
岡田将生が主演を務める金曜ドラマ「田鎖ブラザーズ」(毎週金曜夜10:00-10:54、TBS系)が、いよいよ6月19日(金)放送の第10話で最終回を迎える。最終回の放送に先がけて、本作を手掛ける新井順子プロデューサーにインタビューを敢行。撮影の舞台裏や作品に込めた思い、そして最終回の見どころなどについて語ってもらった。
■両親殺害事件の真犯人を追うクライムサスペンス
本作は、2010年4月27日に殺人罪などの公訴時効が廃止されたにもかかわらず、わずか2日の差で両親殺害事件の時効を迎えた兄弟が、法ではもう裁けない犯人を自分たちの手で裁くべく警察官となり、事件の真相を追い続ける完全オリジナルのクライムサスペンス。
物語の主人公となるのは、事件の真相を追うため刑事となった兄・田鎖真(岡田将生)と、彼の弟で検視官となった田鎖稔(染谷将太)の“田鎖ブラザーズ”。大きな十字架を背負い警察官となった2人は、日々発生する凶悪事件と併行し、31年前の両親殺害事件の真犯人を追っていく。
本作を手掛けるのは、映画「ラストマイル」(2024年)やドラマ「アンナチュラル」(2018年)、「MIU404」(2020年)、「最愛」(2021年)などで知られ、クライムサスペンスの名手としてドラマファンから熱く支持される新井順子プロデューサー。主演の岡田とは、「ラストマイル」以来2度目のタッグとなる。
■一際強く印象に残った兄弟ともっちゃんの“銭湯シーン”
――ここまで視聴者の皆さんの反応をご覧になっていて、感想はいかがでしょうか。
第7話までは、起きた事件を捜査する中でのそれぞれの反応や、縦軸の(田鎖兄弟の両親が殺害された事件の)謎がちょっとずつ明らかになっていく過程が描かれてきましたが、8話からは物語が一気に進んでいきました。なので、私が一番気になっているのは第8~9話を受けての皆さんの感想なのですが、(※取材時点では)そこがまったくわからないので「皆さんどういう反応なんだろう」と思っています。
もっちゃん(茂木幸輝/演:山中崇)について「犯人ではいないでほしい」「味方であってほしい」という声が多く上がっていますね。そういったキャラクターにできたのは、山中さんのお力があってこそ。
そして、兄弟役のお二人と実際でも仲が良かったこともあって、お三方でいつもおしゃべりされていたその空気感が映像にも表れて、本当に親密に見えるんです。そうした撮影現場での関係性と、役者の皆さんのお芝居が相まって、もっちゃんが愛されるキャラクターになったのかなと思います。
山中さんは不器用ながらも一生懸命生きる人柄や親しみやすさを自然に表現してくださる方。人の良さゆえに事件に巻き込まれていくもっちゃんという役にもぴったりだと思い、お願いしました。

――岸谷五朗さん演じる小池俊太にも、茂木と同様に「犯人ではないでほしい」という声が上がっていますよね。「『流星の絆』(2008年、TBS系)を思い出す」という声も見られますが、そうした反響はご覧になっていましたか?
「流星の絆」は3兄弟で事件を追い、ポップな演出もあったので、まさか声が上がるとは思っていませんでした。もちろん、殺された親の犯人を捜すというのは王道ですし、兄弟で犯人を追うという物語もこれまでにあったと思います。ただ、同じ金曜ドラマ枠ということもあるのかもしれませんね。
第1話放送後のSNSの反響を見て、「『流星の絆』と近いんだ」と気づきました。確かに設定の入り口には共通する部分もあるかもしれませんが、その後の展開や物語が向かう先は本作ならではのものになっていると思います。
――ドラマ後半の展開は田鎖兄弟にとって非常に辛い展開となっていきましたが、そうしたシーンにおいての岡田将生さんと染谷将太さんのお芝居を間近でご覧になっていていかがでしたか。撮影現場の様子なども含めてお聞かせください。
特に8~9話は、せりふだけではなくて雰囲気の芝居という意味でも、いいシーンが多かったなという印象です。特に8話の真と稔がもっちゃんと一緒に銭湯へ行くシーンや、9話の稔が真に「どうしても、もっちゃんを憎めない」ともっちゃんに対する思いを語るシーンですね。7話で稔が真に「秦野小夜子は敵だよ?」と告げるシーンも印象的でした。
あとは、マンションでの兄弟のやり取りが、お二人の関係性というか信頼感が表れていていいシーンだなと思うことが多かったです。お二人ともお芝居が絶妙なので、派手なシーンはそんなにないですが、印象に残るシーンは多かったなと思います。

