夜の森で出会った“とんでもない昆虫”を9カ月間大切に育てた結果がYouTubeで話題です。投稿は記事執筆時点で21万5000回以上再生され、2900件を超える高評価を獲得しています。
動画を投稿したのは、YouTubeチャンネル「むし岡だいき」。昆虫が嫌いな人や興味がない人にこそ興味を持ってほしいという思いから、昆虫採集や飼育を楽しむ様子を投稿しています。以前には水草びっしりの水槽に外来生物のアメリカザリガニを入れてみた結果や、1年かけて卵から育てた海外産クワガタを掘り出す様子が注目を集めました。
今回話題を呼んだのは、森で出会った巨大なイモムシを9カ月育てた結果です。日ごろから昆虫の魅力を積極的に発信しているむし岡さんですが、実はイモムシはあまり得意ではないのだとか。しかし2025年の秋に夜の森を歩いていたところ、とんでもない昆虫に出会ってしまったようで……?
その日、元気よく歌いながら夜の森を歩いていたむし岡さん。ふと、目の前の木に巨大なイモムシがいることに気付きます。目の前にいるイモムシは頭が茶色いところを見ると、どうやら「オオミズアオ」の幼虫のようです。
むし岡さんはオオミズアオの幼虫を飼育し、羽化させようと2回挑戦したことがあるけれど、残念ながら成功したことがないのだとか。また、2025年はほとんどイモムシ動画を投稿できていなかったことから、目の前にいるイモムシを連れて帰るべきか悩み始めます。
それからイモムシがいる木をよく見ると、枝だらけでほとんど葉っぱが付いていないことに気付きます。「幼虫1匹でこれほど葉っぱを食べるだろうか?」 と考えていると、同じ木にはもう1匹イモムシがいるのを発見! 葉っぱがなくて困っている2匹のイモムシを連れて帰宅したのでした。
むし岡さんによると、オオミズアオはヤママユガ科に分類される水色の大きなガとのこと。その幼虫は「ヤママユ」というガの幼虫とそっくりだけれど、オオミズアオの幼虫は顔が茶色で、ヤママユの幼虫は顔が緑色であるところから見分けられるそうです。
また、幼虫の体には毛が生えていますが毒はなく、触れてもほぼ毛の感覚がありませんでした。そんなオオミズアオは大きなガなので、幼虫も最後はとても大きくなります。そのため連れ帰ってきた幼虫は、これから長さ太さともに1.6~1.7倍になる可能性があるそうです。
なお前述の通り、むし岡さんはこれまでオオミズアオの羽化に2回挑戦して2回とも上手くいかず、1回は幼虫の中から寄生虫が出てきて、その寄生虫の中にも寄生虫がいたという二次寄生になってしまったのだとか。もう1回は寄生虫こそ出てこなかったけれど、次の年になってもサナギが成虫にならなかったとのことですが、3度目の挑戦となる今回は無事に羽化させることができるのでしょうか。
ここから飼育環境を整えていきますが、持ち帰ってきたエサの葉っぱの元気がなくなっていたため一旦水に挿し、新しい葉っぱを調達しに行くことに。水に差して飼育ケースに入れた枝にイモムシを移動させようと苦戦する様子を見ていると、本当にイモムシが苦手なことが伝わってきますね。
なおオオミズアオは幅広い植物を食べる広食であり、バラ科、ブナ科、カバノキ科、ミズキ科などあらゆる植物の葉っぱを食べてくれます。しかし幼虫から育てた成虫を野外へ放す場合については、幼虫を採取した地域にある植物を与えるようにしてくださいね。
飼育開始から2日後。入れておいた葉っぱがすっからかんになっていたため、すぐに補充すると脱皮殻を発見。チョウやガもバッタやカマキリと同じように自分で脱皮するので、小さい頃から育てると脱皮殻を観察することもできるのですね。
次の日にはまた葉っぱがすっからかんになっていて、幼虫の食欲がかなり旺盛なことがうかがえます。あっという間になくなる葉っぱをひたすら交換していくと、幼虫の体がどんどん大きくなり、頭の先端にあるトゲが硬くなってきました。幼虫は頭を振り回して威嚇するので、このトゲは武器として使っているのかもしれません。
