毎月の生理痛を「当たり前のこと」として、ずっと我慢してきた方はいないでしょうか。実は、日常生活に支障が出るほどの強い痛みは、子宮内膜症のサインである可能性があります。子宮内膜症は、日本の生殖年齢の女性の約10%に認められるとされており(日本産科婦人科学会)、決して珍しい病気ではありません。この記事では、子宮内膜症の基本的な特徴から症状・原因・治療まで、ひとつずつ丁寧にご説明します。

監修医師:
西野 枝里菜(医師)
東京大学理学部生物学科卒
東京大学薬学部薬科学専攻修士課程卒
名古屋大学医学部医学科卒
JCHO東京新宿メディカルセンター初期研修
都立大塚病院産婦人科後期研修
久保田産婦人科病院
【保有資格】
産婦人科専門医
日本医師会認定産業医
子宮内膜症が女性の身体に与える影響
子宮内膜症は、女性の生活の質(QOL)に大きな影響をおよぼす疾患のひとつです。このセクションでは、子宮内膜症が女性の身体にどのような変化をもたらすのか、またその特徴について解説します。
子宮内膜症とはどのような病気か
子宮内膜症とは、子宮の内側を覆う「子宮内膜」に似た組織が、子宮の外側に発生・増殖する疾患です。通常、子宮内膜は月経のたびに増殖し、妊娠が成立しなければ剥がれ落ちて体外へ排出されます。しかし、子宮内膜症では子宮の外に生じた組織も同様に月経周期に合わせて増殖・出血を繰り返しますが、その血液や組織が体外に排出されないため、周囲の臓器や組織に炎症や癒着(組織同士がくっついてしまう状態)を引き起こします。
子宮内膜症が発生しやすい場所としては、卵巣・腹膜・直腸子宮窩(ダグラス窩)などが知られています。卵巣に病変が生じた場合には、「チョコレート嚢胞(のうほう)」と呼ばれる状態になることがあります。これは、卵巣内に古い血液が溜まり、チョコレートのような茶褐色の液体が溜まった袋状の組織(嚢胞)が形成されるものです。
この疾患が注目される背景には、患者さんの数が少なくないという点があります。日本では生殖年齢の女性の約10%に子宮内膜症が認められるとされており(日本産科婦人科学会)、決してまれな病気ではありません。しかし、症状が月経痛と混同されやすいことから、診断が遅れるケースも少なくないとされています。
子宮内膜症が引き起こす身体的な変化
子宮内膜症が身体に与える影響は多岐にわたります。まず、炎症や癒着によって骨盤内の臓器の構造が変化し、卵管や卵巣の機能が損なわれることがあります。
こうした変化は不妊の原因となる可能性があり、実際に不妊症の女性の約30〜50%に子宮内膜症が認められると報告されています(参考:日本産科婦人科学会)。
また、慢性的な炎症は骨盤内の神経にも影響をおよぼし、月経時だけでなく月経とは関係のないタイミングでも骨盤周囲に痛みを感じる場合があります。さらに、病変が腸や膀胱の近くに及んだ場合には、排便や排尿のときにも痛みを伴うことがあります。
子宮内膜症はエストロゲンに依存するため、閉経後は多くの場合症状が治まります。ただし、稀に閉経後も経過観察が必要なケース(卵巣がんへの変化など)があるため、自己判断で通院をやめないことが大切です。
生殖年齢(おおむね10代後半〜40代)の期間は病状が進行しやすい状況が続きます。日常生活の質の低下が長期間続くことが多いため、早期に気づき、適切な医療機関を受診することが大切です。
まとめ
子宮内膜症は、月経のある女性であれば誰でも発症する可能性があります。強い月経痛・慢性的な骨盤の痛み・月経過多・不妊などのサインを見逃さず、気になる症状があれば早めに産婦人科・婦人科を受診することが大切です。適切な治療と生活習慣の見直しを組み合わせることで、症状の改善や生活の質の向上につながる可能性があります。ひとりで抱え込まず、医療機関に相談する一歩を踏み出してください。
参考文献
日本産科婦人科学会「子宮内膜症」
厚生労働省 女性の健康推進室 ヘルスケアラボ「子宮内膜症」
- 「子宮内膜症」を発症する「原因」はご存知ですか?発症リスクを高める要因も解説!
──────────── - 「子宮内膜症の治療法」はご存知ですか?薬物療法の副作用も解説!【医師監修】
──────────── - 「子宮内膜症」はどのような検査が行われる?検査の流れも解説!【医師監修】
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