インプラントで骨移植をするメリットとデメリット
インプラントの骨移植は、インプラント治療を諦めざるをえなかった患者さんでもインプラント治療が可能になる治療法ですが、デメリットも存在します。ここではメリットとデメリットを解説します。
骨移植のメリット
骨移植のメリットは、十分な骨量、骨質を確保できる点です。これによりインプラント埋入時の初期固定力が高まり、長期的な安定性を得やすくなります。実際、骨移植を施行した部位のインプラント残存率は、施行していない部位と比較しても有意差はないといわれています。骨移植を行うことで、噛む機能だけでなく、審美性の改善にもつながり、見た目と機能の両面で生活の質を向上させることができます。
参照:『骨造成法と骨移植剤の選択基準を再考する』(日口腔インプラント誌 第34巻第4号)
骨移植のデメリット
骨移植には多くの利点がある一方で、いくつかのデメリットが存在します。代表的なデメリットは下記のとおりです。
費用が高くなる傾向がある
腫れや痛みなどが生じることがある
合併症のリスクがある
治療の工程が増えるため、通院回数や治療期間が長くなる点も患者さんの負担となります。さらに、自家骨を用いる場合は、移植部だけでなく、採骨部の合併症にも新たな手術創ができるため、痛みやしびれ瘢痕など採骨に伴う合併症を考慮する必要があります。
インプラントで骨移植が必要になった場合の注意点
骨移植を成功させるためには、いくつかの基本条件を満たすことが大切です。
傷口をしっかり閉じて保つこと
骨が再生するための空間を確保すること
移植部やインプラントを動かさず安定させること
新しい血管がのびてきやすい環境を整えること
これらの条件が満たされているほど、移植した部分に新しい骨が育ちやすく、インプラントの長期安定につながります。これらの条件を満たすには、術者の技量だけではなく、患者さん自身の協力があって初めて成り立ちます。手術の前後で以下の点に注意して過ごすようにしましょう。
術後、やわらかい食事をとり、患部を安静に保つ
歯茎の炎症やむし歯があれば、あらかじめ治療を済ませる
毎日の歯磨き習慣を見直すことで、口腔内を清潔に整える
禁煙する
持病の治療を行う
なかでも注意すべき点は傷口が開かないように患部を安静にすることです。傷が開くと移植材が露出して感染しやすくなり、せっかく増やした骨の量が減ってしまう場合があります。予定していた場所、形状でインプラントを入れられなくなることもあるため、術前からリスクをよく理解し、術後は担当歯科医師の指示どおりに生活しましょう。また、口腔内の衛生状況を改善し、清潔な状態を保つことは、感染リスクを減らすことにつながります。さらに、禁煙や糖尿病のコントロールといった全身管理も重要です。骨に影響を及ぼす可能性のある薬(骨粗鬆症治療薬、抗がん剤の一部、抗凝固薬など)を服用している場合は、事前に担当歯科医師に伝えてください。また、上顎の奥歯のように上顎洞に近い部位の骨移植が必要な方は、前もって耳鼻科を受診してもらい、鼻や上顎洞の状態を確認してもらう場合があります。
こうした準備や注意を徹底することで、骨移植とインプラント治療の成功率をより高めることができます。

