くも膜下出血が疑われる場合、市販の鎮痛薬で痛みを和らげても出血は止まらず、受診が遅れるリスクがあります。救急要請の際は、頭痛が始まった時刻や痛みの性質、伴う症状を伝えることが大切です。治療には開頭クリッピング術や血管内治療(コイル塞栓術)があり、早期に適切な医療機関へつながることが、その後の回復に向けた大切な一歩となります。

監修医師:
伊藤 たえ(医師)
浜松医科大学医学部卒業。浜松医科大学医学部附属病院初期研修。東京都の総合病院脳神経外科、菅原脳神経外科クリニックなどを経て赤坂パークビル脳神経外科菅原クリニック東京脳ドックの院長に就任。日本脳神経外科学会専門医、日本脳卒中学会専門医、日本脳ドック学会認定医。
くも膜下出血の発見と救急対応、治療の流れ
くも膜下出血のサインに気づいたとき、あるいは周囲の方が突然倒れた場面に遭遇したとき、迅速かつ適切な対応がその後の経過を大きく左右します。発症直後の数分〜数十分の対応が予後に影響するとされており、あらかじめ基本的な流れを知っておくことが重要です。
発見時の対応方法
くも膜下出血が疑われる場合は、迷わず119番へ連絡することが最優先です。「様子を見よう」と判断する時間が、重症化につながる可能性があります。通報の際には、患者さんの年齢・現在の症状・意識の有無・発症した時刻や状況をできる範囲で具体的に伝えます。
意識がある場合は、できるだけ安静を保ち、頭や首に負担がかからない姿勢をとらせます。基本的には仰向け、もしくは嘔吐のリスクがある場合には横向きに寝かせると安全です。無理に立たせたり歩かせたりすることは避けてください。
嘔吐がみられる場合は、気道を確保するために顔を横に向け、誤嚥を防ぎます。また、衣服をゆるめて呼吸を妨げないように配慮することも大切です。
意識がない場合や呼吸が確認できない場合には、速やかに心肺蘇生法(CPR)を開始します。AEDが近くにある場合は使用を検討し、周囲の方と協力しながら対応することが重要です。救急隊が到着するまでの時間は不安を感じやすい場面ですが、落ち着いて一つずつ対応することが患者さんの命をつなぐ行動につながります。
治療の主な選択肢
くも膜下出血の治療では、出血の原因となっている脳動脈瘤への対処が中心となります。主な治療法には、「開頭クリッピング術」と「コイル塞栓術(血管内治療)」の2つがあります。
開頭クリッピング術は、頭蓋骨の一部を開けて脳動脈瘤を直接確認し、破裂した部位の根元を金属製のクリップで挟む方法です。確実に動脈瘤を遮断できるという利点がありますが、外科的侵襲が比較的大きいという特徴があります。
一方、コイル塞栓術は、足の付け根などの血管から細いカテーテルを挿入し、脳動脈瘤の内部にコイルを詰めて血流を遮断する方法です。開頭を伴わないため身体への負担が比較的少ないとされていますが、動脈瘤の形状や位置によっては適応が限られる場合があります。
どちらの方法を選択するかは、患者さんの年齢や全身状態、動脈瘤の大きさや位置、出血の程度などを総合的に判断して決定されます。治療は専門的な医療チームによって迅速に行われる必要があり、早期に適切な医療機関へ搬送されることが重要です。
また、治療後も安心できるわけではなく、再出血の予防や脳血管れん縮、水頭症などの合併症に対する管理が継続して行われます。集中治療室(ICU)での厳重な管理や、その後のリハビリテーションを含めた長期的なケアが必要となる場合もあります。
まとめ
くも膜下出血は突然発症することが多い病気ですが、前兆・頭痛の特徴・身体のサインに気づくことで、早期受診につながる可能性があります。「今まで経験したことのない頭痛」や「急な意識の変化」「首の痛みや嘔吐の併発」などのサインが現れた場合は、自己判断せずに速やかに医療機関を受診することが大切です。くも膜下出血は適切な治療によって命を守り、後遺症を軽減できる可能性が向上します。少しでも気になる症状があれば、ためらわずに専門医に相談することをおすすめします。
参考文献
日本脳卒中学会「脳卒中治療ガイドライン2021[改訂2025]」
厚生労働省「第3回 脳卒中ってなぁに?」
日本神経学会「神経内科疾患の診療ガイドライン」
- 女性に多い「くも膜下出血」の”手術”は何をするのか?費用・合併症も医師が解説!
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