くも膜下出血の本格発症で現れる「雷鳴頭痛」は、数秒から数十秒でピークに達する衝撃的な痛みが特徴です。「バットで殴られたような」と表現されることも多く、一般的な頭痛とは明らかに異なります。一度痛みが和らいでも再出血のリスクがあるため、「落ち着いたから大丈夫」と判断せず、速やかに救急受診を検討することが重要です。

監修医師:
伊藤 たえ(医師)
浜松医科大学医学部卒業。浜松医科大学医学部附属病院初期研修。東京都の総合病院脳神経外科、菅原脳神経外科クリニックなどを経て赤坂パークビル脳神経外科菅原クリニック東京脳ドックの院長に就任。日本脳神経外科学会専門医、日本脳卒中学会専門医、日本脳ドック学会認定医。
くも膜下出血が疑われる頭痛は早急な受診が重要
くも膜下出血は、突然起こる激しい頭痛をきっかけに発見されることが多く、対応が遅れると命に関わる可能性もある危険な病気です。「これまでに経験したことのない頭痛」や「急激に悪化する頭痛」が現れた場合は、自己判断せず、できるだけ早く医療機関を受診することが重要です。ここでは、頭痛が起きた際に市販薬を使用してよいのか、またどのような検査で診断が行われるのかについて解説します。
くも膜下出血の頭痛は市販薬で対処してよい?
「頭痛だから市販の頭痛薬で様子を見よう」と考える方もいるかもしれません。しかし、くも膜下出血が疑われる場合、この判断は大きなリスクを伴います。症状の一時的な軽減に惑わされず、原因に目を向けることが重要です。
市販薬で痛みを抑えることの危険性
市販の鎮痛薬によって一時的に痛みが和らぐことはありますが、出血そのものが止まるわけではありません。むしろ、痛みが軽減したことで「もう大丈夫」と誤解し、医療機関の受診が遅れることが問題となります。くも膜下出血は時間との勝負となる疾患であり、対応の遅れが重篤な結果につながる可能性があります。
さらに、アスピリンなどの成分を含む一部の市販鎮痛薬には血液を固まりにくくする作用があり、出血を助長するおそれも指摘されています。市販薬の中には複数の成分が含まれているものもあるため、自己判断での服用はリスクを伴います。
「突然の激しい頭痛」「これまでにない頭痛」が現れた場合は、市販薬で様子を見るのではなく、速やかに救急車を呼ぶ、あるいは医療機関を受診することが最も重要な対応です。
受診前にしておくべき準備と注意事項
救急要請や受診の際には、症状の経過を正確に伝えることが重要です。以下のような情報を整理しておくと、診断や対応がスムーズになります。
・頭痛が始まった時刻と状況(何をしていたときか)
・痛みの強さや性質(これまでの頭痛と比べてどう違うか)
・伴っている症状(嘔吐・意識の変化・手足のしびれなど)
・既往歴や持病、現在服用している薬
また、受診前にはできるだけ安静を保つことが大切です。激しく頭を動かす、いきむ、無理に歩き回るといった行動は、血圧の変動によって状態を悪化させる可能性があります。周囲に人がいる場合は早めに状況を伝え、サポートを受けながら安全に医療機関へ向かうことが望まれます。
くも膜下出血の頭痛の検査
くも膜下出血が疑われる場合、医療機関ではどのような検査が行われるのでしょうか。検査の流れを知っておくことで、受診への不安を和らげることができます。
CT検査と髄液検査
救急外来では、まず頭部CT(コンピュータ断層撮影)検査が行われます。ごく少量の出血以外は、発症から数日以内であれば、CT画像でくも膜下腔の出血(白く映る領域)を確認できる場合が多いとされています。ただし、出血量が少ない場合や発症から時間が経過している場合は、CT上で異常が見つからないこともあります。
そのような場合にはMRIやMRA検査を行い、必要に応じて腰椎穿刺(ようついせんし)によって脳脊髄液を採取し、血液が混じっていないかを確認する「髄液検査」が追加されることがあります。
MRI・MRAによる脳動脈瘤の確認
出血の確認後、またはスクリーニング目的では、MRI(磁気共鳴画像)やMRA(磁気共鳴血管撮影)を用いて脳の血管の状態を詳しく調べます。
MRAは放射線を使わずに脳の血管を3次元的に可視化できるため、動脈瘤の有無や大きさ、位置などを確認するうえで有用です。くも膜下出血を起こした方、または家族歴がある方には、こうした画像検査による定期的な観察が推奨される場合があります。いずれの検査も、担当医の説明をよく聞いたうえで受けることが大切です。
まとめ
くも膜下出血は突然発症することが多い病気ですが、前兆・頭痛の特徴・身体のサインに気づくことで、早期受診につながる可能性があります。「今まで経験したことのない頭痛」や「急な意識の変化」「首の痛みや嘔吐の併発」などのサインが現れた場合は、自己判断せずに速やかに医療機関を受診することが大切です。くも膜下出血は適切な治療によって命を守り、後遺症を軽減できる可能性が向上します。少しでも気になる症状があれば、ためらわずに専門医に相談することをおすすめします。
参考文献
日本脳卒中学会「脳卒中治療ガイドライン2021[改訂2025]」
厚生労働省「第3回 脳卒中ってなぁに?」
日本神経学会「神経内科疾患の診療ガイドライン」
- 危険なのは「ズキズキ脈打つ頭痛」「突然バットで殴られたような頭痛」どっち?【医師解説】
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