
最新主演作の『免許返納!?』では、スターでありながら悪口を言いまくり、周囲を振り回す人間味あふれるチャーミングな主人公・南条弘を演じている。
インタビューでは、撮影秘話や演じた役柄について、『あぶない刑事』からヒントを得たシーン、さらにお気に入りの映画などを語ってくれた。
■自身のコミカルな部分を増幅して挑んだ役柄「“恭サマ”のエッセンスをふんだんに散りばめている」
――本作の台本を読まれたあと、舘さんのアイデアでコミカルな要素を足されたとうかがいました。
【舘ひろし】物語自体はしっかりと練られた台本だったのですが、もう少しコミカルな要素を付け加えたほうがもっとおもしろくなると思ったので、そういったアイデアを出させてもらいました。
――具体的にはどのようなシーンだったのでしょうか?
【舘ひろし】僕が演じる南条弘が、宇崎竜童さん演じる南条のライバル俳優・尾崎に怒って、古希のお祝いに着る紫のちゃんちゃんこを蹴ろうとして転んだあと、西野七瀬さん演じる川奈(南条弘のマネージャー)が「空振り?」っていうシーンはアドリブです。南条の持つユーモアのセンスは、僕自身が恭サマ(柴田恭兵)から影響を受けて蓄積したものが、自然とお芝居に出ている、そういう感覚でしたね。

――南条とご自身の共通点はありますか?
【舘ひろし】いつも役作りをするときに、自分自身のコミカルな部分やワイルドな部分、ハードボイルドな部分やハートフルな部分など役柄に合わせたところを引き出して演じているんです。今回の南条は、自分の中のコミカルな部分を増幅していますし、『あぶない刑事』の鷹山だったらハードボイルドの部分や暴力的な部分を誇張して演じていました。なので、どんな役柄も自分との共通点があるのではないかなと、そんな風に思います。
――前作『免許がない!』から約30年ぶり再び南条弘を演じることになりましたが、あらためて南条という役は舘さんにとってどのような存在ですか?
【舘ひろし】僕の中では“南条=柴田恭兵”で、先ほどもお話ししたように、恭サマのユーモアのセンスやエッセンスをふんだんに散りばめている役なんです。だから南条を演じるときは、“恭サマだったらこのシーンはどう動くだろう?”とか“このシーンではどんな言葉を発するだろうか?”と、常に頭の中に彼を思い浮かべている。そういう意味でも、とても大切な存在ですね。

――確かに南条のチャーミングさやコミカルな部分は、『あぶない刑事』のユージに通じるものがありますね。
【舘ひろし】台本には、あるシーンで南条が車に貼る高齢者マークを剥がして投げると書かれていたのですが、ここはきっと恭サマだったら投げた高齢者マークが近くにいたパトカーに張りついてしまう(くっついてしまう)と思ったので、そこを少し変えました。何気ないシーンですが、あぶ刑事(『あぶない刑事』)ファンの方々には喜んでいただけるのではないかなと思います。
――舘さんは撮影で運転するシーンもありますし、まだ免許返納は考えていらっしゃらないですか?
【舘ひろし】今年で76歳になったのですが、今のところはまだ考えていないです。ただ、少しでも運転することに不安を感じたら、すぐに免許を返納しようと思っています。

――冒頭で、南条がフェラーリについて語る場面がありましたが、舘さんご自身は車に関してどのような思い入れがありますか?
【舘ひろし】僕は英国車が好きで、以前はモーガンというスポーツカーと、ジャガーに乗っていました。今はもう乗っていないのですが、どちらもすごく大事にしていましたね。特にジャガーはV型12気筒エンジン搭載で、6気筒が二つ並んでいるのですが、トゥエルブとは言わずにダブルシックスと呼ぶんですよ。かっこいいでしょ?
――「ジャガーのダブルシックス」という響きのすべてがかっこいいですね!
【舘ひろし】見た目もかっこよくて大好きな車でした。

■自身の経験や心境から生まれたセリフ「どれだけ続けていけるのかという不安も抱えている」
――コミカルな部分以外でアイデアを出されたシーンはありましたか?
【舘ひろし】物語の後半で、南条が暴力団員に追われるシーンがあるのですが、台本上では暴力団員と南条が揉めているのを、川奈はただ見ているだけだったんです。だけど、この場面は川奈と南条の絆というか、信頼関係が見えたほうがもっとおもしろくなるだろうと思ったので、河合勇人監督にシーンを変えたいと提案しました。
そのあと西野さんに「投げ飛ばされたりするけど大丈夫?」と確認したら「やります!」と言ってくれて。その結果、川奈が暴力団員の足にしがみついて止めたあとに、「運転はダメ!やめて〜!」と叫ぶという、すごくエモーショナルないいシーンになりました。

