脳トレ四択クイズ | Merkystyle
玉置玲央が語る“命のスープ”の舞台裏と作品への真摯な思い「人は努力次第で絶対に変われる」<ムショラン三ツ星>

玉置玲央が語る“命のスープ”の舞台裏と作品への真摯な思い「人は努力次第で絶対に変われる」<ムショラン三ツ星>

土曜ドラマ「ムショラン三ツ星」に出演中の玉置玲央にインタビューを実施
土曜ドラマ「ムショラン三ツ星」に出演中の玉置玲央にインタビューを実施 / 撮影=岡田健

小池栄子が主演を務める土曜ドラマ「ムショラン三ツ星」(毎週土曜夜10:00-10:45、NHK総合)が現在放送中。本作は、現役の刑務所管理栄養士・黒柳桂子氏によるノンフィクションをドラマ化した社会派コメディー。腕利きのイタリアンシェフだった主人公・銀林葉子(小池)が、ひょんなことから刑務所の管理栄養士として働くことになり、塀の中の刑務官や受刑者たちと衝突しながらも、食を通して更生への道を探る姿を描く。物語は第3話の放送を終え、受刑者たちの背景も徐々に明らかになっていく。

WEBザテレビジョンでは、過失致死罪で服役中の川口心平を演じる玉置玲央にインタビューを実施。舞台作品から映像作品まで、確かな演技力で作品ごとに鮮烈な印象を焼き付ける玉置に、今作への思いや、人生での大きな出会いまで語ってもらった。

■単なる“刑務所ドタバタコメディドラマ”ではない

――まず、最初に台本を読まれたときの感想を教えてください。

NHKさんの土曜ドラマ枠は、これまでも多様な作品を扱っていらっしゃいます。特に自分の中では、人の思いや社会の現実に深く迫る“社会派”と呼ばれる作品が多い印象がありました。だからこそ、この「ムショラン三ツ星」の台本を読んだときも、登場人物たちや物語が一体何を伝えるべきなのか、何を伝えたいと思っているのかを、きちんと丁寧に拾い上げて演じなければいけない、と。単なる“刑務所ドタバタコメディドラマ”ではない、という部分をしっかり考えなくてはと強く思いました。

――演じられる川口心平という役には、最初どのようにアプローチしようと考えましたか?

川口は話を重ねていくにつれ、さまざまな展開が待っているキャラクターです。そのため、他の受刑者の方たちとのコミュニケーションの距離感や、あまり自分を発散しすぎないようにという塩梅を意識しました。事前の準備として自分の核に持っていたのは、「どの方向に転ぶとしても、他の方とは一線を画す何かを持っていた方がいいのだろうな」ということ。それをしっかりと胸に抱いて撮影に臨みました。

■川口心平という人物の人間らしさと葛藤への共感

――玉置さんから見て、川口心平という人物はどのように映っていましたか?

一言で言えば、思慮深い人です。でもそれは良い意味だけではなく、“そこまで気にしなくてもいいこと”まで、多分これまでの人生でずっと気にして生きてきてしまったし、今も気にし続けている人なのだろうなと思います。過去のことも、現在のことも、これからどうやって生きていくかという未来のことも含めて、もっと何かに縛られずに生きられたら…と思ってしまう人物です。何かに縛られずに生きることは川口に限った話ではなく、いろいろな人の人生における普遍的なテーマかもしれません。もし何かに縛られずに生きられていたら、川口はこんなにも葛藤を覚えることも、道を踏み外すこともなかったのかもしれない。

ただ、川口がそうやって「自分は果たして許されていいのだろうか」とか「本当に変われるだろうか」と、内面で激しく揺れ動いて葛藤していること自体は、ものすごくすてきで人間らしいことだと思うんです。常にその悩みに苛まれている姿は、深く共感できる部分でもありました。
玉置玲央
玉置玲央 / 撮影=岡田健

玉置玲央
玉置玲央 / 撮影=岡田健


■撮影の日々を乗り越えてたどり着いた“命のスープ”

――第1話のラストに登場したスープは、川口の心が動く大きなきっかけとなるものでした。実際に召し上がってみていかがでしたか?

スープのシーンは、本当に心に残っています。撮影のスケジュール上の話になってしまうのですが、実はあのシーンを撮ったのは全体の撮影の本当に終盤だったんですよ。実際の刑務所をお借りしたシーンなどは序盤から中盤にかけて撮影したので、そこからはキャストがどんどんクランクアップして人が減っていきました。本当に終盤の人がいなくなっていく寂しさの中で、第1話ラストのスープのシーンを撮影しました。

つまり僕自身、撮影の日々を積み重ねて過ごした上で、ようやくあのスープにたどり着いたんです。銀林さん(小池栄子)が作ってくれたスープを、名取所長(國村隼)に諭されて飲むというシーンでしたが、そこに至るまでのさまざまな思いが全部盛り込まれたスープになりました。

メタ的な撮影スケジュールの話ではあるのですが、作中の銀林さんがスープを作るに至った流れも、そして川口が紆余曲折を経て生きてあのスープに辿り着いた流れも、すべてが重なったように思えて。自分の中で、味はもちろん、そこに込められた意味も含めて、ものすごく印象深くてグッとくる、すてきなスープになりました。

――川口にとっても、人生の大きな転機になるスープでしたね。

そうですね。実は現場でのスープの呼び名として、“命のスープ”と言われていたんです。実際に演じてみて「本当にその通りだな」と心から思いました。

■小池栄子ががっちり抱きしめてくれた、全員が一丸となれる現場

――主演の小池栄子さんとの共演はいかがでしたか?

