IgA腎症は、発症してもしばらくの間は自覚症状がほとんど現れないことが多い疾患です。「沈黙の臓器」とも呼ばれる腎臓の特性上、機能が低下しても自分では気づきにくい場合があります。健康診断での尿検査が早期発見のきっかけになることも少なくありません。どのようなサインに注目すればよいのかを解説します。

監修医師:
田中 茂(医師)
専門は内科学・腎臓内科・血液透析・腹膜透析・臨床疫学・生物統計学
IgA腎症の初期症状②|進行とともに現れるサインと注意すべきポイント
初期の段階では症状が乏しいIgA腎症ですが、病状が少しずつ進行するにつれて、身体にさまざまなサインが現れることがあります。このセクションでは、初期から中期にかけて見られる症状の変化と、見逃してはいけないポイントについて説明します。
むくみや高血圧が現れ始める段階
IgA腎症が進行すると、腎臓がたんぱく質を保持する力が弱まり、尿中にたんぱく質が漏れ出すようになります。その結果、血液中のたんぱく質(アルブミン)が減少し、身体のさまざまな部位にむくみが生じるようになります。特に朝起きたときの顔のむくみや、夕方になると足首あたりがむくむといった変化に気づく方が多いです。
また、腎臓には血圧を調整する機能があります。腎機能が低下してくると、この調整がうまく働かなくなり、血圧が上昇しやすくなります。高血圧はさらに腎臓への負担を増やすため、腎機能の低下と高血圧が悪循環を引き起こすことがあります。このため、血圧管理はIgA腎症の治療においてとても重要な位置を占めています。
むくみや高血圧は単独で見ると他の原因によることも多く、IgA腎症との関連に気づきにくい場合があります。しかし、尿検査の異常と組み合わさったとき、腎臓疾患の可能性を強く示唆するサインになります。日頃から自分の身体の変化に気を配ることが大切です。
腎機能低下のサインと慢性腎臓病への移行リスク
IgA腎症が長期間にわたって治療されずに放置されると、腎臓の機能が徐々に低下していく可能性があります。腎機能の指標としてよく使われるのが、「クレアチニン」と呼ばれる血液中の老廃物の濃度や、そこから算出される「eGFR(推算糸球体濾過量)」という値です。eGFRが低いほど、腎臓が血液をろ過する力が弱まっていることを意味します。
腎機能が低下すると、身体に老廃物が溜まりやすくなり、疲れやすさ、食欲の低下、吐き気といった症状が出ることがあります。さらに進行すると透析(とうせき)が必要になることもあり、日常生活への影響は大きくなります。IgA腎症は慢性腎臓病(CKD)の一因として知られており、長期的な管理が欠かせません。
ただし、IgA腎症のすべての方が重篤な状態に進むわけではなく、適切な治療と生活管理によって腎機能を長期間にわたって維持できる方も多くいます。予後(よご)は個人差が大きく、定期的な通院と検査によって状態を把握しながら治療方針を調整していくことが基本的なアプローチです。
日常生活で気をつけたいセルフチェックのポイント
IgA腎症の方が日常生活で注意したい自覚症状として、以下のような点が挙げられます。
・尿の色が赤みを帯びていないか(特にかぜのとき)
・尿の泡立ちがいつもより多くないか
・顔や手足のむくみが気になる日が続いていないか
・血圧が以前より高くなっていないか
・疲れやすさや食欲の変化を感じていないか
これらは単独では他の原因が考えられることもありますが、複数の変化が重なる場合や、すでにIgA腎症と診断されている場合は、受診を早める判断材料になります。定期検診と並行して、日常的なセルフチェックの習慣を取り入れることで、病状の変化にいち早く気づくことができます。
まとめ
IgA腎症は、初期の段階では自覚症状がほとんどなく、健康診断で初めて発見されることが多い疾患です。免疫の異常によって腎臓の糸球体に炎症が生じ、放置すると腎機能が低下するリスクがありますが、早期に発見して適切な治療を続けることで、腎機能を長期間にわたって維持できる可能性があります。治療費については保険診療の範囲内で対応できることが多く、指定難病制度や高額療養費制度などの支援を活用することで、経済的な負担を軽減できます。気になる症状や尿検査の異常がある場合は、まず腎臓内科への受診を検討してみてください。一人で悩まず、専門の医師に相談することが、早期発見・早期対応への確かな一歩です。
参考文献
難病情報センター「IgA腎症(指定難病66)」
日本腎臓学会「IgA 腎症診療ガイドライン 2020」
日本腎臓学会「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023」
- 「IgA腎症」を発症すると現れる症状・原因はご存知ですか?医師が監修!
──────────── - 「健康診断で腎機能障害を指摘」その後にやるべきことを知っていますか? 沈黙の臓器“腎臓”の機能について
──────────── - 「尿検査の基準値」って?結果の見方と異常値で考えられる病気を解説【医師監修】
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