「不倫相手とは散々楽しんできたのに、介護が必要になった途端、妻にお願い——」。
そんな知人夫婦のエピソードを紹介した投稿がXで注目を集めています。
投稿によると、夫は長年にわたって女遊びを繰り返し、家庭を顧みない生活を送っていたといいます。妻は子どもたちを育てるために、長年耐えてきたそうです。
しかし、子どもたちが成長した頃、夫は大病で倒れ、後遺症が残ったとのことです。夫は当たり前のように妻に介護を求めたものの、妻は「不倫相手にお願いしたら?」と言い放ち、離婚届を渡したといいます。
SNSでは、妻に共感する声が上がる一方、「同じように妻に捨てられ、施設に入れられた男性を知っている。最後は愛人に逃げられていた」といった声も寄せられていました。
長年不倫を繰り返していた配偶者が、要介護状態になった場合、もう一方の配偶者には介護する法的義務があるのでしょうか。男女トラブルにくわしい澤藤亮介弁護士に聞きました。
●介護拒否したら違法になる?
──今回のようなケースで、配偶者には法的義務はありますか。
長年不倫を繰り返し家庭を顧みなかった配偶者であっても、離婚が成立していない以上、夫婦には民法上の協力・扶助義務があります(752条)。形式的には、一定の義務があることを考えざるを得ないと言えます。
ただし、この扶助義務とは、一般的には経済的な支援を意味するものであり、配偶者が身体介護まで担うことを法的に強制されるものではないと考えられます。
たとえば、介護関連施設やヘルパーの手配をしたり、その費用を負担したりすることで(実際には家計からの持ち出しになるかと思われますが)、扶助義務を果たしていると考えられます。
そのため、自ら介護をしなかったことだけを理由に違法とされ、慰謝料などの法的責任を負う可能性はかなり低いと思われます。
なお、離婚が成立するまでの間は、双方の収入状況によっては、生活費(婚姻費用)の分担が問題となる場合もあります。この点には別途考慮が必要です。
●介護が必要になったことは離婚に影響する?
──今回のようなケースでは、配偶者が病気になった後でも離婚は認められるのでしょうか。また、介護が必要になったこと自体が、離婚の判断に影響することはありますか。
この夫のように長年の不倫や家庭放棄があった場合には、不貞行為(民法770条1項1号)や、婚姻を継続し難い重大な事由(同4号)にあたるとして、裁判でも離婚が認められる方向に働くと考えられます。
また、離婚を求める妻に不貞行為などの有責性がなければ、その離婚請求が法律上制限されることはないでしょう。
そのため、配偶者が病気や要介護状態になったこと自体が、離婚を妨げる決定的な事情になることは通常ないでしょう。
ただし、離婚訴訟では、離婚後の相手方の療養や生活への配慮も含め、さまざまな事情を総合的に考慮して判断されます。そのため、事案によっては裁判所がこうした事情を考慮し、離婚請求を認めない可能性もゼロではありません。
最終的な結論は、夫婦関係の経緯や双方の生活状況など、個別の事情によって左右されることになります。
【取材協力弁護士】
澤藤 亮介(さわふじ・りょうすけ)弁護士
東京弁護士会所属。2003年弁護士登録。2010年に新宿(東京)キーウェスト法律事務所を設立後、離婚、男女問題、相続などを中心に取り扱い、2024年2月から現在の法律事務所でパートナー弁護士として勤務。自身がApple製品全般を好きなこともあり、ITをフル活用し業務の効率化を図っている。日経BP社『iPadで行こう!』などにも寄稿。ご相談のご予約は、web上のカレンダーで空き状況をご確認いただきつつweb上で完結することができます。
事務所名:向陽法律事務所
事務所URL:https://www.keywest-law.com