本当に楽しかったです! 実は僕は、もともと役者ではなく裏方をやっていた時期がありまして。20年ほど前に、小池さんが主演されている舞台の演出部をやっていたんです。小池さんは当時の座長だった頃から、本当に何も変わっていなくて。そこにいるだけで現場の空気が朗らかに、パッと明るくなる。まるで太陽のような人です。

今作は、俳優をメインとして活動されている方ばかりではない、本当に多様なジャンルの方々が集まった現場でした。それぞれの世界での勝手が違うため、ドラマの制作現場という慣れない環境で、戸惑うこともきっとあったと思うんです。ですが、そこを座長である小池さんが本当にがっちりと抱きしめて、包み込んでくださった。だからこそ、すごく良い座組になりましたし、素晴らしい経験ができました。

――リリースコメントでは「撮影が楽しくてしょうがなかった」というお言葉もありましたが、チームの空気感は最初からでき上がっていたのでしょうか?

いえ、やはり段々とでき上がっていきました。ただ、このドラマの特性でもあるのですが、「料理を作る」「食べる」という共通のことに全員で取り組んでいく作品だったからこそ、みんながほぐれていくのがものすごく早かった。

みんなで一つのゴールを目指して、調理の役割を分業してやっていく。その過程でコミュニケーションが自然と積み重なっていきました。「食べる」「料理する」という行為の持つ力や素晴らしさを、改めて現場で実感しましたね。食べることは、絶対に誰もが経験している共通の営みです。だからこそ一丸となれるし、逆にそこにこだわりがあるからこそ違いも出るし、時には揉めごとのきっかけにもなる。劇中で描かれているように、料理を作っていく過程を通して、僕たちキャスト同士もどんどん仲が深まっていきました。まさに“同じ釜の飯を食った”という強い絆を感じています。
玉置玲央
玉置玲央 / 撮影=岡田健


■ドラマを通して背中を押され、勇気をもらった

――今作には「人は本当に変われるのか」という一つの大きなテーマがありますが、作品を通して玉置さんはどのように感じられましたか?

僕は、人間はその人の努力次第で絶対に変われると思っています。どんな事情を抱えていたとしても、です。これは川口の話ではなく僕個人の話ですが、この作品を通して「そう思っていていいんだ」と自分の背中を強く押してもらえた気がして、すごく勇気をもらいました。人が何か変化すること、変わっていくこと自体は当然のことであり、その変化を誰かがきっと見てくれている。そしてもっと肯定的に捉えるならば、応援してくれている人がどこかにいるかもしれない。そう信じて生きていっていいし、いろんなことに取り組んでいいのだと、このドラマを通して改めて強く思うことができました。

――そのように思えたのは、演じる川口の歩みや変化というところも作用したのでしょうか?

そうですね。全5話を通して描かれる川口の歩みや変化、そして銀林さんとの出会い、食べるという行為の尊さ。それらが自分の中で奇跡的なタイミングで重なったからこそ、余計にそう思えたのだと感じています。もう撮影は終わってしまったので、あとは視聴者の皆さまにこの精一杯頑張った思いが伝わったらいいなと、ふつふつと感じています。

――第3話の放送を終え、4話、5話とラストに向けて、視聴者の方にはどんなところに注目してほしいですか?

川口個人としてもそうですし、他の登場人物たちに対しても、ぜひ見限ったり諦めたりしないでいただけたらうれしいです。そして川口の今後や、最終回のさらにその先にあるかもしれない彼のこれからの生活に対して、きっと明るい未来がある、人生が好転していくという期待を持って、諦めずに見守ってほしい。ものすごくおこがましい言い方になってしまうかもしれませんが、登場人物たちの変化を諦めずに見ていただくことが、転じて、視聴者の皆さまご自身の何かを好転させるきっかけや、つながりになっていったらいいな、と思っています。

■俳優・玉置玲央の原点、そして理想の座長・大杉漣との出会い

――川口にとって、炊場で過ごした時間は、今後苦しいことがあったときの心の拠りどころになるのだろうと感じました。

川口にとって炊場での日々は、きっとお守りのような存在になるのだと思います。

――玉置さんご自身にとって、俳優としての心の拠りどころはありますか?