■強烈なインパクトを残した小夜子に隠された“裏設定”
――先ほどお話にも上がりましたが、6~7話で登場した渡辺真起子さん演じる小夜子が非常に印象に残りました。犯罪被害に遭った人間に一線を越えさせようとするその言動が実に恐ろしい一方で、最後までその動機が具体的には描かれていなかったのが気になりました。小夜子がなぜああいった行動に及んでいたのかなど、裏設定がありましたら教えてください。
「あんまり言うのもな」って感じなんですが(笑)、小夜子には結構裏設定があるんです。まず、小夜子は市役所へ相談に訪れた全員をそういう風に誘導してるわけではなくて。自分の思いに蓋をしている人とか、迷ってる人とか、心残りがあるような人の背中を、「自分の気持ちに素直になっていいんじゃない?」とちょっと押してあげるくらいの感じなんです。
実は(劇中で)表には出していないんですが、小夜子自身も昔大切な人を亡くしていたという設定があるんです。自分の(大切な人を失いながらも)生きてきた経験から、他人に寄り添いすぎて思いを共にしちゃうというか。
もちろん、本や新聞を薦めても、はっきりと(復讐を)指南しているわけではないのですが、(思いを抱えた人の心に)いきなりスッと入っちゃう時がある。小夜子の闇も深いですね。
――自分が寄り添った結果として、相手がどういう反応や行動を示すかを楽しんでいる、というわけでもないんですね。
楽しんでいるという感じではないです。もちろん殺人は悪いことだと分かっているのですが、「なぜ被害者の方ばかりがいつもメディア等に晒されて、その一方で加害者は守られるんだ」というか、「なぜ被害者ばかりがこんな辛い目に遭うのか」、みたいな憤りを感じている人なんです。
でもやっぱり、大多数の人は「復讐」をしないし、それは許されない。(それでも被害者や遺族としては)「なぜそれが許されないだろう。こんなに辛いのに…」みたいな(思いを抱えている)。そのことを深く理解していて。
そしてその思いを「間違っている」と言いたくない。間違ってはいないですけど、その“境界線”を超えない人が多い。一部の人にちょっと寄り添ってポンと背中を押すと、その人が“そっち”に行ってしまう。でも、それならそれでいいのではないか、という感じです。

■それぞれの事件をめぐる描写に込められた思い
――1話でひき逃げに遭い死亡した牧村こと大河内や、6話で交通事故を装い殺害された綾香など、元々加害者側であった彼らが「私刑」により殺されるという展開がいくつか描かれましたが、その描写からは「加害者側が前に進むことは許されないのか」というテーマにも踏み込んでいるような印象を受けました。作品としてそうした部分に込めた思いなどがあればお聞かせください。
「加害者が前に進むことが許されない」というつもりで作っていたわけではもちろんないのですが、やっぱり理不尽なことが多い世の中で、その憤りをどうぶつけたらいいかというのが一つのテーマとなっていました。
6話の綾香は、普通に運転してただけなのに事故を起こしてしまった人物で。本来なら突然飛び出してきた人が悪いはずなのに、(死なせてしまったという事実の前では)100%車が悪いじゃないですか?
この前、車が走っていたら、キックボードに乗っていた男の子が道路に飛び出してきて、腹ばいになった男の子を車が轢いちゃったという事件もあったんですが、それって予期できないじゃないですか。突然出てくるなんて思わないところだけど、それでも普通に運転していただけで犯罪者になっちゃう。「これで犯罪者なんだろうか?」みたいな思いがあって。
なので、加害者/被害者がどうというよりは、例えばですが、このドラマを見た時にちょっとでも「道路は信号のあるところで渡ろう」と思う人がいればいいかなというか(笑)。そうした些細がきっかけになればいいかなという感じでした。
生きづらい思いを抱えた人がたくさんいる中で、各話、苦味のあるエンディングになったなと思います。「スッキリしないな」と感じた人も多かったのではないでしょうか。

■シリアスな物語ながらも「とにかく現場は平和につきました(笑)」
――各キャストの皆さんのインタビューを拝見していると、特に強行犯係の皆さんは暗い展開が続く中でも非常に明るく撮影に臨まれていた様子が語られていました。新井さんがご覧になっていて印象的だったやり取りや出来事などがありましたら教えてください。
テーマが重い作品でしたが、特に中条あやみさんや井川遥さんなど、女性陣がいる時の現場はすごく明るかったですね。兄弟が重苦しいシーンを撮っていても、現場は静かなりに平和な空気が流れていました。岡田さんや染谷さんも演じている役の気持ちになると辛いんですが、そんな素振りはあまり見せずに。現場で動物のまねをしていたり、みんな仲が良かったですね。
それと、結構ケータリングが多かったので、皆さんご飯を楽しみにされていました。あとは、舞台が春の設定だったんですが冬場に撮影をしていたので、キャスト陣にとっては寒すぎたんじゃないかなと思います。(防寒アイテムを)中に仕込むしかなくて大変そうでした。
――ドラマの公式Instagramでも、岡田さんや染谷さんの防寒対策の写真が公開され話題になっていました。
首にタオルを巻いたり、カイロを付けたりしていましたね。とにかく現場は平和につきました(笑)。
――最終回まで作品を作る中で、新井さんたち制作陣が“最後までぶらさずに描きたかったこと”は何でしょうか。山本剛義監督は「“兄弟の空気感”を大切にしていた」とお話しされていましたが、新井さんご自身が特に大切にしていたことを教えてください。
兄弟に関わる“愛”。愛すればこそという感覚ですね。愛というものでくるまれた世界観というのを大切にしていました。
――最後に、最終回に向けて視聴者の皆さんに見どころを含めてメッセージをお願いします。
毎回同じことになってしまうんですが、田鎖兄弟がどういうラストを迎えるか、何を選ぶのかというところを、最後まで見届けていただけたらと思います。最後まで見ていただくと、皆さんの中でいろいろと思うところがあると思いますが、あとは「楽しんでください」ということしかないです。


