知的障害は、知的な機能と、日常生活や社会生活を送るために必要な力(適応行動)が十分に発達しておらず、日常生活や社会生活のさまざまな面で困難さがみられる状態です。知的障害の症状は、患者さんの年齢や重症度、そして生活環境によって現れ方が異なります。本記事では、知的障害とはどういう状態を指すのか、その症状などを解説します。
※この記事はメディカルドックにて『「知的障害」を疑う症状はご存知ですか?年齢別のサインも解説!【医師監修】』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。

監修医師:
前田 佳宏(医師)
・精神科/心療内科医
・精神保健指定医
「泣きたくなったら壁を押せ」著者
大人と子どもの双方で、トラウマや愛着障害に心理療法的アプローチを用いる医師。これまでのべ3,000人以上の臨床に携わる。
島根大学医学部卒業。その後、東京大学医学部附属病院精神神経科に入局、東京警察病院や国立精神神経医療研究センター等を経て、児童精神科外来を3年間、トラウマ専門外来を2年間担当。著書『泣きたくなったら壁を押せ』(サンマーク出版、2026年)では、心理療法のプロセスを物語として描き、私たちの感情の奥にある“適応の物語”をたどった。その視点をともに探る場として、オンラインコミュニティ「しなここメイト」を主宰。cotree顧問医。産業医。日本小児精神神経学会所属。
知的障害の基本的な症状

知的障害とはどういう状態を指しますか?
知的障害とは、知的な機能と日常生活や社会生活を送る力(適応行動)の両方に著しい制限がみられる状態を指します。これはおおむね18歳までの発達期に始まり、生涯にわたって続きます。知的な能力は、物事を理解し考えたり、判断したり、新しいことを学んだりする力や計画を立てる力のことです。適応行動は、日常生活や社会生活を送るための行動をいいます。適応行動はさらに、概念的スキル、社会的スキル、実用的スキルにわけられます。概念的スキルは、主に知識の習得とそれを適用する能力のことです。社会的スキルは、ほかの方との交流や社会集団の一員として適切に行動するために必要な能力です。実用的スキルは日常生活を自立して送り、安全で健康的な生活を維持するために必要な能力です。知的障害では、これらの知的な機能と適応行動の両者で困難さがあり、さまざまな症状がみられます。
なお、現在は知的障害ではなく、知的発達症という診断名が使用されることもあります。
知的障害でみられる症状を教えてください
知的障害では、主に知的な能力と適応行動で困難さがみられます。まず、知的な能力の面での具体的な症状は次のようなものがあります。新しいことを学ぶのに時間がかかる
読み書きや計算の習得が難しい
物事を理解したり、考えて判断したりが苦手である
目に見えない抽象的なことを想像することが難しい
学習した内容を状況に応じて応用することが難しい
言葉で説明されたことを理解するのに時間がかかる
などです。このように、知的な機能の面では、新しい情報の習得、理解、そしてそれらを応用する能力で困難さがみられます。適応行動に関する困難さは次のとおりです。
■ 社会的スキル・・お金の計算が難しい
・時間の概念がわかりにくい
・問題が起きたときにどうすればよいか判断できない:・うまくコミュニケーションをとることができない
・友達や家族との関係を築くことが難しい
・社会のルールやマナーを理解することが難しい
■ 実践的スキル
・・お金の計算が難しい
・時間の概念がわかりにくい
・問題が起きたときにどうすればよいか判断できない:・身の回りのこと(着替え、食事、入浴など)に支援が必要である
・お金の管理が難しい
・交通機関を使った移動が難しい
・家電製品がうまく使えない
ただし、これらの症状の現れ方や程度は一人ひとり大きく異なります。また、年齢によって困難さも違います。
知能指数(IQ)は知的障害にどのように関係しますか?
知能指数(IQ)は、知的障害の判断において一つの重要な指標です。ただし知的障害の診断や分類は、用いられる診断基準、医療や行政、福祉の現場などで異なります。厚生労働省が行った調査における知的障害の定義によると、知的な機能の障害は知能指数がおおむね70までとされています。知能指数はⅠ~Ⅳの区分に分かれており、Ⅰはおおむね20以下、Ⅱはおおむね21~35、Ⅲはおおむね36~50、Ⅳはおおむね51~70に区分されています。知的障害はこの知能指数と日常生活の能力水準をあわせて評価されます。参照:『知的障害児(者)基礎調査:調査の結果』(厚生労働省)
知的障害はいつ頃から症状が現れますか?
知的障害の症状は、多くは発達期までに現れるとされますが、実際に症状に気付かれる時期は障害の程度によって大きく異なります。重度の知的障害の場合、乳児期から精神運動発達の遅れとして明らかになることがあります。乳児検診などや小児科を受診した際などに発見されることが少なくありません。また、中等度の知的障害は、幼児期に言語発達や運動発達の遅れから気付かれる可能性があります。軽度の知的障害の場合、就学前までは目立った症状が現れないことも少なくありません。
小学校に入学してから学習面での困難さや、集団行動の難しさなどの状態が明らかになり初めて気付くケースがあります。このように、いつ頃から症状が現れるかは知的障害の程度や環境によって異なります。
編集部まとめ

知的障害は知的な能力と適応行動で制限がみられる状態です。日常生活や社会生活に支障をきたしますが、その症状は障害の程度によってさまざまです。幼い頃からその症状が現れる方もいれば、成人期に明らかとなる方もいます。知的障害が疑われる場合は、早めに専門機関へ相談することが大切です。療育手帳を取得すると、いろいろな支援を受けられます。気になる症状があれば、ご本人やご家族だけで悩まずに早めの相談、受診を検討しましょう。
参考文献
『6A00 Disorders of intellectual development』(ICD-11 for Mortality and Morbidity Statistics)
『知的障害児(者)基礎調査:調査の結果』(厚生労働省)- 「知的障害」にはどんな「特徴」が現れるかご存知ですか?【医師監修】
──────────── - 生活介護事業所とは?サービス内容や費用の目安、利用手続きを解説
──────────── - 特別養護老人ホームに入居できる介護度は?入居までの流れなどをわかりやすく解説
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