
毎年、日本各地に甚大な被害をもたらす大型台風。暴風雨のなかで多くの人が外出を控えるなか、命がけで街を走り続ける労働者たちがいる。元宅配会社勤務の漫画家・ゆきたこーすけ(@kosukeyukita)さんが描く『運び屋ゆきたの漫画な日常』は、配送業界の知られざる裏舞台をコミカルかつリアルに描き出し、SNS上で高い人気を誇る作品だ。
2026年6月現在も、悪天候時の配送リスクや労働環境への議論が活発に行われるなか、今回は「台風の宅配便」や「強風あるある」のエピソードを紹介。台風の直撃によって孤立したトラックの恐怖や、嵐が去ったあとに待ち受ける物流崩壊の現実について、ゆきたさんへのインタビューを交えて明かす。
■横揺れするトラックと飛来するトタン板の恐怖。極限状態の車内に響いた「まさかの再配達依頼」



台風が上陸し、雨風が急速に強まっていったある日のこと。「午後から台風が近づいてきて、夕方ごろに名古屋を直撃しました。かなり風が強くなったころに『集配中止』の指示が出たのですが、僕は少し会社から離れていたので、帰社せずに現場で待機することにしました」と、ゆきたさんは当時の紧迫した状況を振り返る。
雨風を凌げそうな公園の脇にトラックを停め、車内で待機を続けたゆきたさん。しかし、箱型のトラックは横風の影響を非常に受けやすい。「車がガンガン揺れて怖かったです」と語るように、車体を引きちぎらんばかりの暴風が襲う。さらに窓の外では、どこからか剥がれ落ちたトタン板が猛スピードで飛んでいくのが見え、ゆきたさんは「やばいな、こりゃ」と、自然の猛威を肌で感じて戦慄した。そんな極限状態の待機中、ゆきたさんの携帯電話が鳴り響く。恐る恐る出てみると、なんと「1軒だけ再配達に来てくれというお客さんがいて、驚きました……」と、信じられない要求が飛び出したのだ。
命の危険がある嵐の最中であっても、自分の荷物を最優先させる利用客の存在。結局、台風は2時間ほどで通過し、夜には天候が回復したため、生真面目なゆきたさんは通常通り夜間の配達業務を再開したという。しかし、警報級の強風下でも営業を続ける配送現場では、マンションの重いドアが風圧で開かなかったり、台車に載せた荷物が一瞬であおられたりと、配達員は常に怪我と隣り合わせの苦労を強いられている。
■嵐が去ったあとからが本番。停電による拠点麻痺と、翌日に押し寄せる「延着荷物の大洪水」
台風の本当の恐ろしさは、暴風雨が過ぎ去ったあとの「物流のタイムラグ」にも隠されている。多くの人は天気が回復すれば業務も正常化すると思いがちだが、現場のタイムラインは全く異なる。
ゆきたさんは、台風通過後に現場を襲うドミノ倒しのような大混乱の内情を、次のように指摘する。
「台風が来ると一時的に遅れたり、ストップしたりします。長距離トラックが走れなくなるし、ベース(集積所、中間仕分け所)が停電で一時的に稼働できなくなった、なんて話も聞いたことがあります。それが台風が去ったあとに一気に動くので、台風の翌日、翌々日あたりが非常に忙しくなったりします。延着の荷物も大量に届くので、対応に追われたりします」
運行停止になっていた大型幹線トラックが一斉に動き出し、ストップしていた荷物が数日分まとめて営業所に流れ込んでくる。そのため、天気が良いはずの台風翌日こそが、配達員にとって1年で最も過酷な「地獄の繁忙期」へと変貌するのだ。台風が多発する季節を迎えるうえで、私たちは荷物を受け取る側のモラルとして、配送の遅延に理解を示し、働く人の安全を最優先に考える姿勢を持つべきだろう。
取材協力:ゆきたこーすけ(@kosukeyukita)
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