小脳は身体のバランスや運動の調整を担う器官であり、平衡感覚とも深く関わっています。そのため、小脳に血液が届かなくなる「小脳梗塞」では、回転性めまいが代表的な症状として現れます。ここでは、めまいが生じるしくみと、耳の病気によるめまいとの違いについて解説します。内耳性のめまいと区別するためのポイントも、あわせて確認していきましょう。

監修医師:
田頭 秀悟(たがしゅうオンラインクリニック)
鳥取大学医学部卒業。「たがしゅうオンラインクリニック」院長 。脳神経内科(認知症、パーキンソン病、ALSなどの神経難病)領域を専門としている。また、問診によって東洋医学的な病態を推察し、患者の状態に合わせた漢方薬をオンライン診療で選択する治療法も得意としている。日本神経学会神経内科専門医、日本東洋医学会専門医。
小脳梗塞と回転性めまいの関係:なぜめまいが起きるのか
小脳梗塞における症状のなかでも、回転性めまいはとりわけ注目すべきサインのひとつです。このセクションでは、小脳梗塞がなぜ回転性めまいを引き起こすのか、そのメカニズムから理解していきます。
小脳の役割とめまいが発生するしくみ
小脳は脳の後ろ下部に位置し、身体のバランスや運動の調整を担っている器官です。歩いたり、ものをつかんだり、姿勢を保ったりするときに、小脳は全身からの情報を受け取り、動きを滑らかにコントロールしています。また、眼球の動きや平衡感覚(バランス感覚)とも深く関わっており、この点が「めまい」と切り離せない理由のひとつです。
小脳梗塞とは、小脳に血液を送る血管が詰まり、その先の神経組織に血流が届かなくなる状態を指します。血流が途絶えると、神経細胞は短時間のうちに機能を失い、ダメージを受け始めます。小脳がバランス調整の役割を果たせなくなると、身体は正しい平衡感覚を保てなくなり、結果として「ぐるぐる回る」「揺れている」といった回転性めまいが生じます。
この回転性めまいは、耳の内部の病気(内耳性めまい)でも見られる症状であるため、初期段階では鑑別(区別)がむずかしい場合があります。しかし、小脳梗塞によるめまいは、単なる内耳の異常とは異なる特徴を持つことがあります。
内耳性めまいと小脳梗塞によるめまいの違い
めまいには大きく分けて「末梢性めまい(まっしょうせいめまい)」と「中枢性めまい(ちゅうすうせいめまい)」の2種類があります。末梢性めまいは耳(内耳)の問題から生じるものであり、良性発作性頭位めまい症(BPPV)やメニエール病などが代表例です。一方、中枢性めまいは脳や脊髄など中枢神経系の異常によるもので、小脳梗塞はこちらに分類されます。
小脳梗塞によるめまいの特徴として、次の5点が挙げられます。
・めまいが突然かつ強く現れ、改善しにくい
・頭の位置を変えてもめまいが軽減しない
・歩行時にふらつきが強く、まっすぐ歩けない
・吐き気や嘔吐(おうと)を伴う場合がある
・めまい以外に、ろれつが回らない・物が二重に見えるなどの症状が同時に起きる
これらの症状がひとつでも重なる場合、内耳の問題ではなく小脳梗塞の可能性を考える必要があります。特に「めまい+ろれつの乱れ」や「めまい+一側の手足の動かしにくさ」といった組み合わせは、脳血管疾患のサインである可能性があるため、速やかな受診が求められます。
めまいは日常的によく見られる症状で、その多くは良性疾患によるものだからこそ、軽く考えてしまいがちです。しかし、その背後に小脳梗塞が隠れている場合、早期対応が予後(その後の経過)を大きく左右します。いつもと違う性質のめまいを感じたときは、自己判断せず医療機関を受診することが大切です。
まとめ
小脳梗塞は、回転性めまいやふらつき、ろれつの乱れなどを伴う脳血管疾患です。前兆を見逃さないことと、発症後の迅速な対応が予後を大きく左右します。高血圧や糖尿病などのリスク因子を持つ方は、日頃から定期的な受診を心がけ、気になる症状が現れたときはためらわず医療機関を受診してください。本記事で紹介した知識が、皆さんの健康を守るための第一歩となれば幸いです。
参考文献
厚生労働省 e-ヘルスネット「脳血管障害・脳卒中」
日本脳卒中学会「脳卒中治療ガイドライン2021(改訂2025)」
- 「小脳梗塞」を発症するとどんな「後遺症」が残るかご存知ですか?医師が解説!
──────────── - 「小脳梗塞の症状」はご存知ですか?原因やリハビリ法も医師が徹底解説!
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