亜急性甲状腺炎の治療は、炎症を抑えることが中心となります。症状が軽い場合は非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)が用いられ、炎症が強い場合はプレドニゾロンなどの副腎皮質ステロイド薬が処方されます。経過に応じて甲状腺ホルモン薬やβ遮断薬が補助的に使われることもあります。それぞれの薬がどのような働きをするのかを整理しておきましょう。

監修医師:
久高 将太(琉球大学病院内分泌代謝内科)
琉球大学医学部卒業。琉球大学病院内分泌代謝内科所属。市中病院で初期研修を修了後、予防医学と関連の深い内分泌代謝科を専攻し、琉球大学病院で内科専攻医プログラム修了。今後は公衆衛生学も並行して学び、幅広い視野で予防医学を追求する。日本専門医機構認定内科専門医、日本医師会認定産業医。内分泌代謝・糖尿病内科専門医。
亜急性甲状腺炎に用いられる薬の種類と役割
亜急性甲状腺炎の治療では、炎症を抑えることが中心となります。このセクションでは、治療に用いられる薬の種類と、それぞれがどのような役割を果たすのかを説明します。
非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)による治療
亜急性甲状腺炎の症状が比較的軽い場合には、まず非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs:エヌセイズ)が用いられることがあります。NSAIDsは、炎症を抑えて痛みや発熱を和らげる薬です。ロキソプロフェンやジクロフェナクなどが代表的な薬として知られています。
NSAIDsは首の痛みや発熱などの症状に対して効果が期待できます。ただし、炎症が強い場合や症状の改善が乏しい場合には、より強力な抗炎症作用を持つ薬への変更が検討されます。NSAIDsを使用する際には、胃への負担を軽減するために食後に服用することが一般的です。胃腸が弱い方には、胃粘膜を保護する薬が併用されることもあります。
NSAIDsによる治療の期間は、症状の経過に合わせて調整されます。症状が軽減してきたら、医師の指示のもとで徐々に減量・中止していく流れが一般的です。
副腎皮質ステロイド薬(プレドニゾロンなど)による治療
炎症が強く、NSAIDsで十分な効果が得られない場合や、症状が重い場合には、副腎皮質ステロイド薬(コルチコステロイド)が用いられます。代表的な薬はプレドニゾロンであり、強い抗炎症作用を持ちます。
ステロイド薬を使用すると、通常は数日以内に首の痛みや発熱が急速に改善することが多く、治療の反応が良好な場合には診断の裏付けになることもあります。プレドニゾロンの初期用量は症状の強さに応じて1日15~30mg程度から開始されることが多く 、症状の改善とともに段階的に減量していきます。
ステロイド薬は効果が高い一方で、長期使用や急な中止には注意が必要です。急激に減量・中止すると症状が再燃(ぶり返す)することがあります。また、ステロイド薬の副作用として、胃腸障害・血糖値の上昇・骨密度の低下・感染しやすくなることなどが挙げられます。医師の指示に従い、定期的な経過観察を受けながら服用することが大切です。
甲状腺ホルモン薬・β遮断薬の補助的な使用
亜急性甲状腺炎の経過中、機能低下期に入った際には、甲状腺ホルモン薬(レボチロキシンなど)が補助的に使用されることがあります。甲状腺機能が一時的に低下して倦怠感やむくみなどの症状が強い場合に、ホルモンを補うことで症状の改善が図られます。機能低下期は多くの場合一時的なものであるため、ホルモン薬の使用も短期間に限られることが一般的です。
甲状腺中毒症の時期に動悸や手の震えなどの症状が強い場合には、β遮断薬が用いられることがあります。β遮断薬は心拍数を抑えることで、動悸などの自律神経症状を和らげる効果が期待されます。甲状腺ホルモンの分泌量を直接抑えるわけではありませんが、日常生活での不快感を軽減するための補助的な役割として位置づけられます。
まとめ
亜急性甲状腺炎は、首の痛みや発熱など日常的な症状と区別しにくいことから、見逃されやすい疾患のひとつです。特に女性に多く、適切な診断と薬による治療が回復の鍵を握ります。症状が気になる方は、自己判断せずに早めに医療機関を受診してください。内科や内分泌内科・甲状腺外来への相談が、回復への第一歩につながります。かかりつけ医がいる場合は、まずそちらへ相談するところから始めてみてください。
参考文献
日本甲状腺学会「甲状腺疾患診断ガイドライン2024」
日本内分泌学会「亜急性甲状腺炎」
厚生労働省「重篤副作用疾患別対応マニュアル|甲状腺中毒症」
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