
外は息を呑むような炎天下、一歩店内に足を踏み入れれば心地よい冷気が迎えてくれる夏のスーパー。しかし、そこで働く従業員にとって、その環境は決して快適なものではない。人員がギリギリで休憩すらままならないなか、利用客から投げつけられた無神経な言葉に多くのサービス業従事者が激怒し、同時に深く共感しているのが、漫画家・狸谷(@akatsuki405)さんの人気シリーズ『チェッカー鳥海さん、レジまでお願いします』の1編「楽ではない。」だ。
今回は、現場の苦労を知らない客の身勝手な思い込みを描いたエピソードを紹介するとともに、過酷な寒暖差や理不尽なクレームに直面する接客業の実態について、作者の狸谷さんへのインタビューを交えてお届けする。
■水分補給すらクレームの対象に?エアコンの冷気と自動ドアからの熱風が体力を奪う


ある猛暑の日、缶コーヒーを買いにやってきたサラリーマンの男が、レジで会計をしながらポツリと愚痴をこぼした。「レジ打ちはいいよな。こんな涼しいとこで立ってるだけだろ?」
この言葉の裏には、冷房の効いた店内にいるスタッフへの身勝手な嫉妬と偏見が透けて見える。本作がSNS上に投稿されると、同業者から「レジで水分補給をしているだけで、客からクレームが入ることがある」「飲みたいときに水すら飲めない」といった、過酷な労働環境を訴える声が相次いで寄せられた。
一見すると快適そうに見える「涼しい店内」だが、1日中スーパーのレジに立ち続けると、逆に身体が冷えすぎて体温調節が機能しなくなり、深刻な体調不良を引き起こす原因にもなる。さらに、自動ドアが開閉するたびに外から強烈な熱風が吹き込むため、レジ周辺は激しい寒暖差に常に晒されているのだ。「共感してくださった皆様のコメントを読んで、スーパーに限らず寒暖差の多い店舗で働くことは大変だということが少しでもわかっていただければ幸いです」と狸谷さんは語る。立ちっぱなしの肉体労働であるレジ打ちは、決して「立っているだけ」の楽な仕事ではない。
■「じゃあ、まずは一緒に働いてみましょう!!」どんなに求人を出しても人が来ない理由
店員と客という立場が違うだけで、なぜこれほどまでに理不尽な言葉やクレームをぶつけられなければならないのだろうか。理不尽な客の態度に対し、狸谷さんは強い憤りとともに、接客業が直面している労働力不足の現実に切り込む。
「『じゃあ、まずは一緒に働いてみましょう!!』と本気で思いましたし、恐らく口に出したこともあります。どんなに求人を出しても『来ない』のが、答えかなと思います」
お金を払う側だからといって、働く人間の尊厳を傷つけるような暴言を吐いていいわけがない。この「人が来ない」という事実こそが、レジ打ちがどれほど過酷で、割に合わない労働であると社会に認識されているかの明確な証明と言えるだろう。
なお、現在は『チェッカー鳥海さん』第2弾のLINEスタンプが配信中だ。狸谷さんは「文字なしのリアクションスタンプなので、何かと使いやすいと思います。第2弾も、ぜひよろしくお願いします」と語る。レジ前のモヤモヤを吹き飛ばす鳥海さんのコミカルなスタンプとともに、すべての労働者が尊重される社会を願わずにはいられない。
■取材協力:狸谷(@akatsuki405)
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