人体の中で最も強く、そして太い腱であるアキレス腱ですが、酷使する部分であるため頻繁に炎症が起きやすいです。
どのような人がアキレス腱炎になりやすいのでしょうか。また、アキレス腱炎を起こさないためにも日頃からできる予防はあるのでしょうか。
ここではアキレス腱炎の治療方法などを解説します。誰でも起こりうる病気なので、ぜひ参考にしてみてください。
※この記事はメディカルドックにて『「アキレス腱炎」は知らない間に発症?原因やなりやすい人など医師が監修!』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。

監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)
大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。
アキレス腱炎の治療

アキレス腱炎で受診する目安を教えてください。
痛みが続いたり悪化したりする・炎症部分の熱がなかなか引かない・腫れが引かない場合は速やかに病院へ受診しましょう。病院は整形外科へ受診してください。アキレス腱炎はアキレス腱に大きな負荷を与えることで現れる炎症であるため、安静にする対応からとります。
同時にアイシングや湿布などの痛みを和らげる対処もとると良いです。もちろん早めに病院へ受診するのも1つです。病院へも行かず痛みを我慢し続けて無理に足を動かすことこそ、アキレス腱炎を悪化させる原因になります。
日常生活に支障をきたす動作が痛みによって制限されれば、生活の質も悪くなります。痛みを我慢し続けるなら、病院へ行き適切な治療を受けることが最善です。
診断は痛みのでている部位を医師が押し、痛みの有無を確認します。画像診断ではMRIや超音波画像診断にて痛み・腫れの所見を確認します。
どのような治療を行いますか?
アキレス腱炎は保存療法になるため、安静・炎症を抑える成分の入った湿布を含む外用剤・鎮痛剤・アイシングを行います。中には鎮痛剤や注射を打ちながらでも無理をしてスポーツをするケースもあります。根本的に解決しているわけではないため、スポーツを中止することが大切です。
無理をしても良いものではありません。痛みが引いたら、次は血行促進を目的とした温熱療法に切り替えます。
この時点でもアキレス腱に負荷のかかることはしてはいけません。中には重症化してしまうケースもあり、その際には難治性アキレス腱炎を発症している可能性が高いです。
難治性アキレス腱炎になれば、上記でご説明した保存療法では改善しません。そこで有用的な治療法が運動器カテーテル治療です。
難治性アキレス腱炎は新たに作られた血管(新生血管)と神経が一緒に増えて痛みを出現させていることがわかりました。その痛みの原因となる新生血管にカテーテルを通し塞栓させます。
どのくらいで完治するのでしょうか?
アキレス腱炎の治療期間は個人差や重症度によって異なります。軽症のものであれば、目安として2週間程度です。重症のものは予測ができず、発症から2週間以上経ってもまだ緩和しない方もいます。しかし早く治癒したいと思うなら、医師の指示どおりにすることが1番です。
そして、安静にすることも早く治癒するためには欠かせません。それでもなかなか改善しない場合はアプローチの仕方に誤りがある、もしくは他の病気(アキレス腱断裂・かかとの骨折など)の可能性も否定はできません。
その場合は再度病院へ受診し、しっかり検査をしてもらうようにしましょう。
アキレス腱が痛むときのセルフチェック法を教えてください。
ご自身でアキレス腱炎かどうか確認したい場合、以下のような痛みがあるかどうか確認してみてください。かかとのあたりやふくらはぎが痛い
背伸びした時にアキレス腱に痛みを感じた
椅子から立ち上がった時にかかとに痛みを感じた
動く時に痛みを感じる
これらどれかに当てはまる場合、アキレス腱炎の可能性が考えられるでしょう。
しかし、中にはアキレス腱炎と似たアキレス周囲炎やアキレス腱断裂も考えられます。あくまでも目安として、疑わしいと感じたらすぐ整形外科へ受診しましょう。
編集部まとめ

たかが痛みと放置しているアキレス腱炎は治りづらくなるだけではなく、日常生活に支障をきたしてしまう傾向にあります。
特にスポーツはアキレス腱に負荷をかけないほうが難しいため、痛みがなかなか引かないケースもあるでしょう。
しかし、アキレス腱炎は予防で防げるため、入念なストレッチ・症状がある際には無理をしない・靴を見直すことなどを徹底してみてください。
そして、違和感を覚えるなら自己流ではなく、医師の指示の元でしっかり治療を行うようにしましょう。

