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〈筑豊びと〉遠賀川流域で、「アート」と「地域」を考える。彫刻家・母里聖徳さん。

〈筑豊びと〉遠賀川流域で、「アート」と「地域」を考える。彫刻家・母里聖徳さん。

複合施設「あいれふ」1階に飾られているドラムマン

彫刻家・母里聖徳ぼり きよのりさん。
80年代には北九州で名だたる作家といっしょに展示をし、福岡市の警固公園や複合公共施設「あいれふ」に、赤いドラム缶でできた人型の作品を設置した人物です。
そんな新進気鋭な母里さんは、25年間も、制作をやめていました。
制作をしない間も、北九州~筑豊のアート活動に継続的に関わり続け、今年は北九州市立美術館での展示も行われました。
母里さんの活動は益々の展開を予感させています。
これまで、どのような道のりを歩んできた方なのでしょう。

 

sleepy cafe nico

母里さんのいつもの制作場所は、嘉麻アルプスにあるキャンプ場、sleepy cafe nicoスリーピーカフェ ニコ。
宿泊できる絶景のカフェとして人気のスポットです。
母里さんは近くの小屋で制作しています。

 

制作場の様子

つくっているのは、鉄の作品。
使われなくなった鉄の部材を組み合わせてつくっています。

 

nicoに展示されている作品

母里さんを訪ねると、いつもロマンを語ってくださいます。

母里…熱で曲がったものにひかれるようになったのは、桃山陶ももやまとうの織部焼おりべやきとかにすごくひかれていたから。
鉄のなかにも錆とか、自然のあるがままのかたちがある。わびさびのようなものを、鉄のなかに感じている。

*桃山陶…豊臣秀吉が政権を握ったころ、茶の湯などに使われた陶器のこと

 

「国際鉄鋼彫刻シンポジウム-YAHATA’87」(1987年)で制作された作品 PHOTO/K.NAKAJIMA

北九州で鉄をしているときは、そういうふうなところまでは考えてなかった。あの頃は、偶然思いついた企画が、信じられないような奇跡の積み重ねで、大規模な街をつかった展覧会ができた。
ぼくがこういうふうになっていくのは、それがきっかけ。
夢みたいなことが実現する体験をすると、それが忘れられんのよね。絶対むりって思いながらも、そういうことを求めてしまう。
二度とできないって言われてたけど、それ以上に大規模なことができてしまった。ありえないくらい偶然が重なってね。
実際やりたいことが実現したら、見えてこないものも見えてきた。文明の技術力とか、文明の力は、同時に原発などもつくってきた。
そうでないものを、つくりたいなと。

*大規模な展覧会…母里は1987年と1993年に北九州市で開催された国際鉄鋼シンポジウムに参加した。

 

英彦山で展示された作品

ちょうど「コールマイン田川」が終わったころに、高取焼という焼き物のことを知って。いちばん興味があった桃山陶の古田織部ふるた おりべの焼き物が、直方で焼かれたということをはじめて知った
それまで、岐阜の方だろうと思っていたのが、まさか直方で。青天の霹靂でした。

しかも窯をつくった場所には、僕の先祖の、母里太兵衛ぼり たへいがいた

*コールマイン田川…現代美術家・川俣正が1996年から田川市で実施した10年間にわたるアートプロジェクト。ワークイン・プログレスとして制作過程を重視する活動をおこなった。
*古田織部…安土桃山時代から江戸時代初期の武将で茶人。陶工たちを指導して歪んだ形や破調を意図的に取り入れた茶器を創出した。
*直方市の高取焼…髙取焼は、慶長5(1600)年に直方市にある鷹取山の麓に永満寺窯を築かせたのが始まり。黒田家の御用窯として発展した。その後、県内各地へ移窯、増窯を経て、現在は朝倉郡東峰村や福岡市早良区高取などで継承されている。
*直方の古田織部の焼き物…近年の調査により、直方市の内ヶ磯(うちがそ)窯では、古田織部の好みを反映した焼き物が生産されていた可能性が指摘されている。
*母里太兵衛…安土桃山時代から江戸時代初期にかけての黒田家の家臣。民謡「黒田節」のモデルとしても知られる。

 

nicoに展示されている作品

わびさびは茶の湯からじゃなくて、能の世阿弥ぜあみ、さらにさかのぼると禅宗に思想がある。でも禅宗を学んだ中国にはそういう考えはない
日本にもとからあった自然観やシャーマニズム的なものと融合し、独自の日本文化として出てきた。
それより前には、仏教が日本のなかで独特な展開をとげている。もともと、八百万の神様のような考え方があって、それが仏教や禅宗と合わさって、室町時代の東山文化ひがしやまぶんかができた。
ぼくはあんまり勉強できないから、ちゃんと言えないけど、そのあたりで生み出されたものに興味がある。

*世阿弥…室町時代初期の能楽師。『花鏡』で、「凍み氷りて、静かに美しく出で来たるままに能をすれば、番数重なる時、能の気色沈む相あり。それを心得て、少し能に心を入て、面白きかどを少少と見せて、見物者の心を引き驚かして、風体を詰め開くべし」と述べ、静的な美しさにとどまらず、観客の心を引く工夫とその見せ方の重要性を説いている。わびさびは後の時代に茶の湯で体系化された美意識であり直接の関係はないが、見えない部分や表に現れない価値を重んじる点に共通性が指摘されることもある。
*禅宗… 鎌倉〜室町期に広まった仏教の一派。簡素・内省・無などを重視する。
*中国におけるわびさび…わびさびの概念は、中国の宋王朝(960〜1279年)の時代に道教から生まれ、禅仏教に取り込まれた。そもそもは、禁欲的かつ控えめに美を愛でる方法として捉えられていた。
*東山文化…室町時代中期の文化。足利義政による東山山荘は、そのシンボル的存在であり、山荘は現在銀閣寺として知られている。能楽や、いけばな、茶の湯(茶道)、水墨画、そしてお香(香道)などの伝統的日本文化として知られるものの多くは、この時代に発展した。

 

nicoの近くにある母里さんの作品保管庫の様子

なぜ日本がそうなの?ということを、もっと根本的に言えるとおもしろいかなって。
日本列島でつくられたものって基本的には、銅鏡どうきょうとか、勾玉まがたま、土偶どぐう、はにわにしても、「工芸品」となっている。ファインアートと呼ばれる流れにそうものは「美術品」で、そうでないと「工芸品」と呼ばれるニュアンスを感じる。
そこを、そうじゃないよと。
日本でつくられた工芸的なものは、より美術的じゃないかって言いたいんですよね。

これまでの語り方との対立構造ではなくて、お互いを認めたうえで、新しい位置づけをできないかなと。この特色のある地域で、そういうことをしたいんだよって。

*ファインアート…実用性を目的としない純粋芸術のこと

 

nicoの室内にも作品が展示されています

インタビューを通じて見えてきたのは、母里さんの夢の壮大さでした。
母里さんのお話は、まだまだ続きます。
続きは近日中に公開予定です!お楽しみに!

 

Shop Information
sleepy cafe nicoスリーピーカフェ ニコ
〒820-0322 福岡県嘉麻市屏1658-2
TEL.0948-52-6303
営業時間/カフェ|金・土・日曜日 12:00〜17:00(LO 16:00)
キャンプは営業日が異なります。
駐車場/あり
Instagram/@sleepy.cafe.nico_mirei

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