その後2日ほど家を空ける用事があるため、葉っぱを大量に入れておくことに。すると1匹の幼虫がサナギになりそうな予兆を見せていたため、苦手な気持ちと戦いつつ頑張ってイモムシを手に乗せて、幼虫最後の時間を惜しんだむし岡さんなのでした。
帰宅すると入れておいた葉っぱはすっからかんで、1匹は体がすっかり大きくなり、もう1匹はケースの隅でサナギになる準備をしていました。自然界では木の上でサナギになることが多そうですが、今回はケースの中の葉っぱがなくなってしまったため、下の枯れ葉を集めて繭を作ったようです。
なおガの仲間はチョウの仲間と同じく、幼虫と成虫で姿が完全に変わる「完全変態」の昆虫です。幼虫の間にたくさんエサを食べて葉っぱなどで繭を作り、繭の中でサナギへと姿を変え、その後羽化して成虫となります。
数日後、幼虫は2匹とも無事にサナギになっていました。1匹は枯れ葉を集めて繭になりましたが、もう1匹はサナギになる準備を始めた後にケースを閉め忘れてしまったため外に出てしまい、近くにあったわら半紙の中でサナギになっていました。
自然界におけるオオミズアオは寒くて厳しい冬を繭のなかで越え、翌年の春に羽化します。しかしむし岡さんの飼育部屋は冬場でも20度以上で温度管理をしているため、この環境の中にいると真冬に羽化してしまう可能性があります。
また中途半端に寒い場所では冬を感じられず、春になってもうまく羽化してこないことも考えられます。そこでタッパーにティッシュを敷き、軽く水で湿らせてから繭を入れ、冷蔵庫の中に入れて春まで管理することにしたのでした。
そして季節が変わり、2026年の4月。冷蔵庫からサナギを取り出し、羽化させるための準備を整えていきます。ケースにキッチンペーパーを貼り付けて羽化する際の足場を作り、土を敷い水で湿らせ、その上にサナギをセット。野外と同じ温度にしてサナギが生きていれば、数週間以内に羽化してくれるはずです。
そして迎えた4月中旬、ケースの中には1匹のオオミズアオの姿がありました。少し小さめではありますが、その色合いはなんとも美しく、もふもふした体はとってもかわいいです。オオミズアオの成虫は後翅(こうし/2対の羽のうち後ろ側にある1対の羽)の尾状突起が長いとオス、短いとメスだと判断できるので、この個体はメスであることが分かります。なお残念ながらもう1匹のサナギは成虫になることなく、そのまま死んでしまいました。
オオミズアオの成虫は捕獲した場所に戻しに行きますが、明るい時間に戻すと鳥などに食べられてしまう可能性があります。そのためオオミズアオが活動する、夕暮れどきに戻しに行くそうですよ。
動画には「無事に羽化できたんですね、おめでとうございます!」「完全変態は生命の神秘ですね」「ちょうど今息子とオオミズアオの幼虫育ててるので、勉強になりました!」「苦手なのにしっかり大事にして丁寧にお世話するのすごい」「この世でイモイモが1番苦手で、見るだけで発狂する私ですが、むし岡さんが苦手ながらも甲斐甲斐しくお世話する姿に励まされてます。ギャーギャー叫びながら見させてもらってます」「寄生虫に寄生されず成虫になりましたね! 感動するぅぅ」などの声が寄せられました。
むし岡さんはYouTubeチャンネル「むし岡だいき」の他にも、X(Twitter/@mushioka_daiki)やInstagram(@mushioka_daiki)などで情報を発信中。昆虫の採取、飼育に挑戦する様子などを見ることができます。また、世界で発見・撮影した強烈なインパクトの昆虫を100種以上紹介した著書『むし岡だいきの「世界の昆虫」おった!図鑑』(光文社)が販売中です。
動画提供:YouTubeチャンネル「むし岡だいき」

