
「ああ、今日はいいお話を読んだなあ」「15分くらいの深夜ドラマで見てみたい」と、読者から多くの反響が集まった作品がある。郵便配達員が実際に体験した実話をもとに描かれた漫画「山に棲む」だ。読者からは「人生最期のお見送りのお手伝いを仕事にしていますが、平凡と思う生き方のなかにも等しく“生きる重み”があることを教えられる毎日です。このお話からも、同じものを感じます」という声も寄せられている。一体どのような物語なのだろうか。



■「踏み外せば谷底」山深い集落への配達と謎の少女
「踏み外せば谷底」という山深い細い道でも、その先に民家がある限り配達をしなければいけないのが郵便配達員だ。今回はバイクも入れないような場所の担当になったN局の配達員・アラタさんが、配達先で見た不思議な“モノ(!?)”の体験談である。
都会育ちのアラタさんが郵便配達員になりたてのころ。教育係の江藤さんに連れられ、「一般車両進入禁止」となっている道の先にある集落へ配達に向かった。「こっからは歩きだ。上まで杖をついていく」と江藤さんから指示が出る。若いアラタさんが杖を断ると「足腰じゃねえよ!蛇追っ払うんだよ!誰がジジイよ!東京もんは何も知らねえ」と怒鳴られ、「すみません」と謝るアラタさん。その道中で、アラタさんは着物姿でおかっぱ頭の女の子を目撃するのだが…!?その後、江藤さんに緊急事態が発生し、事態は思わぬ方向へ転がっていく。
■恐怖の奥にある“愛”の物語と作品への思い
本作の作者であり、現役郵便局員の送達ねこ(@jinjanosandou)さんに話を聞いた。
主人公のアラタさんは大人しい青年だが、最初は教育係の江藤さんに怖がられている。この点について送達ねこさんは「1言で『怖い』といってもいろいろありますが、1つに『“わからない”ものへの感情もあるのでは?』と思います」と語る。人は身を護るために情報収集し、わからないことがあると恐怖を感じるという。「別に霊じゃなく対人でも『よくわからない人だから怖い』とかあると思うんですね。単に『わからない』からだったりするのではないでしょうか」と推測する。
また、未知に出会う意味は、その人にとって「足りない必要なもの」であることが絶妙にあると語る。「避けて冷たくした『わからない相手』を、あるきっかけでわかろうとするうちに、本当は相手を必要とし惹かれていたと気づいたりする。相手を理解しようとすることは愛の本質にとても近い行為だと思います。だから『怖い話』は案外『愛の物語』になったりすると思います」と、作品に込めた思いを明かしてくれた。本作には「昭和の田舎の怪談」も盛り込まれており、親から子へ語り継がれる怪談としても楽しめる。
「郵便屋が集めた奇談」は、同僚の配達員たちが体験した不思議な話を描いたシリーズだ。余談だが、今回のエピソードでは「江藤さんの絵が強すぎて全く話が入ってこないので3回読み返しました(笑)」という読者からのツッコミも寄せられている。本作を読む際は、このコメントを思い出しながら楽しんでほしい。
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