くも膜下出血の後、頭痛は数日から数週間続くことがあります。この期間に注意が必要なのが「再出血」で、初回よりも重篤な状態を招く可能性があります。また、脳血管れん縮(脳の血管が収縮して血流が低下する状態)や水頭症(脳脊髄液の流れが滞り脳が圧迫される状態)といった合併症が生じることもあり、全身の変化を含めた注意深い経過観察が求められます。

監修医師:
伊藤 たえ(医師)
浜松医科大学医学部卒業。浜松医科大学医学部附属病院初期研修。東京都の総合病院脳神経外科、菅原脳神経外科クリニックなどを経て赤坂パークビル脳神経外科菅原クリニック東京脳ドックの院長に就任。日本脳神経外科学会専門医、日本脳卒中学会専門医、日本脳ドック学会認定医。
くも膜下出血のサイン
くも膜下出血は、前触れなく突然発症することが多い病気です。ただし、中には発症前に軽い頭痛や体調の変化がみられるケースもあります。特に「これまでに経験したことのない頭痛」や、急激に悪化する症状には注意が必要です。ここでは、日常生活の中で気づく可能性のある変化や、見逃されやすいサインについて解説します。
①:日常生活で気づける身体の変化
くも膜下出血のサインは、必ずしも激しい症状として現れるわけではありません。日常生活の中で「なんとなく変だ」と感じるような微妙な変化が、重要な手がかりになることがあります。こうした初期の違和感は見過ごされやすい一方で、早期受診につなげるための大切なサインでもあります。普段の体調との違いに気づく視点を持つことが重要です。
急な眠気・ぼんやりとした意識・集中力の低下
急に強い眠気を感じたりぼんやりとした意識状態が続いたりすることや、「集中できない」「会話の内容が頭に入りにくい」「反応が遅くなった気がする」といった軽微な変化が現れることもありますが、これらの症状が全面的に出ることはくも膜下出血ではあまり多くありません。
しかし、突然症状が出現した場合や短時間で悪化する場合には注意が必要で、特に強い頭痛を伴う場合や、普段とは明らかに異なる意識状態が見られる場合には、速やかな受診が望まれます。
急な光への過敏・音への過敏という感覚異常
くも膜下腔への出血によって髄膜が刺激されると、光を見ると目がつらくなる「光過敏」や、音が異常に大きく感じられる「音過敏」が現れることがあります。日常の環境が急に不快に感じられる、テレビの音がうるさく感じるといった変化として気づくこともあります。
これらの症状は片頭痛でもみられることがありますが、くも膜下出血の場合は「突然の強い頭痛」と同時に現れる点が特徴です。これまで経験のない頭痛とともに感覚の異常が出ている場合には、自己判断で様子を見るのではなく、医療機関での評価を受けることが重要です。
②:見逃されやすい非典型的なサイン
くも膜下出血は典型的な激しい頭痛だけでなく、一見すると関係がないように思える症状として現れることもあります。こうした非典型的なサインは見逃されやすいため、あらかじめ知っておくことが早期発見につながります。
首の後ろの張りや背中の痛み
くも膜下出血では、血液がくも膜下腔を通じて広がることで、脳だけでなく脊髄側にも影響が及ぶことがあります。その結果、首の後ろから肩、背中にかけての張りや痛みとして感じられる場合があります。
このような症状は肩こりや筋肉疲労と区別がつきにくく、「寝違えたのかな」と軽く考えてしまうこともあります。しかし、「急に首が動かしにくくなった」「これまでにない種類の痛みが出ている」といった変化があり、さらに頭痛や吐き気を伴う場合には注意が必要です。
また、項部硬直は医療機関での診察において重要な所見の一つであり、くも膜下出血を疑うきっかけとなることがあります。
てんかん発作・失神・片まひという神経症状
くも膜下出血が進行すると、脳内圧の上昇や血流障害によって、より明確な神経症状が現れることがあります。代表的なものとして、けいれんを伴うてんかん発作や、一時的な意識消失(失神)が挙げられます。
さらに、片側の手足に力が入らない「片まひ」や、言葉が出にくくなる「失語」などの症状は、脳の機能に障害が生じているサインです。顔の片側が下がる、ろれつが回らないといった変化として現れることもあります。
これらの症状は突然現れることが多く、時間の経過とともに悪化する可能性もあります。くも膜下出血を含む脳血管障害では、治療開始までの時間がその後の回復や後遺症の程度に大きく影響します。少しでも異変を感じた場合は迷わず救急車を呼ぶ判断が重要です。
まとめ
くも膜下出血は突然発症することが多い病気ですが、前兆・頭痛の特徴・身体のサインに気づくことで、早期受診につながる可能性があります。「今まで経験したことのない頭痛」や「急な意識の変化」「首の痛みや嘔吐の併発」などのサインが現れた場合は、自己判断せずに速やかに医療機関を受診することが大切です。くも膜下出血は適切な治療によって命を守り、後遺症を軽減できる可能性が向上します。少しでも気になる症状があれば、ためらわずに専門医に相談することをおすすめします。
参考文献
日本脳卒中学会「脳卒中治療ガイドライン2021[改訂2025]」
厚生労働省「第3回 脳卒中ってなぁに?」
日本神経学会「神経内科疾患の診療ガイドライン」
- 危険なのは「ズキズキ脈打つ頭痛」「突然バットで殴られたような頭痛」どっち?【医師解説】
──────────── - 「脳卒中の再発率」が高いのはいつかご存じですか?前兆症状と予防法も医師が解説!
──────────── - 【闘病】働き盛りの女性に迫る破裂の恐怖… 『未破裂脳動脈瘤』発見から前向きな決断へ
────────────

