
のんが主演を務める、9月29日(月)夜8:00スタートの新ドラマ「MISS KING / ミス・キング」(ABEMA、全8話)。本作は将棋界を舞台に、天才棋士の父に人生を奪われた主人公・国見飛鳥(のん)が、その深い憎しみから開花させた将棋の才能と、まっすぐに突き進む意志の強さで、自らの人生を取り戻していくヒューマンドラマ。今回はプロデューサー・小林宙氏が、本作の衣装合わせでのエピソードを披露した。
■衣装合わせはスタッフとキャストの目線合わせの場
ドラマの撮影の準備段階の1つに、衣装合わせというものがあります。撮影開始の数週間前に行うのですが、その時点の台本を元に俳優の皆さんと実際にお会いし、衣装、靴、身につける小物を決めていくという作業があります。このタイミングで、初めて俳優や監督とお会いすることが多いです。
衣装合わせでは、外見のスタイリングを決める以上に大切なことがあります。それは役のキャラクターのキャスト、スタッフの目線合わせをするということです。監督、プロデューサー、スタッフが台本でイメージしているものと、俳優が台本を読んで思っているイメージの擦り合わせになります。
読み物である台本を実際に具現化するにあたり、意外とそれぞれが抱くイメージが違っていることや、固まっていなくて朧げな時も多く、俳優のご本人に実際お会いすることで、監督やプロデューサーの印象が変わる場合や、はたまた監督やプロデューサー間のイメージも実は違っていた…ということがあるのです。
そして擦り合わせのブレストが始まったり、ぶっちゃけ大いに揉めることも。『MISS KING / ミス・キング』に関しては全体的に揉めることはなく、齟齬なく進みましたが、ブレストは有意義に行うことができました。

のんさんもこの衣装合わせで初めてお会いしました。と言いつつ、昔お仕事をご一緒したことがあるのですが、当時のんさんは20歳くらいで非常に天真爛漫な素敵な女優さんという印象でした。今回十数年ぶりに直接お会いして、その印象は驚くほど変わりませんでした。むしろ天真爛漫さが深まった感じがしました。一応補足すると、いい意味で、です。
台本の中身については、衣装合わせの場で初めてお話しさせていただいたのですが、のんさんが演じられる国見飛鳥というキャラクターの感情の動きが、ところどころ繋がっていないように感じられる部分があることをのんさんに質問され、丁寧に台本を読み込んでくださっているなと感じました。台本を作るにあたり飛鳥の“天才性”と、棋士特有の“頭の回転の早さ”というのを意識しており、会話が成り立っているようで少し超越したことを相手より先に言う、という特徴を随所に入れていたのです。
なので、そこは敢えてそう見えるように台本を作っていること、そして見えている世界が1人違うことや、考えているフェーズが飛鳥は先に行っているキャラクターをイメージしたことを説明すると、のんさんも納得してくださり、見事に演じてくださったと思っています。
ただそのイメージは、のんさん自身にも私は感じていまして、同じ地平にはいないような天才性がある俳優だとずっと思っていたので「普段ののんさんと飛鳥はあまり変わらないですよね?」と言いかけましたがやめました。たぶん言ったとしても、困った顔しながら少し笑って「うーん、はい」って言う気がしています。天真爛漫でとても素敵な女優さんです。

■フルポン村上が表現したリアルな棋士の姿
1話の最後で中村獅童さん演じる結城彰一が対局している棋士役には、お笑い芸人のフルーツポンチ・村上健志さんにご出演いただいています。SNS上で、ある棋士に似ていると話題になっていましたが、敢えて実名を書いてしまうと、私も編集で見た時に「羽生善治さんじゃん」と本当に思いました。言わずと知れた将棋界のレジェンドです。村上さんのお芝居が棋士の対局中の振る舞いに似ていて、外見も相まってレジェンド棋士そのものなのです。
私もABEMAの「将棋チャンネル」で対局を見て研究することが多かったのですが、劣勢の時の棋士の仕草や表情が独特で、はっきり見てとれることも多く、見ていてとても面白かったです。「負けました」とか「まいりました」と言う前の仕草が、負けを飲み込む気持ちが整理がつかないのか、ソワソワしたり、例えば先日のタイトル戦で藤井聡太さんが劣勢になった時に膝を叩いて悔しがった感じを見せたりしていて、名棋士でも対局中に喜怒哀楽を見せているのがとても新鮮でした。
私のイメージとしては勝負師は無表情で、例えばポーカーはポーカーフェイスと言う言葉があるくらい、感情を表に出さないことがテクニックの1つだと思います。しかし将棋は割と仕草や表情に感情が滲み出ます。そう言う意味で、村上さん演じる棋士が負けの前に、ソワソワして、宙に顔を上げる感じがとてもリアルで秀逸でした。
そして3話以降は、のんさんの対局シーンが増えてきます。対局しているのんさんの表情が個人的にはとても好きでした。考えている顔、自信に満ちた顔、不安な顔、張り合う顔、様々な顔を見せてくれます。将棋がわからなくても、その表情で勝負の綾がわかると思います。ちなみに村上さんは終盤に声だけで再出演されますので、それもまたご期待ください。
現在、ABEMAとNetflixで1話・2話を配信しておりまして、次が3話になりますが、全8話の構成の中で1、2話はいわばプロローグの側面が高いです。飛鳥の味方と敵を明確にして、そこからいかに気持ちよく敵にリベンジを果たせるのかを意識したセットアップです。中村獅童さん演じる彰一、山口紗弥加さん演じる香、森愁斗さん演じる龍也を飛鳥がどう打ち破っていくのか。ワクワクして3話以降も見ていただければ嬉しいです。ABEMAですと、全8話最後まで無料配信ですので、是非楽しんでいただければと思います。


