親友の助言を得た沙織は、もう泣くことはなかった。和也に対して明確な条件を突きつける決意を固めたのだ。離婚届、誓約書、そして二度と同じ過ちを繰り返さないための具体的な罰則。それは、和也の誠意を最後に確かめる手段でもあり、沙織自身の未来を守るための「お守り」でもあった。彼女は、愛情ではなく、割り切りと覚悟を持って、和也との婚姻継続を選択する。
安堵した夫に突きつけた「何でもする」では済まない冷徹な条件
沙織は和也を呼び出し、冷静に、しかし一切の感情を排した声で、条件を突きつけた。
「離婚はしない。でも、続けるなら条件がある」
和也は、離婚を免れたことに安堵したのか、すぐに「何でもする」と答えた。沙織は、まずテーブルの上に置いた一枚の書類を指差した。「これに記入して」と渡したのは、すでに証人欄以外を記入済みの離婚届だった。
「これは、あなたが次に同じことをしたら、私がいつでも提出できるように、私の手元に置いておくもの。異論はないわね」
和也は青ざめた顔で頷き、震える手でサインした。次に沙織が要求したのは、詳細な誓約書だ。
1000万円の約束と、今後の制約
「協力戦闘アプリのアカウント削除。LINEの彼女には、あなたが既婚者で子どもがいることを説明し、ブロックすること。そして、今後一切、女性と個人的な連絡を取らないこと」
さらに、沙織は付け加えた。
「もし、次に女関係の問題を起こしたら、あなたが作った借金とは別に、私に慰謝料として1000万円を支払うことを、この誓約書に記しなさい」
1000万円という額に、和也は目を見開いたが、離婚を望まない彼は、すべてを承諾し、言われるがままに誓約書にサインし、実印を押した。
その場で、沙織は和也に命じ、LINEで女性に真実を伝え、ブロックさせた。和也は沙織の指示通り、協力戦闘アプリのアカウントも削除した。
沙織は、目の前でうなだれる和也を見て、彼に対する愛情はもう戻らないことを理解していた。しかし、これで子どもたちの生活は守られる。そして、この誓約書と離婚届は、彼女が将来、経済力をつけていつでも彼から離れることができる「お守り」となった。
「今後、あなたの行動を信用することはない。でも、子どもたちのために、この婚姻は継続する。あなたの誠意は、これからの行動で示すこと」
沙織は冷たく言い放ち、和也はただ「わかった」と力なく答えるしかなかった。沙織は、愛を捨て、覚悟を持って家族の形だけを守ることを選んだ。今後のことは和也しだいではあるが、沙織自身は自分と子どもの未来を自分で決め、我慢するだけではない未来を手に入れた。

