仕事中に感じた右足の違和感が、夜には足を引きずるほど悪化。救急外来を受診した塩見さんは、「慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)」という難病と診断されました。「完治しない」という宣告に精神的にどん底まで落ち込みながらも、血液浄化療法やステロイド治療に耐える日々。2人の娘の存在だけが心の支えとなった塩見さんが、病気を通して得た新たな視点と向き合う、静かなる闘病の記録をご紹介します。
体験者プロフィール:
塩見 靖博
千葉県市川市在住の会社員。2021年に慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)を発症。「ひとつでも多く、楽しい、嬉しいを」「難病なんかに負けてられねぇ」の精神で日々を過ごしている。
記事監修医師:
今村 英利(いずみホームケアクリニック)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。
11年前の古傷かな…?
編集部
慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)が判明した経緯について教えてください。
塩見さん
仕事中に、右足に若干の違和感を覚えました。そのまま仕事を続けていたのですが、夜には足を引きずるまでになり、これはおかしいと思って夜間の救急外来に行きました。過去に頚椎の病気をしたことがあったため、それに関連している症状かと当時は思っていました。
編集部
どのように医師から説明がありましたか?
塩見さん
最初は病気を特定できず、検査が続きましたが、その中で慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)の可能性が高いという話でした。手足の神経を免疫細胞が攻撃してしまう病気で、手足の痺れや動かしにくさが主な症状です。「原因不明の病気で完治はしない」と言われました。いくつかある治療のうち、まずは血液浄化療法を実施し、以降は状態を見て方針を決めていくということでしたね。CIDPといっても色々種類があって、治療法も少し異なるようです。私の場合は、血液浄化療法と並行して、途中からステロイドの投薬も開始しました。
編集部
診断名がついてからも検査が続いたそうですね。
塩見さん
初日の違和感から、大まかな診断がつくまでに約2週間かかりました。そこで血液浄化療法を始めたのですが、その後も検査が続きました。CIDPは典型や非典型など、いくつかのカテゴリーがあり、それらの特定に主治医も苦戦していたようです。こちらも精神的にキツかったですね。
編集部
どんな思いで検査を受けていたのですか? また、診断確定後の心境も教えてください。
塩見さん
まずは、なかなか病名やタイプがわからないということに苛立ちました。ネットで色々な病気を検索して調べていました。中には、「これであってくれるな」という疾患もありました。判明後は、完治しない病気であると言うことが受け入れられず、しばらくは精神的にどん底まで落ちていたと思います。
ただ1時間、じっと耐えるという苦しみ
編集部
検査や治療はとても大変だったそうですね。
塩見さん
血液浄化療法を実施するにあたり、首の静脈から心臓付近まで太さ約4mmの管を入れたのですが、それが入院生活の中で一番大変でした。管を入れる部分に局部麻酔はしましたが意識ははっきりしており、滅菌のシートを被せられて自分からは何も見えない中で、動かず、ひたすら堪えるという感じでした。小一時間ほどかかったと思います。もう2度とやりたくないですね。
編集部
治療中の心の支えはなんでしたか?
塩見さん
2人の娘の存在です。発症直後は、「こんな自分は誰にも見られたくない」という思いが強く、誰とも関わりたくないと思っていました。唯一の例外が娘たちでした。本当に感謝しています。
編集部
もし昔の自分に声をかけられたら、どんな助言をしますか? 今だからこそ言えることなどありますか?
塩見さん
思い浮かびませんね。診断確定後、落ち込んでいた自分に「落ち込むな」とも助言しません。病気を受容するためには落ちることも必要で、そこからゆっくりと受け止めていくのだと思います。病気になってはじめて気付いたことや、新たに得た視点はたくさんあり、それは確かに自分を成長させてくれましたが、それを喜ぶべきなのかわかりません。病気にならない方が良かったので。
≪↓ 後編へ続く ↓≫
※この記事はメディカルドックにて<【闘病】右足に感じたわずかな違和感。正体は難病だった《慢性炎症性脱髄性多発神経炎》>と題して公開した記事を再編集して配信しており、内容はその取材時のものです。
なお、メディカルドックでは病気の認知拡大や定期検診の重要性を伝えるため、闘病者の方の声を募集しております。皆さまからのご応募お待ちしております。