――尾崎の息子・亮を黒川想矢さんが演じていらっしゃいました。黒川さんには先輩としてどのようなアドバイスをされたのでしょうか。
【舘ひろし】僕がアドバイスなんてそんな…逆に彼の芝居はすごく勉強になりました。想矢からは、役を超えた本当の気持ちが伝わってくるので心を動かされるんです。それって俳優にとって1番大切なことで、今の若い俳優に欠けている部分なんじゃないかなと。
セリフを一言一句間違えずに言うとか、監督がOKを出したらそれが正解だと感じる俳優も多いけど、想矢からは芝居に対する熱量を感じるので、そこが彼の魅力だと思います。


――南条の娘が川奈に「俳優って孤独で不安でしょ?」と話す場面が印象的でした。長年俳優としてのキャリアを築いてこられた舘さんにとって、この言葉からどんなことを感じましたか。
【舘ひろし】そのセリフ、実は僕が提案したものなんです。実際に俳優の友人が少ないので孤独を感じることがあるし、今後どれだけ長くこの仕事を続けていけるのかという不安も抱えているので、今の自分と重なる言葉を提案して、それを採用していただきました。
――舘さんが提案された言葉だからこそ、すごく説得力を感じます。
【舘ひろし】不安を抱えながら50年俳優をやっています(笑)。
――話は変わりますが、現在では大型スクリーンを使った撮影も増えてきて、本作にもそういうシーンが登場します。そういった撮影技術の進化について、どんなことを感じていらっしゃいますか?
【舘ひろし】撮影における技術の進化は、僕にとってすごく喜ばしいことです。昔は大きな照明機材を立てて撮影していたので、現場でものすごい存在感を放っていましたし、ガンマイクという大きなマイクで俳優の頭上付近からセリフを拾っていましたから、どうしても芝居が不自然になることも多々ありました。
――機材が大きいと、お芝居中に気になってしまいそうですね。
【舘ひろし】というよりも、たとえば独り言を言うシーンでも、ガンマイクが拾いやすいように少し大きな声でセリフを放たなければいけなかったんです。それってすごく不自然じゃないですか。でも、今はピンマイクをつけて芝居をするので、小さな声で独り言が言える。照明も小さくなったけど光量は変わらないですし、カメラだってそうですよね。デジタルで撮っても素晴らしい画になる。
もちろん『港のひかり』でご一緒したカメラマンの木村大作さんのように、35ミリフィルムで撮った美しい景色もすてきなので、一概に最新の技術だけが素晴らしいわけではないのですが、技術の進化に関しては、どんどん取り入れていってほしいと思っています。

■舘ひろしが影響を受けた映画を語る

――南野陽子さん演じるクラブのママ・しずえが、映画館の思い出を語るシーンが印象的でした。館さんにとっての思い出の映画館エピソードをお聞かせいただけますか。
【舘ひろし】大学受験の浪人時代はよく映画館に足を運んで、あらゆる映画を観ていた記憶があります。あのころは暇だったし、ずっと遊んでいましたから(笑)。場末の映画館で観ることもありましたが、どんな環境でも映画が始まってしまえば、そこからは夢の世界が広がる。今も映画館に行くと、当時と変わらず幸せな感覚になりますね。


――これまでご覧になった作品の中で、最も影響を受けた映画はなんでしょうか。
【舘ひろし】ひとつの作品には絞れませんが、『007』シリーズや『ゴッドファーザー』、『ゲッタウェイ』からは大きな影響を受けています。映画って、普段は絶対に関わらないような人たちの人生をエンターテインメントで見せてくれるじゃないですか。普通に生きていてスパイやマフィアなんて出会わないですから(笑)。
そういった特殊な環境で生きる人たちをクールに、また感動的な物語として描くというのが映画の魅力ですよね。ちなみに『007』は『ロシアより愛を込めて』が一番好きです。
――『あぶない刑事』のタカ(鷹山)のスーツスタイルは、『007』のジェームズ・ボンドと重なります。
【舘ひろし】鷹山の動きやスタイルは、ジェームズ・ボンドと『ゲッタウェイ』のスティーブ・マックイーンを参考にしているんです。きっと鷹山とボンドを重ねて見てくださった方も多いんじゃないかな。
――最後の質問になりますが、最近、刺激を受けた作品を教えていただけますか。
【舘ひろし】最近の作品ではないのですが、『ファントム・スレッド』がすごくよくできていておもしろかったです。気難しいファッションデザイナーの主人公を演じたダニエル・デイ=ルイスさんの芝居もすごくよくて印象に残っています。この作品を最後に俳優を引退すると言われていましたが、息子さんの監督デビュー作で俳優復帰されたそうで、鑑賞するのが楽しみです。

取材・文=奥村百恵
◆スタイリスト:中村抽里
◆ヘアメイク:岩淵賀世
(C)2026「免許返納!?」製作委員会
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