俳優としての拠りどころ、と言われると、僕にとっては“日常”です。変な言い方かもしれませんが、僕は俳優業をやる上で、プライベートや日々の生活というものをきちんと営みたいタイプなんです。自分が思う“ちゃんとしたい形”を整えておきたい。表現活動をする上で、仕事とプライベートという両極端な二つを、しっかりと高水準でやっていけたとしたらとてもいい両輪になると思っています。日常をちゃんと営むこと、生活を大切にすること、家族を大切にすること。それこそが、僕が仕事を全力でやる上での一番の拠りどころであり、とても大事にしているバランスです。…できているかは分かりませんが、そうしているとは思っています(笑)。

――川口にとっての銀林葉子のように、玉置さんの人生において転機となった出会いはありますか?

真っ先に思い浮かぶのは、やはり映画「教誨師」(2018年)での大杉漣さんとの出会いです。本当に大きな出会いでした。漣さんとの出会いは、俳優としての自分の背中を大きく押していただけたものだと思っています。僕がこれまでの人生で出会った中で“最強の座長”であり、自分が思う理想の座長そのものでした。「現場でこういう過ごし方をしてもいいんだ、こういう風に現場にいるべきなんだ」ということを、背中で教えてくださった。今でも変わらず、漣さんに対しては特別な思いを抱き続けています。

――玉置さんが旗揚げから所属している劇団「柿喰う客」も、今年20周年を迎えられました。主宰の中屋敷法仁さんとの出会いや当時の思い出も大きいですか?

中屋敷ですか?(笑)。でも確かに、彼と出会っていなければ、こんなにも舞台の世界でやっていこうとは思わなかったかもしれません。20歳前後の多感な時期に、仲間たちと懸命に過ごした時代の記憶は今でも強く残っています。そして何より、演劇との出会いそのものが、僕の人生において最大のターニングポイントだったのだと思います。プライベートと仕事の両立といった今の僕の指針が決まったことも含めて、やはりお芝居との出会いは言葉にできないほど大きいですね。
玉置玲央
玉置玲央 / 撮影=岡田健


■そろそろ“いいおじさん”の役をやりたいです(笑)

――玉置さんは役が乗り移る“憑依型”の俳優さんというイメージがあったのですが、ご自身のエッセイ「では、後ほど」ではそれを否定されていて意外でした。今回の川口をはじめ、役に対してはロジカルに考えて構築していくのでしょうか?

得意かどうかは自分では分からないのですが、考えて役を構築していくアプローチが好きです。なので、“役が抜けない”ということも自分ではほぼないと思っています。

ただ、(インタビュー場所が)NHKだからあえて言いますけど、NHKさんの作品に呼んでいただく際、結構クズのような、ゲスい役をやらせていただくことが多いんです(笑)。なので周りの方から「普段からそういう人なんだと思っていました」とよく言われて。もし役が抜けずに普段からそんな人間だとしたら、相当ヤバい人間になってしまうので、そんなことは絶対にありません(笑)。

今作で共演した中村蒼さんからも、「玉置さんがこんなに気さくにお話しして下さる方だとは思わなかったです」と言われました(笑)。社会倫理に反する役をやることが多いので、どうしてもお芝居の印象が強く残っているのかなと。ありがたいことですが、今後は、ぜひ“いいおじさん”の役をやりたいです!

■このドラマの着地点を最後まで一緒に見つけ続けてもらえたら

――最後に、視聴者の方へメッセージをお願いします。

「ムショラン三ツ星」という作品は、本当にいろいろな見方ができるドラマだと思っています。ただ、これだけは大事なことなのでお伝えしておきたいのですが、決して罪を犯すことや犯罪者を肯定・助長するためのドラマではありません。それは皆さまも分かってくださっているとは思うのですが、それを踏まえた上で、この作品が本当に伝えたいメッセージを、登場人物たちの日々や関係性、描かれる人生の中から、ポジティブに拾い集めていただけたらうれしいです。

さまざまな問題や揉め事がこれでもかと起こりますが、最終的に物語がぎゅーっと終着していく先は、“食べる”という、人間の最も原始的で根源的なことなのだと感じています。僕自身、第1話の完成版(完パケ)を見た際、最後には「やっぱり食べるって大事だよな」と素直に思ったんです。見て下さる方に「こう思ってください」と押し付けるわけではなく、このドラマの着地点を最後まで一緒に見つけ続けてもらえたら、これほどうれしいことはありません。ぜひ最終回まで、彼らの歩みを見届けてください。

※「ムショラン三ツ星」第4話は6月20日(土)夜10:00より放送予定。また本日6月16日深夜0:35より第1話から3話まで一挙再放送。

※黒柳桂子氏の柳は、「木」偏に「夘」が正式表記

提供元

プロフィール画像

WEBザテレビジョン

WEBザテレビジョンは芸能ニュース、テレビ番組情報、タレントインタビューほか、最新のエンターテイメント情報をお届けするWEBメディアです。エンタメ取材歴40年以上、ドラマ、バラエティー、映画、音楽、アニメ、アイドルなどジャンルも幅広く深堀していきます。