部
顔面神経麻痺が起こりやすい人の特徴はありますか?
中尾先生
誰にでも起こり得ますが、特に疲労やストレスで免疫が落ちていると発症しやすいとされています。また、糖尿病や高血圧などの生活習慣病を持つ人も発症リスクが高いとされていますし、加齢に伴ってリスクが高まる人もいます。

