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2026年6月11日  現実的な日|辛酸なめ子

2026年6月11日  現実的な日|辛酸なめ子

日本文藝家協会の定時総会が行われたので、会員の1人として参加して参りました。すると壇上の理事の方々の中には見知ったお顔が何人も……。

5月の紀伊國屋ホールでの「文士劇 風と共に去りぬ」でご一緒させていただいた方が何人もいらっしゃいました。理事長の林真理子さんに始まり、権利関係について報告される、レット・バトラーBの三田さん、スカーレットBの綿矢さん、メラニーの山内さん、など……。劇場や稽古場で熱演していた姿とは全く違う、社会的なペルソナというか、理事として真面目な表情で座っていらっしゃいました。

 

「支出は○○万円で予算を○○万円超過しました」と、淡々と会計報告しているのはブラウン軍曹役の村上さん。レット・バトラーとポーカーをやっていた姿が浮かびます。「選挙管理委員から報告を申し上げます」とカッチリしたスーツで話しているのは、スカーレットの妹スエレン役で「日焼けしたらフランクにフラレちゃう!」とか言っていた河原さん。フランク役の佐川さんも何か報告をされていました。そしてアシュリ役の阿部さんも議長として粛々と会を進行していました。舞台でメラニーが亡くなった時慟哭した姿がよぎります。結局あれは夢だったのでしょうか。舞台のテンションや内容とは真逆の理事会が目の前で展開していてギャップに混乱しました。

そのあとは同じ東京會舘で、創立百周年記念祝賀会が行われました。文化庁長官が出席され「カルチャービジネストランスフォーメーション」などについて語られました。今回は無料だったからか、料理に集中するあまり、列に並びながらお皿に取ったビュッフェの料理をさっそく食べているおじさんとかいて、さすがにそれは……と思いました。また「今すごいって芸術家はいないですね」と上から目線で語る男性など。

でもそんな人のことをあれこれ言っている場合ではなく、大きなスクリーンに文士劇のダイジェスト映像が投影され、自分が出てくると恥ずかしくて直視できませんでした。数十回稽古に通い、私としては感情を込めて演技しているつもりだったのですが……。動画を見ると感情が入っていない、ただ普通にしゃべっているように見えました。

とくに、スカーレットCがレット・バトラーに謝金を申し込みに行ったら断られて「なんて卑劣なの! 貸す気も無いくせに面白がって喋らせたのね! 縛り首が待ち遠しい。絞首台の前に陣取って、あなたの惨めな最後を見届けてやるわ!」と激怒するシーン(まだ覚えていたので脚本を確認せずに書けました)。全然怒りが伝わってこなかったです。常々、怒ったり人に怒鳴ることがなく、肉を食べなくなってからますます怒りが湧いて来なくなったのですが、そのせいもあって怒りの演技ができていなかったです。芸能人が焼肉をよく食べるのは、演技で喜怒哀楽を激しくする必要性があるからかもしれないと思いました。前日だけでも肉を少しくらい食べればよかったです。

大画面で自分の演技を見てしまい落ち込みかけましたが、来てくださった新聞社の方が「期待値がかなり低かったので楽しめた」と好意的な感想を言ってくださって、ちょっと安心しました。

総会に出席したことと、このパーティで映像を見たことで、楽しかった思い出から我に返って現実に戻りました。

レット・バトラーに借金を断られて怒っている演技のはずが……。もう一回怒りの演技を研究して出直したいです。

 

配信元: 幻冬舎plus

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