「肺がんの抗がん剤治療」は何があるかご存じですか?副作用も医師が解説!

「肺がんの抗がん剤治療」は何があるかご存じですか?副作用も医師が解説!

肺がんは患者さんごとに異なる特徴を持つ病気です。特に重要なのは、肺がんの組織型が何なのか、ドライバー遺伝子変異があるのか、がん細胞にPD-L1が多く認められるのかという点です。治療にあたっては、これらの特徴と、肺がんの進行具合であるステージに基づいて適切な抗がん剤が選択されます。

本記事では、肺がんの治療で使用される抗がん剤の種類とその特徴、治療期間、副作用を解説します。

稲葉 龍之介

監修医師:
稲葉 龍之介(医師)

福井大学医学部医学科卒業。福井県済生会病院 臨床研修医、浜松医科大学医学部付属病院 内科専攻医、聖隷三方原病院 呼吸器センター内科 医員、磐田市立総合病院 呼吸器内科 医長などで経験を積む。現在は、聖隷三方原病院 呼吸器センター内科 医員。日本内科学会 総合内科専門医、日本呼吸器学会 呼吸器専門医、日本感染症学会 感染症専門医 、日本呼吸器内視鏡学会 気管支鏡専門医。日本内科学会認定内科救急・ICLS講習会(JMECC)修了。多数傷病者への対応標準化トレーニングコース(標準コース)修了。がん診療に携わる医師に対する緩和ケア研修会修了。身体障害者福祉法第15条第1項に規定する診断医師。

肺がんの抗がん剤治療とは

抗がん剤治療は、全身のがん細胞を制御するために行われます。そのため、リンパ節やほかの臓器への転移があるとき、疑われるとき、予防するときに行われます。

抗がん剤とは

抗がん剤とは、がん細胞の増殖を抑えて死滅させる薬剤です。がん細胞を直接傷害する薬剤や、身体に作用して間接的にがん細胞の増殖を抑える薬剤があります。

肺がんにおける抗がん剤治療の効果

肺がんにおける抗がん剤治療は、完治を目的とした手術療法・放射線療法の治療効果を高める効果と、がんの進行を抑制して元気に過ごせる時間を延ばす効果があります。

肺がんの治療で使用される抗がん剤の種類

肺がんの治療で使用される抗がん剤は大きく細胞傷害性抗がん薬、分子標的治療薬、免疫チェックポイント阻害薬の3種類に分けられます。

細胞傷害性抗がん薬

細胞傷害性抗がん薬は、がん細胞を直接傷害して死滅させる抗がん剤です。肺がんにおいては、シスプラチン、パクリタキセルなどのプラチナ製剤と、ペメトレキセド、パクリタキセル、アルブミン懸濁型パクリタキセル、ドセタキセル、エトポシド、イリノテカン、アムルビシンなどが用いられます。

分子標的治療薬

分子標的治療薬は、がん細胞が増殖するのに重要なポイントを狙い撃ちする抗がん剤です。肺がんにおいては、がんの発生や進行に関わる遺伝子であるドライバー遺伝子変異と、がんが増殖するために必要な栄養血管の形成を担う血管内皮増殖因子(VEGF)を標的とした治療が行われています。

ドライバー遺伝子変異は非小細胞肺がん患者さんの一部のみで認められます。具体的な遺伝子変異にはEGFR遺伝子変異、ALK融合遺伝子、ROS1融合遺伝子、BRAF遺伝子V600E変異、MET遺伝子変異、RET遺伝子変異、NTRK融合遺伝子、KRAS遺伝子G12C変異、HER2遺伝子変異があります。

VEGFを標的とした分子標的治療薬は血管新生阻害薬とも呼ばれます。肺がんにおいてはアバスチン、ラムシルマブが使用されています。細胞傷害性抗がん薬や、ドライバー遺伝子変異を標的とした分子標的治療薬と組み合わせて用いられます。

免疫チェックポイント阻害薬

免疫チェックポイント阻害薬は、患者さんの免疫に作用する抗がん剤です。人間には病原体や異常な細胞を排除する免疫システムが備わっています。しかしがん細胞は免疫システムの機能を低下させることで、攻撃を受けない仕組みを持っています。

がん細胞による免疫システムの機能低下に関わるタンパク質としてPD-1、PD-L1、CTLA-4があります。免疫チェックポイント阻害薬はこのPD-1、PD-L1、CTLA-4を阻害することで免疫システムを活性化させ、がん細胞を排除します。

患者さんのがん細胞にPD-L1が多く認められる場合には、免疫チェックポイント阻害薬単独による治療を行います。PD-L1が少ない場合には、細胞傷害性抗がん薬と組み合わせます。

配信元: Medical DOC

提供元

プロフィール画像

Medical DOC

Medical DOC(メディカルドキュメント)は800名以上の監修ドクターと作った医療情報サイトです。 カラダの悩みは人それぞれ。その人にあった病院やクリニック・ドクター・医療情報を見つけることは、簡単ではありません。 Medical DOCはカラダの悩みを抱える方へ「信頼できる」「わかりやすい」情報をお届け致します。