俳優・佐津川愛美さんによる本サイトの連載「いつまで自分でせいいっぱい?」が『今日も、自分を生きる練習』とタイトルを変え、書籍になりました。連載回数100回を超えるなかから厳選した文章に加え、連載時には明かされていなかった2年間にわたるホテル暮らしについてなどの書き下ろしも多く収録されています。
制作作業が終わったばかりの5月24日、しずおか映画祭の直後に静岡市内のカフェで担当編集者が佐津川さんにお話を伺いました。3回にわけてお届けします(写真は、『今日も、自分を生きる練習』収録のものを一部転載しています)。

自分では意外だった選ばれた文章
――書籍化作業、お疲れ様でした。
佐津川愛美(以下、佐津川) 思い返すと、ちょうど1年前くらいに書籍化のお話をいただいたように思います。
――2025年6月にマネージャーさんに書籍化の提案書をお送りしていました。7月が最初の打ち合わせで、どういう方向性でまとめるか、どんな書き下ろしを加えるかの話をしましたね。それから、私が連載原稿を選んで、流れを作って、佐津川さんにお渡しして、そこに加筆修正してもらい、さらに追加の原稿も書いていただきました。原稿の土台が出来上がったのが、今年のはじめです。
佐津川 連載で原稿があっても1年かかるんだなと思いました。時間をかけて大切に作ってもらった感じがしてうれしいです。
――佐津川さんの連載「いつまで自分でせいいっぱい?」は2021年9月に始まって、現在まで100回以上続いています。連載を通じて、印象深かったのが、佐津川さんが自分を取り戻していく感覚というか、自分の感情を許していこうとする感じです。そうじゃない文章もたくさんあるんですけど、私が、そういった部分に心を動かされたので、結果的に、今回の本のような構成になりました。
佐津川 最初に選んでくださったものを見たときに、「これを選ぶんだ!」と驚きました。「抽象的なものを抜きました」とおっしゃっていたので、なるほど、と。
――連載中から、自分のしたい髪型にしたことがない、とか、撮影のために前日にお刺身は食べない、といった、俳優という仕事における日常生活というのはすごく特別だなと思っていたので、そういうものもたくさん選びました。
演じる仕事
佐津川 自分にとっては当たり前の生活なんですけど、たしかにそうですよね。
――内にこもった役作りのためにマナーレッスンに行ったり(書籍パート1「演じる仕事」の一つ目に収録)というのは、そういうところから始めるんだ!と驚きました。
佐津川 自分のことなのに、誰かに指摘されないとわからないことが多いものですね。今回の本づくりでは、そう思うことがたくさんありました。
たとえば、カバーの絵についても、自分の気持ちのわからなさを表現していて、でも色はきれいな色な感じで、と最初、わりに曖昧に希望をお伝えしたと思うのですが、それに対して、今回の末松由華利さんの絵を候補にあげていただいたとき、「これだ!」と本当にうれしかったです。
デザインも本当に素敵です。私は、割とこだわりが強い方だと思うんですけど、届いたとき、すぐに「全然直さなくてもいいな」って思いました。
――末松さんの絵をご提案くださったのは、デザイナーの宮本亜由美さんなのですが、デザインイメージは、佐津川さんがお気に入りの絵を貼った自分の練習ノート、だとおっしゃっていました。
佐津川 紙の質感もまさにノートの感じがして、すごくいいです。
カバーをめくってまず目に入るのはこの写真
文章を褒められるとうれしい
佐津川 子どものころ、作文はとくに好きだったわけではないのですが、ブログは面白くて、高校生のときに始めました。ノルマはないのに、毎日書いている時期もありました。うれしかったのは、私と同じような悩み、生きづらさを抱えている人が、たまに「ブログ読んでます」と言ってくれることでした。
――今も続く連載は、月2回の更新。俳優業をしながらの連載としては、なかなかハイペースですよね。
佐津川 いつも締め切りぎりぎりになってしまいます。最初に構成を決めて書くのではなく、最近、どういうことがあったかを思い出しながら、まず書きだしてみます。でも、うまく終えることができなくて、結局、全部書き直してしまうことも。たいへんですけど、高校生のときから今まで続いているものはそれほど多くないので、文章を書くことで何か自分の中に積み重なるものがあるのかもしれません。
「文章読んでるよ」って言ってもらうとすごくうれしくて。演じることが仕事の私の、演じてない自分を読んで共感してくれる人がいることが、支えになってるのかなって思います。
演じることと本当に素の自分の接点みたいなところに、書く自分がいるのかもしれません。
(第2回につづく)

