「女性で中性脂肪が高い」と発症する可能性のある病気とは?Medical DOC監修医が解説します。
※この記事はメディカルドックにて『「女性で中性脂肪が高くなる原因」はご存知ですか?医師が徹底解説!』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。

監修医師:
伊藤 陽子(医師)
浜松医科大学医学部卒業。腎臓・高血圧内科を専門とし、病院勤務を経て2019年中央林間さくら内科開業。相談しやすいクリニックを目指し、生活習慣病、腎臓病を中心に診療を行っている。医学博士、産業医、日本内科学会総合内科専門医、日本腎臓学会腎臓専門医、日本透析医学会透析専門医、日本東洋医学会漢方専門医、日本医師会認定産業医、公認心理師。
女性の中性脂肪の基準値
女性全体の中性脂肪の基準値は空腹時(10時間以上の絶食)採血で30〜117mg/dLです。この値は女性の場合、閉経前後で値が変わり、閉経前で30〜113mg/dL、閉経後で37〜159mg/dLとなります。また、脂質異常症の診断基準では空腹時で150mg/dL以上を異常値としています。
女性は50代から中性脂肪が上昇する傾向にあります。原因として、エストロゲンという女性ホルモンの分泌の減少が関連しています。
中性脂肪の高値が持続すると、メタボリックシンドロームや生活習慣病・動脈硬化・脳や心疾患を招くリスク因子になります。
中性脂肪とは?
中性脂肪とは食物に含まれる脂質の多くで、エネルギー源です。利用されなかったエネルギーは中性脂肪に変換され、体脂肪として蓄えられます。糖質が不足した時など必要に応じて分解され、利用されます。
中性脂肪のエネルギー源以外の役割は脂溶性ビタミンなどの吸収を助ける・体温の維持などです。
中性脂肪が過剰になると肥満やメタボリックシンドローム・脂肪肝の原因になり、高すぎると急性膵炎を起こす可能性があります。
20代~30代女性の中性脂肪の基準値
20〜30代女性の中性脂肪の基準値は空腹時採血で30〜117mg/dL(ほどんどの方が閉経前と考えると30〜113mg/dL)です。
令和元年の国民健康・栄養調査の報告(コレステロールを下げる薬または中性脂肪を下げる薬の使用者除外)では、20代女性の中性脂肪の平均値は109.1mg/dL、30代女性は97.2mg/dLです。20〜30代の女性では、中性脂肪の平均は他の年代と比較して低めとなっています。特に30代女性の全年齢の中で最も低い値でした。20代と比較すると食事などの健康面に気を付け始める影響があると考えられます。
40代女性の中性脂肪の基準値
40代女性の中性脂肪の基準値は空腹時採血で閉経前で30〜113mg/dL、閉経後で37〜159mg/dL です。
また、40代女性の中性脂肪の平均値は107.4mg/dLです。40代女性では30代に次いで低めの値です。まだ閉経していない方が多く、それほど生活習慣の乱れも少ないためと考ええられます。
50代女性の中性脂肪の基準値
50代女性の中性脂肪の基準値は空腹時採血で閉経前で30〜113mg/dL、閉経後で37〜159mg/dL です。
50代女性の中性脂肪の平均値は128.8mg/dLです。50代女性では閉経している女性が多くなるため、平均値の上昇がみられます。
60代女性の中性脂肪の基準値
60代女性の中性脂肪の基準値は空腹時採血で37~159mg/dLです。
60代女性の中性脂肪の平均値は153.2mg/dLです。60代女性では全年代の中で最も高い平均値となり、平均値でも脂質異常症を満たす異常値となっています。閉経の影響が最も強いと考えられます。
70代女性の中性脂肪の基準値
70代女性の中性脂肪の基準値は空腹時採血で37〜159mg/dL です。
70代女性の中性脂肪の平均値は136.5mg/dLです。70代女性の平均値では60代と比較し低下がみられます。これは加齢による食事量の減少が影響していると考えられます。
「女性で中性脂肪が高い」と発症する可能性のある病気・疾患
ここではMedical DOC監修医が、「女性で中性脂肪が高い」に関する病気を紹介します。
どのような病気や症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。
ここではMedical DOC監修医が、「女性で中性脂肪が高い」に関する病気を紹介します。
どのような病気や症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。
脂質異常症
脂質異常症とは、脂質の代謝異常の状態です。動脈硬化の進行リスクになります。
主な原因は食べ過ぎ・アルコールの多飲・肥満などです。女性は閉経するとホルモンバランスが乱れ、LDLコレステロールや中性脂肪が上昇しやすくなります。
治療は食事療法や運動療法を行い、改善しない場合は薬物療法も併用します。
健康診断などで中性脂肪・LDLコレステロールが高いと指摘されたらすみやかに一般内科を受診しましょう。
動脈硬化
動脈硬化とは、血管壁にコレステロールが沈着して血管が厚くなり、血管内が狭くなったり、血管が硬くなった状態です。心疾患・脳卒中などの疾患の発症の原因となります。
脂質異常症・高血圧・糖尿病などの生活習慣病や加齢、喫煙や運動不足などが主な原因です。
脂質異常症・高血圧・糖尿病などの生活習慣病を改善することが進行の予防になります。
健康診断などで中性脂肪の高値や血圧や血糖値の異常を指摘されたら、すみやかに一般内科を受診しましょう。
糖尿病
糖尿病とはインスリンというホルモンの作用不足により、高血糖が続く病気です。発症の原因は遺伝や環境が関わっています。
治療は食事療法と運動療法が基本です。食事療法と運動療法で不十分な場合は薬物療法を併用します。
健康診断などで高血糖やHbA1cの高値を指摘されたり、体重減少・口渇・倦怠感などの症状がある場合はすみやかに一般内科を受診しましょう。
脳梗塞
脳梗塞とは脳の血管が詰まり、脳に障害が起こる病気です。
脂質異常症や糖尿病などの生活習慣病や喫煙により動脈硬化が進行することで発症します。
予防は脂質異常症や糖尿病などの生活習慣病の改善・禁煙などです。
顔のゆがみ・言葉がでてこない・半身に力が入らないなどの症状が現れた場合は救急要請をしましょう。
健康診断などで脂質異常症などの生活習慣病を指摘されたら早めに治療をし、予防をすることが大切です。
心筋梗塞
心筋梗塞とは心筋の細胞の壊死が起こる病気です。主な原因は動脈硬化により血管が閉塞し、心臓に血液や栄養が届かなくなり起こります。
予防は禁煙、脂質異常症・糖尿病・高血圧などの生活習慣病の改善です。
激しい胸痛が続き、心筋梗塞を疑う症状があれば救急要請をしましょう。
健康診断などで脂質異常症などの生活習慣病を指摘されたら早めに一般内科を受診しましょう。

